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41.問題の進展
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何の進展もないまま1週間が過ぎた。
その日、蓮と悠里は昼休みにサッカー部の集まりがあるらしく、屋上へ出る扉前の踊り場に来たのは、千紗と大輝の2人だった。
2人並んで座り、壁に背中を預ける。胸に巣食っている黒いモヤの行き場を求めて、千紗は大輝の腕をつかむ。
「リオさんのボディガード、いつまで続けるの」
焼きそばパンに食らいついた大輝が口を動かしながら、千紗の手を腕から離した。
「それなんだけどさ、あ、弁当食べながら聞いてよ」
横座りした千紗の膝の上に置かれた弁当箱をあごで示してきた。
千紗は薄いグリーンの包みを解き、弁当箱を開けた。箸で玉子焼きをつかむ。それを口元へ持ってきたとき、箸を持つ手を大輝につかまれた。
玉子焼きは彼の口に入ってしまう。あんぐりと口を開ける千紗の頭に大輝は手を乗せ、軽く2回たたく。
久しぶりの感触に胸のあたりに広く根付いていたモヤはどこかへ行き、代わりに心臓が激しく鼓動しだした。あたりに響き渡る生徒たちの話し声や物音が激しくなる心臓の音をかき消してくれるようで安心する。
大輝が玉子焼きを飲み込んで、千紗の顔をのぞきこんできた。
「玉子焼き、ごちそうさま」
大輝は焼きそばパンを頬張りながら、頭に乗せた手で千紗の髪をいじり始める。
「ごめん。ずっとほったらかしになってて。でも、昨日の夜、ストーカーと話せたんだ。だから今日、リオと会って、そのことを伝えるつもり。で、話するのに千紗もつきあってほしいんだ」
弁当箱を見つめて、玉子焼きを口に運んでいた千紗は顔を上げる。触れそうなくらい近くにある、その端正な顔を見た。
「1人で会ったの?ストーカーって危ない人じゃなかったの?えっと本当にもう大丈夫なの?ってか、リオさんに話するのに何で私も行くの?」
浮かんできた疑問が次々と口をついて出てくる。言葉を挟む間も与えない千紗の勢いに、大輝は顔をくしゃくしゃにして肩を揺らしている。
「そんなにいっぺんに言ってくるなよ。まあ、俺がその疑問に答える間に弁当を食べてしまえよ。昼休みが終わっちまう」
髪を触っていた手が頭を撫でた。
大輝の手にあった焼きそばパンはすでになくなって、ハンバーガーにかぶりついていた。
「まず、ストーカーはいなかった」
千紗は勢いよく大輝のほうへ顔を向け、口に入れたご飯を喉に詰まらせた。
苦しくて胸を叩き、咳き込みながらペットボトルのふたを開ける。お茶を喉に流し込んで、大きく息を吐いた。
「……どういうこと」
千紗は、ハンバーガーも食べ終えて紙パックのコーヒー牛乳をすする大輝を見る。彼は立てた膝で頬杖をついた。
「昨日、ストーカーと話したって言ったけど。あれ、俺が待ち伏せされたんだよ。で、話があるって言われて、近くのファーストフード店に連れていかれた。まあ、俺も話がしたかったから、ちょうど良かったんだけど」
そこで、ストーカーと思われていた男が大輝に話したことは驚きの内容だったらしい。
その日、蓮と悠里は昼休みにサッカー部の集まりがあるらしく、屋上へ出る扉前の踊り場に来たのは、千紗と大輝の2人だった。
2人並んで座り、壁に背中を預ける。胸に巣食っている黒いモヤの行き場を求めて、千紗は大輝の腕をつかむ。
「リオさんのボディガード、いつまで続けるの」
焼きそばパンに食らいついた大輝が口を動かしながら、千紗の手を腕から離した。
「それなんだけどさ、あ、弁当食べながら聞いてよ」
横座りした千紗の膝の上に置かれた弁当箱をあごで示してきた。
千紗は薄いグリーンの包みを解き、弁当箱を開けた。箸で玉子焼きをつかむ。それを口元へ持ってきたとき、箸を持つ手を大輝につかまれた。
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久しぶりの感触に胸のあたりに広く根付いていたモヤはどこかへ行き、代わりに心臓が激しく鼓動しだした。あたりに響き渡る生徒たちの話し声や物音が激しくなる心臓の音をかき消してくれるようで安心する。
大輝が玉子焼きを飲み込んで、千紗の顔をのぞきこんできた。
「玉子焼き、ごちそうさま」
大輝は焼きそばパンを頬張りながら、頭に乗せた手で千紗の髪をいじり始める。
「ごめん。ずっとほったらかしになってて。でも、昨日の夜、ストーカーと話せたんだ。だから今日、リオと会って、そのことを伝えるつもり。で、話するのに千紗もつきあってほしいんだ」
弁当箱を見つめて、玉子焼きを口に運んでいた千紗は顔を上げる。触れそうなくらい近くにある、その端正な顔を見た。
「1人で会ったの?ストーカーって危ない人じゃなかったの?えっと本当にもう大丈夫なの?ってか、リオさんに話するのに何で私も行くの?」
浮かんできた疑問が次々と口をついて出てくる。言葉を挟む間も与えない千紗の勢いに、大輝は顔をくしゃくしゃにして肩を揺らしている。
「そんなにいっぺんに言ってくるなよ。まあ、俺がその疑問に答える間に弁当を食べてしまえよ。昼休みが終わっちまう」
髪を触っていた手が頭を撫でた。
大輝の手にあった焼きそばパンはすでになくなって、ハンバーガーにかぶりついていた。
「まず、ストーカーはいなかった」
千紗は勢いよく大輝のほうへ顔を向け、口に入れたご飯を喉に詰まらせた。
苦しくて胸を叩き、咳き込みながらペットボトルのふたを開ける。お茶を喉に流し込んで、大きく息を吐いた。
「……どういうこと」
千紗は、ハンバーガーも食べ終えて紙パックのコーヒー牛乳をすする大輝を見る。彼は立てた膝で頬杖をついた。
「昨日、ストーカーと話したって言ったけど。あれ、俺が待ち伏せされたんだよ。で、話があるって言われて、近くのファーストフード店に連れていかれた。まあ、俺も話がしたかったから、ちょうど良かったんだけど」
そこで、ストーカーと思われていた男が大輝に話したことは驚きの内容だったらしい。
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