「好き」があふれて止まらない!

梶ゆいな

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【17】ピアノ経験者を探せ!

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MEBIUSがライブで初めてのラブソングを披露してから一か月。

六月下旬にあった期末テストを終えたわたしたちは久々に音楽室に集まった。

「テストは終わったけど、数学も終わったよ。別の意味で」

体感だと半分以上、点数を取れた気がしない。

「テスト期間は小説書かずに勉強したんじゃねーの?」

中間テストで学年一位だった奏人は期末テストも余裕そうだ。

「したけど数学は期待できない」

「咲茉はちゃんと勉強しただけ偉いって! 俺なんて全教科一夜漬けだから」

「新、励ましてくれてありがとう」


一か月前のライブの日にお互いを名前で呼ぶようになったわたしたち。

最初の頃はぎこちなかったけれど(主にわたしが)、今では名前呼びにもすっかり慣れた。

「お前はもっと危機感持てよ。補習になったら練習時間が減るんだから」

「大丈夫、大丈夫! 毎回、ギリギリの点で補習は回避してるから」

それってすごいけど、大丈夫なのかな⋯⋯?

「はいはい。お喋りはこの辺にして、先に決めなきゃいけないことがあるだろう」

千里先輩がパンパンと手を鳴らす。

机を四台くっつけて奏人、新、千里先輩がそれぞれ席に着いた。

わたしの指定席はいつの間にか奏人の隣になっていて、自分の席に腰を下ろす。

「決めなきゃいけないことってなんですか⋯⋯?」

わたしも呼ばれたってことは、新曲の歌詞について話すのかな?

MEBIUSとはこの一か月の間にもう一曲、ラブソングを完成させた。

テスト前には新たに三曲分の歌詞を書いて奏人に提出したけれど、テスト期間をはさんだからまだ話は進んでいない。


「実はMEBIUSの間で一年程前から出ていた話があって⋯⋯新メンバーの加入を考えてるんだ。三週間後には夏休みが始まるしその前に結論を出したくて」

千里先輩の言葉にわたしは持っていたペンを床へと落とした。

メ、MEBIUSに新メンバーが加入⁉

そんな話は一度も聞いたことがない。

「だ、誰が加入するんですか⋯⋯?」

千里先輩にした質問の答えは奏人から返ってきた。

「それはまだ決まってない。だけど、もっと幅広い曲をやるためにずっとキーボードを探してるんだ」

キーボード⋯⋯。

そういえばバンドグループではよく見かける。

MEBIUSは奏人がギター、新がドラム、千里先輩がベースを担当。

「ピアノ経験者を探しても女子ばっかりで男子は見つからないんだよ」

「女の子じゃだめなの?」

「だめってわけじゃないんだけど⋯⋯女の子に加入してもらうのはリスクが高いかな。だって、俺たちに全く興味がない子なんていないでしょ? バンド内で揉め事は避けたいから」

千里先輩はメガネをクイッとあげてにっこりと微笑んだ。

すごい自信⋯⋯!

だけど、千里先輩の言うとおり女の子が加入したら色恋沙汰は避けられないのかもしれない。

近頃、MEBIUSの人気は高まる一方で、奏人たちは常に熱い視線の中にいるからだ。


海音ちゃんも毎日のようにファンクラブ加入希望者から声をかけられると言っていた。

「どこかに男子でピアノ経験者⋯⋯いや、ピアノに興味がある奴いないかな」

新はそう言って席を立ち、窓からグラウンドをのぞく。

さすがにその方法だと見つからないんじゃ⋯⋯?

「それかいっそのこと咲茉ちゃんが加入しちゃう?」

「な、何を言ってるんですか千里先輩。わたしには無理ですよ」

初めから無理だと決めずにチャレンジする大切さを学んだばかりだけれど、今回ばかりは例外だ。

小説を書く時間をこれ以上、削ることはできないし、何よりもMEBIUSと同じステージに立つなら三人と同じくらい音楽を好きな人がいいと思うから。


「だよね。さすがにこれ以上、咲茉ちゃんに負担を強いるわけにはいかないか」

「あと、一応わたしも女子なんですけど⋯⋯」

「もちろんわかってるよ。でも⋯⋯」

「「「咲茉(ちゃん)は小説にしか興味ないから」」」

千里先輩と奏人、新、三人の声が見事にハモった。


「それに咲茉ちゃんとならバンド内恋愛も悪くないかなって。どう? やる気になった?」

わたしに向けてパチッとウィンクを飛ばす千里先輩。

先輩は時々こうしてわたしをからかうことがある。

「そ、その手には乗りませんから!」

わたしの反応を見て千里先輩が満足気に笑った。

「さて、冗談はこの辺にしてどうする? 手当たり次第、声をかけてみる?」

奏人は腕を組みながら、新はグラウンドを眺めたまま考え込む。

なにかいい案がないかわたしも一緒に考えた。

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