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30.ダブルデート~望まない再会(2)~
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千紗は呆然として、声の主を見る。ゆるく巻いた黒髪の女性がいた。
呆気に取られていたらしい恒輝が、彼女の肩をつかんだ。
「カオリ、何やってんだよ。千紗ちゃんに謝れよ」
「いやよ、この女、まだ恒輝のことつけまわしてんでしょ。わからせないと」
2人のやりとりをボーっとした頭で聞く。
千紗は、自分をにらみつけるカオリを見て胸が重苦しくなる。
恒輝の話すら聞こうとしないなんて、この人は思い込みが激しすぎるのだろうか。
胸の奥から体全体に黒いモヤが広がってくるようだった。
「つけまわしてなんてないですよ。あなたにガムを髪に塗りつけられた日から全然会っていませんし、今もたまたま会って、恒輝さんのほうから声をかけられたんです」
「嘘よ、そんなの」
恒輝に肩をつかまれているにもかかわらず、カオリは千紗に突進してきそうな勢いだ。鬼のような形相をしたカオリを正面から見る。
嘘かどうかは隣にいる自分の彼氏に確かめればいいのに。それすらしないで、自分の思い込みを優先するってどういう気持ちなんだろう。
千紗はため息をつく。
頬の痛みが原因か、体が中から熱くなってくる。シェイクが手のぬくもりで溶けないか気になってきた。
恒輝はそんな2人を見比べながら、状況が理解できていない表情を浮かべる。
「カオリ、千紗ちゃんの言うとおりだよ。ってか、千紗ちゃんの髪にガム塗ったって、なんのことだ?」
恒輝の問いに、カオリは苦々し気に顔をそむけた。
焦点を合わす気のない千紗の目に、手を振りながらこっちへ走ってくる大輝が映った。
大輝は恒輝とカオリの間をぶつかるように抜けて千紗の隣へ立つ。
「彼女に何か用?……って、兄貴?カオリさん」
「えっ、大輝?」
状況がつかめず、大輝は3人の顔を順番に見た。
千紗も目を丸くして、気持ちを立て直すように持っていたバニラのシェイクを大輝に突き出した。
「兄貴って。恒輝さんは大輝くんのお兄さんなの?」
大輝はバニラシェイクを受け取ってうなずき、怪訝そうな顔で千紗の顔をのぞきこんだ。
「あれ、千紗。どうした、その顔。頬が赤くなってんじゃん」
突然の呼び捨てに心臓がつかまれたようになった千紗は動揺を抑えて、ゆっくり口を開く。
「えっと。恒輝さんの彼女さんに叩かれた」
大輝がにらみつけるようにカオリを見た。
「どういうことだよ、カオリさん」
カオリは黙ったままだ。状況をつかめていない大輝に、千紗は順を追って説明する。
高1のときに付き合っていたのが恒輝で、さっき久しぶりに会って声をかけられたこと。話していたら、カオリがどこかから戻ってきて、千紗がずっと恒輝を思い続けてつけまわしていると勘違いして頬を叩かれたこと。
続けて、恒輝には、1年半前、千紗がバイトを辞める直前、カオリに罵られて、髪にガムを塗りつけられたことを伝える。
「で、ガムは洗っても落ちなさそうだったんで、髪は切りました」
話をしてい間、カオリはどこか遠くの方へ視線を向けていた。大輝と恒輝は神妙な顔つきで千紗を見ていた。
呆気に取られていたらしい恒輝が、彼女の肩をつかんだ。
「カオリ、何やってんだよ。千紗ちゃんに謝れよ」
「いやよ、この女、まだ恒輝のことつけまわしてんでしょ。わからせないと」
2人のやりとりをボーっとした頭で聞く。
千紗は、自分をにらみつけるカオリを見て胸が重苦しくなる。
恒輝の話すら聞こうとしないなんて、この人は思い込みが激しすぎるのだろうか。
胸の奥から体全体に黒いモヤが広がってくるようだった。
「つけまわしてなんてないですよ。あなたにガムを髪に塗りつけられた日から全然会っていませんし、今もたまたま会って、恒輝さんのほうから声をかけられたんです」
「嘘よ、そんなの」
恒輝に肩をつかまれているにもかかわらず、カオリは千紗に突進してきそうな勢いだ。鬼のような形相をしたカオリを正面から見る。
嘘かどうかは隣にいる自分の彼氏に確かめればいいのに。それすらしないで、自分の思い込みを優先するってどういう気持ちなんだろう。
千紗はため息をつく。
頬の痛みが原因か、体が中から熱くなってくる。シェイクが手のぬくもりで溶けないか気になってきた。
恒輝はそんな2人を見比べながら、状況が理解できていない表情を浮かべる。
「カオリ、千紗ちゃんの言うとおりだよ。ってか、千紗ちゃんの髪にガム塗ったって、なんのことだ?」
恒輝の問いに、カオリは苦々し気に顔をそむけた。
焦点を合わす気のない千紗の目に、手を振りながらこっちへ走ってくる大輝が映った。
大輝は恒輝とカオリの間をぶつかるように抜けて千紗の隣へ立つ。
「彼女に何か用?……って、兄貴?カオリさん」
「えっ、大輝?」
状況がつかめず、大輝は3人の顔を順番に見た。
千紗も目を丸くして、気持ちを立て直すように持っていたバニラのシェイクを大輝に突き出した。
「兄貴って。恒輝さんは大輝くんのお兄さんなの?」
大輝はバニラシェイクを受け取ってうなずき、怪訝そうな顔で千紗の顔をのぞきこんだ。
「あれ、千紗。どうした、その顔。頬が赤くなってんじゃん」
突然の呼び捨てに心臓がつかまれたようになった千紗は動揺を抑えて、ゆっくり口を開く。
「えっと。恒輝さんの彼女さんに叩かれた」
大輝がにらみつけるようにカオリを見た。
「どういうことだよ、カオリさん」
カオリは黙ったままだ。状況をつかめていない大輝に、千紗は順を追って説明する。
高1のときに付き合っていたのが恒輝で、さっき久しぶりに会って声をかけられたこと。話していたら、カオリがどこかから戻ってきて、千紗がずっと恒輝を思い続けてつけまわしていると勘違いして頬を叩かれたこと。
続けて、恒輝には、1年半前、千紗がバイトを辞める直前、カオリに罵られて、髪にガムを塗りつけられたことを伝える。
「で、ガムは洗っても落ちなさそうだったんで、髪は切りました」
話をしてい間、カオリはどこか遠くの方へ視線を向けていた。大輝と恒輝は神妙な顔つきで千紗を見ていた。
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