異説・忠臣蔵騒動記～赤穂城受け渡し編～

後置き

　それからのことである。

赤穂浪人たち
史実同様のため省略する。

吉良上野介
史実同様、吉良邸において赤穂「義」士に殺害される。史実と異なる唯一の救いとしては、隠居が認められていなかったので最愛の孫である左兵衛義周は周囲の嘲笑や侮蔑に耐えつつも、吉良庄領主として「古今稀なる善政」を敷いて老齢まで泉下を拒むことができたことくらいだろう。

久松松平家
「赤穂義士を粗略にした罪」として六代将軍家宣より突如の改易命令を受ける。その後、しばらくは伊予、掛川、桑名などの領が幕府直轄領として統治され、後に桑名は津藩藤堂家に合併され、掛川は高家今川氏に「返還」、伊予松山は赤穂事件の影響か垣屋弾正忠の家系が脇坂藩より取り立てられ大名となる。後に「瀬戸内航路」と称した伊予松山藩—播磨龍野藩間の定期便などの構築を考えれば、独立後も仲は良かったようだ。

浅野家
綱吉の命で蝦夷地に左遷されたが、後に家宣の命で「武人見本のこと」として旗本からの復帰を命ぜられる。久松松平藩の改易の後は康元系の所領が与えられて大名に復帰。新井白石と度々論争を繰り広げたという。

大石家
「忠義見本のこと」として旗本への放免が認められる。後に、摂津菟原郡領主となり、有馬郡と八部郡をまとめ八代将軍吉宗より「世間見本たるべし」との命によって大名となる。

脇坂家
龍野・赤穂の他、後に武家三大騒動と称される「仙石騒動」「赤穂騒動」と並ぶ「榊原騒動」によって一時的に改易処分となった姫路藩を在番した手柄によって飾磨郡を加増され、20万石を突破。20万石というただでさえ広く豊かな土地である上に老中も輩出したこともあって大いに栄える。後に木下足守藩より許可を得て緒方洪庵を招聘、現在まで続く日本初の医学校、「野里医専」の初代理事長となる。

木下家
足守藩から加増され賀陽郡の一郡支配が認められる。豊臣姓を持っていた割に順風満帆の家系と思われたが、後の寛政危難が巻き起こり、窮地に立たされる。明治政府に返還が認められるまでその苦境は続き、岡山県に豊国神社の分社が建築されるまで1万石あまりは信夫郡などに点在したままだったという。

垣屋家
伊予松山藩に転封された折、15万石として発足。一応譜代として取り立てられたのだが、幕末の折には将来有望な維新志士達を次々に匿い、吉田松陰と坂本龍馬を結びつけるという古今未曾有の大功を成し遂げる。また、秋山兄弟を早くから陸援隊や海援隊などへ見学に行かせて後に日露戦争および大東亜戦争において「最も偉大なる老兵家」とも讃えられる。今なお続く造船系血閥（財閥ではない）であり、著名な分家としては、明治・大正・昭和・平成・令和と五代連続で内閣総理大臣を輩出した山本家、法曹家としては小山家が提唱した小山学派は今尚続く有名な法解釈の大家であり、医療関係では抗ウイルス薬としては史上最も偉大な薬品である感冒根治薬の発明者を輩出する伊東家などが著名か。