「好き」があふれて止まらない!

梶ゆいな

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【6】我妻くんとの約束

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「やっとひとりになれた」

お弁当を食べ終えた直後、逃げるようにして旧校舎を訪れたわたし。

午前中は休み時間のたびに女の子たちから話しかけられて全く気が休まらなかった。

原因は今朝、我妻くんと一緒に教室を出ていったから。

わたしが我妻くんと何をしていたのか気になったんだと思う。


『比高さん。今朝、我妻くんとなんの話をしてたの?』

『えっと、図書委員のわたしに音楽の本がどこに置いてあるのか聞きたかったみたい』

わたしの答えに女の子たちはみんな安堵していた。


「我妻くんの人気って本当にすごいや」

「呼んだか?」

「えっ?」

階段に腰掛けていたわたしの前にまさかのご本人登場。

「あ、我妻くんがどうしてここに」

「旧校舎の音楽室を部室として使ってるって話しただろ?」

そ、そうだった! 

それに昨日もここで会ったんだった。

色々あってすっかり忘れていた。

「だけど、今日は比高に用があって来た。またここにいるんじゃないかと思って」

「わたしに?」

「これ。さっき返しそびれたから」

我妻くんが持っていたのはわたしのルーズリーフ。

「⋯⋯返してくれるの?」

「最初から返す気だった。さっきはタイミングがなかっただけだ。誰かが無理やり話を切り上げたからな」

誰かってわたしのこと?

「あれは予鈴が鳴ったから。話だって終わってたでしょう?」

「終わってない」

我妻くんはそう言ってわたしの隣に腰を下ろした。

「お、終わったよ。わたし無理だって言ったよね?」

「俺は納得してない」

「そ、そんなの勝手だよ。我妻くんなら他にも頼める人がいるでしょう? 確か三組の相原あいはらさんは作文で優秀賞をもらってたし、五組の中尾なかおくんは国語の成績が一位らしいよ」

文章を書くのが得意な人はわたし以外にたくさんいる。

「なんで今、他の奴の話?」

「だって、我妻くんたちラブソングが書けなくて困ってるんでしょ? だから、書けそうな人を紹介しようと思って⋯⋯」

「うん、困ってる。だから、比高が助けてよ」

綺麗な瞳がわたしの目をまっすぐに見つめてきて思わず頷いてしまいそうになる。

イケメンってずるい。

だけど、わたしの意志は固い。


「何度も言ったけどわたしには⋯⋯」

わたしが「できない」と言うよりも先に我妻くんが口を開いた。

「俺も簡単には諦められないから一度チャンスをくれないか?」

「チャンスって⋯⋯?」

「今日の放課後、俺らの曲を聴きに来てよ。そのあと、もう一度返事を聞かせてほしい」

何があってもわたしの答えは変わらない。

でも、このままだと話は平行線のまま進まないし、曲を聴くだけなら⋯⋯。

「わかった」

わたしが我妻くんの提案を受け入れると、目の前の薄くて綺麗な唇が弧を描いた。

「ありがとう、比高。じゃあ、放課後」

「うん」

階段を二段飛ばしで下りていった我妻くんは「約束な」と最後に念を押してから去っていった。

「なんだか嵐みたいな一日だよ⋯⋯」


この約束が未来に大きな変化をもたらすことを中二のわたしたちはまだ知らなかった。


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