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両想い編
映画鑑賞会(過去編)
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それは杉宮北斗と付き合う前のこと。
当時杉宮から熱烈なアプローチを受けていた俺は、どうやって彼を諦めさせようか悩んでいた。
しかしそんな気持ちとは反対に彼に惹かれていく自分もいて、俺の心は複雑だった。
そんなある日、「また映画鑑賞会がしたい」と杉宮から提案された。
好意をオープンにしている男を何度も自宅に招くのはどうかとも思ったが、その表情からは下心のようなものは感じられなかったので結局了承してしまった。
そして当日。
前回は俺の趣味に付き合ってもらったので今日は杉宮の好きな映画を見ようということになった。
謎に包まれた彼の趣味嗜好を知る良い機会だと思ったのだ。
杉宮は持参してきたDVD数点を俺に見せながら嬉しそうに尋ねてきた。
「先輩はどれが良いですか」
「んー、杉宮のおすすめで」
「じゃあこれで。ゾンビと戦うシーンが迫力あって面白いんです」
北斗が選んだのは有名な洋画だった。
俺も幼少期にテレビで放映されていたものを少しだけ見た記憶がある。
それから俺たちは酒とつまみを楽しみながら映画を鑑賞していた。
酒が苦手な杉宮はジュースを飲みつつ時折ポップコーンやチョコレートを口に運んでいた。
洋画特有の濃厚なラブシーンが流れている間も、杉宮は平然とした顔で画面を見つめていた。
一方俺は……。
ラブシーン程度でいちいち反応するような歳でもないし、性経験だって人並みにはあるのだが、隣にこいつが居るせいで妙に落ち着かなかった。
しかし相変わらず彼からは性的な雰囲気は一切感じられなくて、本当にただ純粋に楽しんでいるだけなのだと思わされる。
「俺、休みの日に檜山先輩と一緒に過ごせて幸せです」
突然ぽつりと杉宮が呟いた。
彼は日常的に「好き」だとか「可愛い」などと伝えて来るのだ。
「急にどうしたんだよ」
「いえ、伝えたくなっただけです。檜山先輩のことを好きになってから人生が豊かになりました」
「あはは、それは大袈裟すぎだよ」
「本当ですよ」
そう言うと、杉宮は手に持っていたグラスを置いた。
「俺は檜山先輩が好きで好きで仕方がないんです」
真っ直ぐにこちらを見つめる瞳に吸い込まれそうになる。
「そ、そうか」
俺は動揺を隠すようにビールに口をつけた。
なんとなくだが2人きりでこの雰囲気はやばい気がする。
柏原を失って傷心中という事もあり、このまま押され続けたら絆されてしまいそうだ。
「でもさお前、男と付き合うってどういうことか分かってんの?」
「え?」
「キスとか、それ以上とか、そういうこともできるのか?俺相手に」
俺は杉宮に現実を突きつけるためにあえて直接的な表現をした。
もし、彼が「できません」と答えれば、そこで終わりだ。
俺はさらに追い討ちをかけるように杉宮の頬に手を伸ばし、彼の唇を親指でなぞった。
「ひ、やま先輩」
「なに」
「あの、それは」
そのまま首筋から胸へ指を滑らせると彼の肩がぴくりと震えた。
「俺とセックスできる?」
「……え、あ」
杉宮は言葉を失ったようで、口をぱくつかせている。
「なっ?やっぱ無理だろ~!俺だってやだもん。こんな30間近の男とすんの」
俺は冗談めかして笑いながら彼の上からゆっくりと退いた。
安堵の気持ちと同時に、どこか寂しさと虚しさを感じている自分自身に戸惑う。
これでこいつも目が覚めるだろう。
そう思っていたのに。
「できます」
「え?」
「だから、俺……檜山先輩とならそういうこともしたい、です」
耳まで真っ赤にした杉宮はこちらをまっすぐ見据えて言った。
「いや、無理しなくてもいいんだぞ?」
「無理なんてしてないです」
「お前、意地になってるだろ」
「なってません」
「じゃあ試すか?」
焦りにも似た感情が芽生え、思わず口から出てしまった言葉だった。
しかし一度言ってしまった手前引っ込みがつかない。
俺は勢いのまま杉宮の両肩を掴むとそのままソファに押し倒した。
体を鍛えている杉宮は俺なんかよりもずっと腕力がある。
本当に嫌なら簡単に押しのけることだってできるはずだ。
しかし彼が抵抗することはなかった。
早く俺を拒絶してくれと願いながらゆっくりと顔を近づける。
「……せん、ぱい」
あと数センチで唇がくっつくというところで杉宮が小さく口を開いた。
「俺のこと、好きになってくれたって事で良いんですよね?」
「……ん?」
「だって、恋人同士でもないのにこんなことするのおかしいじゃないですか」
確かにそれは真っ当な意見だった。
俺を見上げながら不安げに眉を下げる杉宮を見て激しい罪悪感に襲われた。
純粋な彼に酷いことをしてしまった。
「悪い。俺がどうかしてた」
俺は謝りながら杉宮の上から退いた。
そして、自分の行動を思い返しているうちに恥ずかしくなり頭を抱える。
そんな気まずい俺たちとは正反対にテレビの中の恋人たちは熱い抱擁を交わしていた。
杉宮は俺を見て困惑したような様子だったが、しばらくすると何かを決意したように俺の手をぎゅっと握ってきた。
「檜山先輩。俺、ちゃんと頑張ります」
「うん?」
「いつか絶対好きになってもらえるように努力します」
「お、おお」
杉宮は真剣な眼差しでそう告げると、「だから、恋人同士になったときはよろしくお願いします」と力強く付け加えた。
俺は一体どんな返事をするべきなのか分からず引き攣った笑顔を浮かべることしかできなかった。
それから杉宮は平然とポップコーンをつまみながら映画を見始めたのだが、俺はすっかり集中力を失ってしまい、内容が全く頭に入ってこなかった。
あの状況からよく映画鑑賞なんて再開できたものだ、と彼の神経の図太さに感心したのだった。
当時杉宮から熱烈なアプローチを受けていた俺は、どうやって彼を諦めさせようか悩んでいた。
しかしそんな気持ちとは反対に彼に惹かれていく自分もいて、俺の心は複雑だった。
そんなある日、「また映画鑑賞会がしたい」と杉宮から提案された。
好意をオープンにしている男を何度も自宅に招くのはどうかとも思ったが、その表情からは下心のようなものは感じられなかったので結局了承してしまった。
そして当日。
前回は俺の趣味に付き合ってもらったので今日は杉宮の好きな映画を見ようということになった。
謎に包まれた彼の趣味嗜好を知る良い機会だと思ったのだ。
杉宮は持参してきたDVD数点を俺に見せながら嬉しそうに尋ねてきた。
「先輩はどれが良いですか」
「んー、杉宮のおすすめで」
「じゃあこれで。ゾンビと戦うシーンが迫力あって面白いんです」
北斗が選んだのは有名な洋画だった。
俺も幼少期にテレビで放映されていたものを少しだけ見た記憶がある。
それから俺たちは酒とつまみを楽しみながら映画を鑑賞していた。
酒が苦手な杉宮はジュースを飲みつつ時折ポップコーンやチョコレートを口に運んでいた。
洋画特有の濃厚なラブシーンが流れている間も、杉宮は平然とした顔で画面を見つめていた。
一方俺は……。
ラブシーン程度でいちいち反応するような歳でもないし、性経験だって人並みにはあるのだが、隣にこいつが居るせいで妙に落ち着かなかった。
しかし相変わらず彼からは性的な雰囲気は一切感じられなくて、本当にただ純粋に楽しんでいるだけなのだと思わされる。
「俺、休みの日に檜山先輩と一緒に過ごせて幸せです」
突然ぽつりと杉宮が呟いた。
彼は日常的に「好き」だとか「可愛い」などと伝えて来るのだ。
「急にどうしたんだよ」
「いえ、伝えたくなっただけです。檜山先輩のことを好きになってから人生が豊かになりました」
「あはは、それは大袈裟すぎだよ」
「本当ですよ」
そう言うと、杉宮は手に持っていたグラスを置いた。
「俺は檜山先輩が好きで好きで仕方がないんです」
真っ直ぐにこちらを見つめる瞳に吸い込まれそうになる。
「そ、そうか」
俺は動揺を隠すようにビールに口をつけた。
なんとなくだが2人きりでこの雰囲気はやばい気がする。
柏原を失って傷心中という事もあり、このまま押され続けたら絆されてしまいそうだ。
「でもさお前、男と付き合うってどういうことか分かってんの?」
「え?」
「キスとか、それ以上とか、そういうこともできるのか?俺相手に」
俺は杉宮に現実を突きつけるためにあえて直接的な表現をした。
もし、彼が「できません」と答えれば、そこで終わりだ。
俺はさらに追い討ちをかけるように杉宮の頬に手を伸ばし、彼の唇を親指でなぞった。
「ひ、やま先輩」
「なに」
「あの、それは」
そのまま首筋から胸へ指を滑らせると彼の肩がぴくりと震えた。
「俺とセックスできる?」
「……え、あ」
杉宮は言葉を失ったようで、口をぱくつかせている。
「なっ?やっぱ無理だろ~!俺だってやだもん。こんな30間近の男とすんの」
俺は冗談めかして笑いながら彼の上からゆっくりと退いた。
安堵の気持ちと同時に、どこか寂しさと虚しさを感じている自分自身に戸惑う。
これでこいつも目が覚めるだろう。
そう思っていたのに。
「できます」
「え?」
「だから、俺……檜山先輩とならそういうこともしたい、です」
耳まで真っ赤にした杉宮はこちらをまっすぐ見据えて言った。
「いや、無理しなくてもいいんだぞ?」
「無理なんてしてないです」
「お前、意地になってるだろ」
「なってません」
「じゃあ試すか?」
焦りにも似た感情が芽生え、思わず口から出てしまった言葉だった。
しかし一度言ってしまった手前引っ込みがつかない。
俺は勢いのまま杉宮の両肩を掴むとそのままソファに押し倒した。
体を鍛えている杉宮は俺なんかよりもずっと腕力がある。
本当に嫌なら簡単に押しのけることだってできるはずだ。
しかし彼が抵抗することはなかった。
早く俺を拒絶してくれと願いながらゆっくりと顔を近づける。
「……せん、ぱい」
あと数センチで唇がくっつくというところで杉宮が小さく口を開いた。
「俺のこと、好きになってくれたって事で良いんですよね?」
「……ん?」
「だって、恋人同士でもないのにこんなことするのおかしいじゃないですか」
確かにそれは真っ当な意見だった。
俺を見上げながら不安げに眉を下げる杉宮を見て激しい罪悪感に襲われた。
純粋な彼に酷いことをしてしまった。
「悪い。俺がどうかしてた」
俺は謝りながら杉宮の上から退いた。
そして、自分の行動を思い返しているうちに恥ずかしくなり頭を抱える。
そんな気まずい俺たちとは正反対にテレビの中の恋人たちは熱い抱擁を交わしていた。
杉宮は俺を見て困惑したような様子だったが、しばらくすると何かを決意したように俺の手をぎゅっと握ってきた。
「檜山先輩。俺、ちゃんと頑張ります」
「うん?」
「いつか絶対好きになってもらえるように努力します」
「お、おお」
杉宮は真剣な眼差しでそう告げると、「だから、恋人同士になったときはよろしくお願いします」と力強く付け加えた。
俺は一体どんな返事をするべきなのか分からず引き攣った笑顔を浮かべることしかできなかった。
それから杉宮は平然とポップコーンをつまみながら映画を見始めたのだが、俺はすっかり集中力を失ってしまい、内容が全く頭に入ってこなかった。
あの状況からよく映画鑑賞なんて再開できたものだ、と彼の神経の図太さに感心したのだった。
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