17 / 33
【17】ピアノ経験者を探せ!
しおりを挟むMEBIUSがライブで初めてのラブソングを披露してから一か月。
六月下旬にあった期末テストを終えたわたしたちは久々に音楽室に集まった。
「テストは終わったけど、数学も終わったよ。別の意味で」
体感だと半分以上、点数を取れた気がしない。
「テスト期間は小説書かずに勉強したんじゃねーの?」
中間テストで学年一位だった奏人は期末テストも余裕そうだ。
「したけど数学は期待できない」
「咲茉はちゃんと勉強しただけ偉いって! 俺なんて全教科一夜漬けだから」
「新、励ましてくれてありがとう」
一か月前のライブの日にお互いを名前で呼ぶようになったわたしたち。
最初の頃はぎこちなかったけれど(主にわたしが)、今では名前呼びにもすっかり慣れた。
「お前はもっと危機感持てよ。補習になったら練習時間が減るんだから」
「大丈夫、大丈夫! 毎回、ギリギリの点で補習は回避してるから」
それってすごいけど、大丈夫なのかな⋯⋯?
「はいはい。お喋りはこの辺にして、先に決めなきゃいけないことがあるだろう」
千里先輩がパンパンと手を鳴らす。
机を四台くっつけて奏人、新、千里先輩がそれぞれ席に着いた。
わたしの指定席はいつの間にか奏人の隣になっていて、自分の席に腰を下ろす。
「決めなきゃいけないことってなんですか⋯⋯?」
わたしも呼ばれたってことは、新曲の歌詞について話すのかな?
MEBIUSとはこの一か月の間にもう一曲、ラブソングを完成させた。
テスト前には新たに三曲分の歌詞を書いて奏人に提出したけれど、テスト期間をはさんだからまだ話は進んでいない。
「実はMEBIUSの間で一年程前から出ていた話があって⋯⋯新メンバーの加入を考えてるんだ。三週間後には夏休みが始まるしその前に結論を出したくて」
千里先輩の言葉にわたしは持っていたペンを床へと落とした。
メ、MEBIUSに新メンバーが加入⁉
そんな話は一度も聞いたことがない。
「だ、誰が加入するんですか⋯⋯?」
千里先輩にした質問の答えは奏人から返ってきた。
「それはまだ決まってない。だけど、もっと幅広い曲をやるためにずっとキーボードを探してるんだ」
キーボード⋯⋯。
そういえばバンドグループではよく見かける。
MEBIUSは奏人がギター、新がドラム、千里先輩がベースを担当。
「ピアノ経験者を探しても女子ばっかりで男子は見つからないんだよ」
「女の子じゃだめなの?」
「だめってわけじゃないんだけど⋯⋯女の子に加入してもらうのはリスクが高いかな。だって、俺たちに全く興味がない子なんていないでしょ? バンド内で揉め事は避けたいから」
千里先輩はメガネをクイッとあげてにっこりと微笑んだ。
すごい自信⋯⋯!
だけど、千里先輩の言うとおり女の子が加入したら色恋沙汰は避けられないのかもしれない。
近頃、MEBIUSの人気は高まる一方で、奏人たちは常に熱い視線の中にいるからだ。
海音ちゃんも毎日のようにファンクラブ加入希望者から声をかけられると言っていた。
「どこかに男子でピアノ経験者⋯⋯いや、ピアノに興味がある奴いないかな」
新はそう言って席を立ち、窓からグラウンドをのぞく。
さすがにその方法だと見つからないんじゃ⋯⋯?
「それかいっそのこと咲茉ちゃんが加入しちゃう?」
「な、何を言ってるんですか千里先輩。わたしには無理ですよ」
初めから無理だと決めずにチャレンジする大切さを学んだばかりだけれど、今回ばかりは例外だ。
小説を書く時間をこれ以上、削ることはできないし、何よりもMEBIUSと同じステージに立つなら三人と同じくらい音楽を好きな人がいいと思うから。
「だよね。さすがにこれ以上、咲茉ちゃんに負担を強いるわけにはいかないか」
「あと、一応わたしも女子なんですけど⋯⋯」
「もちろんわかってるよ。でも⋯⋯」
「「「咲茉(ちゃん)は小説にしか興味ないから」」」
千里先輩と奏人、新、三人の声が見事にハモった。
「それに咲茉ちゃんとならバンド内恋愛も悪くないかなって。どう? やる気になった?」
わたしに向けてパチッとウィンクを飛ばす千里先輩。
先輩は時々こうしてわたしをからかうことがある。
「そ、その手には乗りませんから!」
わたしの反応を見て千里先輩が満足気に笑った。
「さて、冗談はこの辺にしてどうする? 手当たり次第、声をかけてみる?」
奏人は腕を組みながら、新はグラウンドを眺めたまま考え込む。
なにかいい案がないかわたしも一緒に考えた。
0
あなたにおすすめの小説
クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました
藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。
相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。
さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!?
「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」
星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。
「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」
「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」
ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や
帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……?
「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」
「お前のこと、誰にも渡したくない」
クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。
左左左右右左左 ~いらないモノ、売ります~
菱沼あゆ
児童書・童話
菜乃たちの通う中学校にはあるウワサがあった。
『しとしとと雨が降る十三日の金曜日。
旧校舎の地下にヒミツの購買部があらわれる』
大富豪で負けた菜乃は、ひとりで旧校舎の地下に下りるはめになるが――。
独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。
猫菜こん
児童書・童話
小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。
中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!
そう意気込んでいたのに……。
「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」
私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。
巻き込まれ体質の不憫な中学生
ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主
咲城和凜(さきしろかりん)
×
圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良
和凜以外に容赦がない
天狼絆那(てんろうきずな)
些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。
彼曰く、私に一目惚れしたらしく……?
「おい、俺の和凜に何しやがる。」
「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」
「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」
王道で溺愛、甘すぎる恋物語。
最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
児童書・童話
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
四尾がつむぐえにし、そこかしこ
月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。
憧れのキラキラ王子さまが転校する。
女子たちの嘆きはひとしお。
彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。
だからとてどうこうする勇気もない。
うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。
家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。
まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。
ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、
三つのお仕事を手伝うことになったユイ。
達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。
もしかしたら、もしかしちゃうかも?
そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。
結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。
いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、
はたしてユイは何を求め願うのか。
少女のちょっと不思議な冒険譚。
ここに開幕。
【奨励賞】氷の王子は、私のスイーツでしか笑わない――魔法学園と恋のレシピ【完結】
旅する書斎(☆ほしい)
児童書・童話
【第3回きずな児童書大賞で奨励賞をいただきました】
魔法が学べる学園の「製菓科」で、お菓子づくりに夢中な少女・いちご。周囲からは“落ちこぼれ”扱いだけど、彼女には「食べた人を幸せにする」魔法菓子の力があった。
ある日、彼女は冷たく孤高な“氷の王子”レオンの秘密を知る。彼は誰にも言えない魔力不全に悩んでいた――。
「私のお菓子で、彼を笑顔にしたい!」
不器用だけど優しい彼の心を溶かすため、特別な魔法スイーツ作りが始まる。
甘くて切ない、学園魔法ラブストーリー!
生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!
mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの?
ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。
力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる!
ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。
読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。
誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。
流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。
現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇
此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。
【完結】またたく星空の下
mazecco
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 君とのきずな児童書賞 受賞作】
※こちらはweb版(改稿前)です※
※書籍版は『初恋×星空シンバル』と改題し、web版を大幅に改稿したものです※
◇◇◇冴えない中学一年生の女の子の、部活×恋愛の青春物語◇◇◇
主人公、海茅は、フルート志望で吹奏楽部に入部したのに、オーディションに落ちてパーカッションになってしまった。しかもコンクールでは地味なシンバルを担当することに。
クラスには馴染めないし、中学生活が全然楽しくない。
そんな中、海茅は一人の女性と一人の男の子と出会う。
シンバルと、絵が好きな男の子に恋に落ちる、小さなキュンとキュッが詰まった物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる