29 / 35
新婚生活編
25.新婚旅行-3-
しおりを挟む
街の中央を流れる川にかかる橋から見える景色もまた格別だった。
水面には提灯と街の光が反射して無数の光の粒が浮かんでは消えていく。
「あー、なんか帰りたく無くなるなぁ」
俺は橋の欄干に肘をつきながら言った。
「あはは、そうだね。瞬ちゃんと美味しいもの食べて温泉に浸かって……きっと今が俺の人生で一番幸せな時間だと思う」
「流石にそれは大袈裟だろ」
俺が呆れた声でそう言うと彗は「どうかなぁ」と小さく呟いた。
「だって、これからも2人でたくさん思い出作るんだろ」
「……うん。そうだったねぇ」
彗は俺の言葉を聞いて一瞬驚いたような顔を見せた後、ほんのり頬を染めてとろけそうな笑みを浮かべる。
その瞬間どうしようもなくこの男が愛おしくなった。
「彗」
「んー?」
もっと彗を幸せにしてやりたい。
誰も知らない彗の姿を知りたい。
湧き上がる感情を抑えきれず、俺は彗の方に向き直った。
「お前が好きだ」
今まで何度も伝えようと思いながらも結局言えずにいた言葉。それが自然と口から零れ落ちた。
突然の告白に彗は目を丸くしたが、すぐに心配そうに眉根を寄せる。
「瞬ちゃん……急にどうしたの?何かあった?」
「え?」
「もしかしてまだ酔ってる?」
「はい……?」
彗の予想外すぎる反応に俺は戸惑ってしまう。
「いや……そうじゃなくて、俺は本気で」
俺は慌てて弁明しようとするが上手く言葉が出て来ない。
「ふふ、分かってるよ。瞬ちゃんが俺のこと大切に想ってくれてる事くらい」
普段とは違うシチュエーションに舞い上がって居るとでも思われたのか、俺の告白は全く伝わらなかったようだ。
彗は「よしよし、かわいいね~」と子供をあやすように俺の頭を撫でてくる。
「……」
俺は複雑な気持ちになりながら大人しくされるがままになっていたが、やがて我に帰るとその手を握りしめた。
「あっごめん。怒った?」
「……俺は」
「?」
「恋愛対象として彗の事が好きなんだよ」
「えっ……」
俺が困ったような顔でそう告げると彗は大きく目を見開いた。
「ちょ、ちょっと待って!どうしたの急に!?さっきまで普通だったじゃん!」
「ずっと言おうと思ってたんだよ。でもなかなか決心がつかなくて……」
「え……?ずっとって……いつから?」
「……一緒に花火を見に行った時にはもう好きになってたと思う」
彗は動揺しているのか視線を彷徨わせている。
握った手が小刻みに震えていた。
俺はどんな顔をすればいいのか分からず、ただ彗が喋り出すのを待っていた。
「……そっかぁ。全然気づかなかったな」
しばらく沈黙した後、彗はぽつりと呟くようにして口を開いた。
その顔は困惑とも照れ笑いともつかない不思議な表情をしていた。
「ごめん。嫌か?」
彗の曖昧な反応に不安をおぼえた俺は恐る恐る尋ねた。
「まさか。嬉しいに決まってるじゃん」
「ならどうしてそんな微妙な反応するんだよ……」
「うーん……ちょっと混乱してるからかも。まだ現実味が無いっていうか」
そう言って握った手をスルリと抜き取ると、彗は再び欄干に寄りかかって街明かりを見つめ始めた。
その横顔は少し寂しげに見える。
「だって、恋愛嫌いの瞬ちゃんがだよ?一体どういう心境の変化なわけ~?」
「……お前と一緒に暮らしてたら自分の中の考え方とか価値観が変わったんだ」
俺は少し恥ずかしくなりながら答えた。
今思えば彗との結婚生活の中で、俺は様々な変化を感じていた。
頑固で他人に無関心だった自分が、彗のやわらかな愛情に溶かされて誰かと共に生きる喜びを知ったのだ。
「いつも楽しそうに笑ってるとことか、意外とマメなとことか……軽そうに見えてものすごく一途なとことか」
俺は彗の好きなところを一つ一つ挙げていく。
今まで彗が真っ直ぐ俺に愛情を注いでくれたように、俺からも歩み寄っていきたい。
「あと、実は結構他人に壁作ってる人間臭いところも……全部ひっくるめて好きだと思った」
「あー、なんか改めて言われるとめちゃくちゃ照れるね」
彗は手摺に肘をつきながら苦笑していた。
いつものふわふわした雰囲気とは打って変わってその横顔には何やら真剣な表情が浮かんでいるが、なんとなくはぐらかされているような気がした。
「……別に今すぐどうこうなりたいってわけじゃ無いんだ。ただ、俺が彗の事好きだって事だけ知っておいて欲しかっただけで」
俺はそこまで言うと言葉を切った。
正直、これ以上どうすれば良いのか分からないというのが本音だ。
水面には提灯と街の光が反射して無数の光の粒が浮かんでは消えていく。
「あー、なんか帰りたく無くなるなぁ」
俺は橋の欄干に肘をつきながら言った。
「あはは、そうだね。瞬ちゃんと美味しいもの食べて温泉に浸かって……きっと今が俺の人生で一番幸せな時間だと思う」
「流石にそれは大袈裟だろ」
俺が呆れた声でそう言うと彗は「どうかなぁ」と小さく呟いた。
「だって、これからも2人でたくさん思い出作るんだろ」
「……うん。そうだったねぇ」
彗は俺の言葉を聞いて一瞬驚いたような顔を見せた後、ほんのり頬を染めてとろけそうな笑みを浮かべる。
その瞬間どうしようもなくこの男が愛おしくなった。
「彗」
「んー?」
もっと彗を幸せにしてやりたい。
誰も知らない彗の姿を知りたい。
湧き上がる感情を抑えきれず、俺は彗の方に向き直った。
「お前が好きだ」
今まで何度も伝えようと思いながらも結局言えずにいた言葉。それが自然と口から零れ落ちた。
突然の告白に彗は目を丸くしたが、すぐに心配そうに眉根を寄せる。
「瞬ちゃん……急にどうしたの?何かあった?」
「え?」
「もしかしてまだ酔ってる?」
「はい……?」
彗の予想外すぎる反応に俺は戸惑ってしまう。
「いや……そうじゃなくて、俺は本気で」
俺は慌てて弁明しようとするが上手く言葉が出て来ない。
「ふふ、分かってるよ。瞬ちゃんが俺のこと大切に想ってくれてる事くらい」
普段とは違うシチュエーションに舞い上がって居るとでも思われたのか、俺の告白は全く伝わらなかったようだ。
彗は「よしよし、かわいいね~」と子供をあやすように俺の頭を撫でてくる。
「……」
俺は複雑な気持ちになりながら大人しくされるがままになっていたが、やがて我に帰るとその手を握りしめた。
「あっごめん。怒った?」
「……俺は」
「?」
「恋愛対象として彗の事が好きなんだよ」
「えっ……」
俺が困ったような顔でそう告げると彗は大きく目を見開いた。
「ちょ、ちょっと待って!どうしたの急に!?さっきまで普通だったじゃん!」
「ずっと言おうと思ってたんだよ。でもなかなか決心がつかなくて……」
「え……?ずっとって……いつから?」
「……一緒に花火を見に行った時にはもう好きになってたと思う」
彗は動揺しているのか視線を彷徨わせている。
握った手が小刻みに震えていた。
俺はどんな顔をすればいいのか分からず、ただ彗が喋り出すのを待っていた。
「……そっかぁ。全然気づかなかったな」
しばらく沈黙した後、彗はぽつりと呟くようにして口を開いた。
その顔は困惑とも照れ笑いともつかない不思議な表情をしていた。
「ごめん。嫌か?」
彗の曖昧な反応に不安をおぼえた俺は恐る恐る尋ねた。
「まさか。嬉しいに決まってるじゃん」
「ならどうしてそんな微妙な反応するんだよ……」
「うーん……ちょっと混乱してるからかも。まだ現実味が無いっていうか」
そう言って握った手をスルリと抜き取ると、彗は再び欄干に寄りかかって街明かりを見つめ始めた。
その横顔は少し寂しげに見える。
「だって、恋愛嫌いの瞬ちゃんがだよ?一体どういう心境の変化なわけ~?」
「……お前と一緒に暮らしてたら自分の中の考え方とか価値観が変わったんだ」
俺は少し恥ずかしくなりながら答えた。
今思えば彗との結婚生活の中で、俺は様々な変化を感じていた。
頑固で他人に無関心だった自分が、彗のやわらかな愛情に溶かされて誰かと共に生きる喜びを知ったのだ。
「いつも楽しそうに笑ってるとことか、意外とマメなとことか……軽そうに見えてものすごく一途なとことか」
俺は彗の好きなところを一つ一つ挙げていく。
今まで彗が真っ直ぐ俺に愛情を注いでくれたように、俺からも歩み寄っていきたい。
「あと、実は結構他人に壁作ってる人間臭いところも……全部ひっくるめて好きだと思った」
「あー、なんか改めて言われるとめちゃくちゃ照れるね」
彗は手摺に肘をつきながら苦笑していた。
いつものふわふわした雰囲気とは打って変わってその横顔には何やら真剣な表情が浮かんでいるが、なんとなくはぐらかされているような気がした。
「……別に今すぐどうこうなりたいってわけじゃ無いんだ。ただ、俺が彗の事好きだって事だけ知っておいて欲しかっただけで」
俺はそこまで言うと言葉を切った。
正直、これ以上どうすれば良いのか分からないというのが本音だ。
11
あなたにおすすめの小説
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
【完結】もしかして俺の人生って詰んでるかもしれない
バナナ男さん
BL
唯一の仇名が《根暗の根本君》である地味男である<根本 源(ねもと げん)>には、まるで王子様の様なキラキラ幼馴染<空野 翔(そらの かける)>がいる。
ある日、そんな幼馴染と仲良くなりたいカースト上位女子に呼び出され、金魚のフンと言われてしまい、改めて自分の立ち位置というモノを冷静に考えたが……あれ?なんか俺達っておかしくない??
イケメンヤンデレ男子✕地味な平凡男子のちょっとした日常の一コマ話です。
【幼馴染DK】至って、普通。
りつ
BL
天才型×平凡くん。「別れよっか、僕達」――才能溢れる幼馴染みに、平凡な自分では釣り合わない。そう思って別れを切り出したのだけれど……?ハッピーバカップルラブコメ短編です。
告白ゲームの攻略対象にされたので面倒くさい奴になって嫌われることにした
雨宮里玖
BL
《あらすじ》
昼休みに乃木は、イケメン三人の話に聞き耳を立てていた。そこで「それぞれが最初にぶつかった奴を口説いて告白する。それで一番早く告白オッケーもらえた奴が勝ち」という告白ゲームをする話を聞いた。
その直後、乃木は三人のうちで一番のモテ男・早坂とぶつかってしまった。
その日の放課後から早坂は乃木にぐいぐい近づいてきて——。
早坂(18)モッテモテのイケメン帰国子女。勉強運動なんでもできる。物静か。
乃木(18)普通の高校三年生。
波田野(17)早坂の友人。
蓑島(17)早坂の友人。
石井(18)乃木の友人。
振られた腹いせに別の男と付き合ったらそいつに本気になってしまった話
雨宮里玖
BL
「好きな人が出来たから別れたい」と恋人の翔に突然言われてしまった諒平。
諒平は別れたくないと引き止めようとするが翔は諒平に最初で最後のキスをした後、去ってしまった。
実は翔には諒平に隠している事実があり——。
諒平(20)攻め。大学生。
翔(20) 受け。大学生。
慶介(21)翔と同じサークルの友人。
言い逃げしたら5年後捕まった件について。
なるせ
BL
「ずっと、好きだよ。」
…長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。
もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。
ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。
そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…
なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!?
ーーーーー
美形×平凡っていいですよね、、、、
俺の親友がモテ過ぎて困る
くるむ
BL
☆完結済みです☆
番外編として短い話を追加しました。
男子校なのに、当たり前のように毎日誰かに「好きだ」とか「付き合ってくれ」とか言われている俺の親友、結城陽翔(ゆうきはるひ)
中学の時も全く同じ状況で、女子からも男子からも追い掛け回されていたらしい。
一時は断るのも面倒くさくて、誰とも付き合っていなければそのままOKしていたらしいのだけど、それはそれでまた面倒くさくて仕方がなかったのだそうだ(ソリャソウダロ)
……と言う訳で、何を考えたのか陽翔の奴、俺に恋人のフリをしてくれと言う。
て、お前何考えてんの?
何しようとしてんの?
……てなわけで、俺は今日もこいつに振り回されています……。
美形策士×純情平凡♪
【完結】大学で再会した幼馴染(初恋相手)に恋人のふりをしてほしいと頼まれた件について
kouta
BL
大学で再会した幼馴染から『ストーカーに悩まされている。半年間だけ恋人のふりをしてほしい』と頼まれた夏樹。『焼き肉奢ってくれるなら』と承諾したものの次第に意識してしまうようになって……
※ムーンライトノベルズでも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる