すみません、その悪役公爵令嬢……私の嫁です

御剣刃金

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幼少期編

2.赤い髪の少年

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 最近友達が二人出来ました。

 一人は王子のお披露目会の後に。
 もう一人は平民街の屋台で。

 王子のお披露目会で出会った子は、銀髪にキリッとした目線。将来絶対美人になるんだろうなと言う雰囲気はそれはもう一目惚れしそうな程でした。
 ですが王子の婚約者と言う事でスッと一目惚れを封印。そもそもロリコンではないので案外すんなり落ち着きを取り戻しました。
 ですがそれから数日の後、とある事件が切っ掛けで友達となったのです。
 まぁ内容はまた今度として、お二人目は活発な少年です。

 小腹が空いた時は平民街の人気屋台でおまんじゅうを頬張りに行くのですが、その日は少し遅くなってしまい店に着く頃には人気のまんじゅうが最後の一つになっていました。

「おじさん!まんじゅう一つ!」
「おじさん!マカロン一つ!」

 そのベリーショートな赤髪の少年と出会ったのは最後の一つの人気まんじ――「これ、マカロンだよ?」の争奪戦。
 丸いからまんじゅうと安易に言っていたが、なんだか恥ずかしくなり最後の一つのまん、マカロンを彼に譲ったのが始まりでした。

 彼の名前はハル。
 ズボンはいつも汚れていて「ニカッ!」と笑う笑顔には鼻水がカピカピになってる事もあり、ハンカチを濡らし彼の顔を拭くのが日課の様になってます。
 貧民街の子、と言う訳ではなく。ただ単に活発なだけの様です。
 そこで気になり、彼に問うた事がありました。

「ハル。君はなんでそんなにいつも汚れてるの?」

 そう言うと彼は少しおかしな事を語り始めたのです。

「アレクだけに言うけど今から言う事は秘密だよ?」

 子供同士の秘密。なんか昔懐かしくワクワクします。
 この子はどんな秘密を私に語って聞かせてくれるのでしょ。

――「実はね、この世界はエデンって言うんだよ」

「それは知っ……!」

 危ない!この惑星がエデンと言うのは貴族で普通の認識でまだ学校にも通っていない平民の子が普通なら知る筈もない事だ。
 いずれ学校で学ぶにしても、今ここで私が知ってるなどと言ったら彼は落胆。いや!下手をすると彼の人生最初のプライドを傷つけ将来的にグレてしまうかも知れません!ならば!

「それは知っ……知らなかった!」

「でしょ?」―ニカッ!

 ふぃ~正解の様ですね。
 
「で、このエデンは本当は乙女ゲームの世界。登場人物に居ない君に言ってもなんの問題も無いから話すんだけどね」

 乙女ゲーム?
 どこかで聞いた事がある様な気もするんですが……うちのメイドさんだったかな?

「それでこのゲームの中盤で国同士の戦争が起こるんだ」

「戦争ですか。なんだか怖い話ですね」

「でしょ?だから戦争が始まる前にアーティファクトを集めて聖女になるんだ」

 アーティファクトを集めて聖女ですか……確かにアーティファクトに女神の加護が封印されている物があると聞きますが。
 聖人ではなく聖女とはまた……まぁ子供が意味も解らず言葉のゴロが気に入ってしまう事は多々ある事です。
 いずれ私のマカロンの様に顔を赤くする事もあるでしょう。
 ですがそれも経験です。
 同じ子供の私が指摘する事でもありませんね!

「それでアーティファクトを探す為にいつも泥んこなんだね」

「そう!」――ニカッ!

 彼の満面の笑顔に心の底から癒されるのは何故でしょうか。
 しかし戦争とは嫌な言葉ですね。
 最近調べた所、隣国との情勢は不安定では無い事は父に聞いてますが。国境を接する国同士がいつまでも仲良くとはいかないでしょうね。
 本当に人間と言う種族は罪深いものです……いつの時代もどの世界でも。

「戦争ですかぁ」

 思わずため息交じりに言葉が漏れてしまいました。

「大丈夫!絶対友達のアレクは守ってあげる!」

「それは頼もしい限りです。ですがそんな必要はありませんよ」

「えぇ~!なんでさ!」

「こー見えて結構強いんですよ?」

 そこで素振りの真似をする。

「うっそだぁ~!あははははっ」

 ま、戦争なんて行きたくもないですけどね。

「あ、もうこんな時間!帰らなきゃ!」

「と、そんな時間ですか。今日も楽しかったですハル」

「う、うん!じゃまたねアレク!」

 夕日の平民街の階段を駆け下りて行くハル。

――振り返り手を振る満面の笑みの彼を見た。
    それ以降、彼と会う事は二度と無かったのだった。



 
 
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