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セレスティア王立学園編
7.王都の学園なので王子も居ます
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王都セレスティア。
貴族街に位置するその学園は貴族街にありながらも、優秀な平民であれば受け入れる。この時代では門戸の開かれた学園である。
しかしながら貴族の選民主義が根深く、平民であれば後ろ盾の無い者は早々に学園を去ってしまうだろう。
だが人の心や思想とは関係なく春の風は心地よく、ここセレスティアでも桜が舞い、春の零れ日が独りの青年の髪を照らす。
「――漸く学園生活か」
眼鏡を掛けたブルーに近い紺色の髪の青年は貴族の証である黒い制服に身を包む。
腰に下げた剣は刃が潰された模造ではあるが、それが学園の騎士科の学生である事を示す。
それと彼には他の生徒には無い袖に輝く金のライン。
それは現時点での学年騎士科主席を意味していた。
青年は独り講堂へ続く石畳を進む。
「おい、そこの新入生!早々の遅刻だぞ!急げ!」
「遅刻なのに早々とはこれ如何に」
「なにしてんだ!走れ!」
「あ、はい!」
俺はポニーテール爺さんの懸命な指導により、晴れて騎士科への入学を果たしたのだった。
――――
――
「それでは新入生挨拶。入学試験主席のサイフォン・アレキサンドロス君前へ」
どうやら間に合った様だ。
私は講堂へ駆け込むと、そのままの勢いで「はい!」と声を上げ壇上へと駆け上がる。
前世の記憶があり子供の吸収力のあった私には、この世界の試験は非常に容易かった。
一番苦労した科目は勿論剣技でした。
点数を稼いだのは戦術や心得等の筆記だったのでしょう。
やってて良かった貴族。学園に対する父からの贈り物が良かったのでしょう。大助かりです。
正直剣術の腕は子供の頃から全く上達していませんが、試験官も手を抜いてくれた様です。
非常に弱かったので少し腰が引けました。
なので剣術実技試験もトップ、なんて言う破格の成績を頂きました。
いったい父は何を試験官へ送ったのでしょうか。気になります。
所詮この世も処世術が大切だと言う事ですね!なんと世知辛い。
「紹介に預かりましたアレキサンドロス・サイフォンです。これから3年間このセレスティア王立学園で学び、王国の礎となり、民と王を守る為の訓練を怠らず、邁進する事をここに誓い挨拶と代えさせて頂きます。また教師の先生方並びに先輩方には若輩者の私達を導いて頂ければ幸いです(イジメとかやめてください)。これから3年間共に学ぶ同級生一同を代表して、何卒宜しくお願い致します。入学生代表、サイフォン騎士爵嫡男アレキサンドロス」
「あいつサイフォン騎士団長の息子だぜ」
「キャッ!眼鏡が知的なのに騎士団長の嫡男て事は強いんでしょ!なんかイイわ」
「そうね、肩幅もなんか頼れる感じがいいかも」
「これは競争率高そうね」
そんな声があちらこちらから聞こえて来る。
眼鏡を掛けていると知的に見えるのは仕方がないとしても、事実この学園程度のレベルであれば教師をしても問題ないと思うのは少し傲慢ですね。止めておきましょう。
ですが挨拶を終え席に戻る途中、不穏な声が耳に入って来ました。
「なんで代表挨拶が王子じゃなくてあんなモブなのよ。これじゃこの先どうなるかわからなくなっちゃうじゃない!」
なんでしょうか。
やはり貴族の学園なだけあって、王子ファンも居ると言うことでしょうが……この先とはいったい――痛っ!
「あら私とした事が。お怪我はありませんか?」
私の足元では、おもいっきり足を踏み抜かれています。
そして見上げればそっぽを向いて周りに笑顔を振りまくテルルの姿。
いつもの彼女のイタズラですね。
どうしてもちょっかいを出したくなるなんて、可愛いじゃないですか。
「テルル様、どうぞ先に足を上げて頂けると幸いです」
言いながらそっと彼女の足を触ろうとしたその瞬間。
「貴様どういうつもりだ!」
男性の手が私の肩を掴む。
振り向くと、そこには金髪を靡かせる白い制服の男子生徒が、鬼の形相で私を見下ろしていました。
この学園は階級によりその制服にも色分けがあります。
王族、大公、公爵、侯爵家までが白い制服。
伯爵、子爵、男爵、騎士爵は黒色。平民に至ってはなんとネズミ色です。
特に白い制服は、その爵位の少なさから必然的に子供の数も少ないわけなのですが……これは厄介です。
どう切り抜けるにしても、彼が何故怒っているのかがわかりません。
ここは一旦様子を。
「貴様!何故テルマイル嬢をテ、テ、テテテ、テルル様なぞと!そ、そんな馴れ馴れしく呼んでいるんだ!」
んー、これは失念してました。
そう言えば彼女の名前はテルマイルで間違いないですが、ずっと愛称で呼んでいたのでその違和感に私自身が気付く事が出来ませんでした。
確かに、ただの騎士爵の息子が公爵家令嬢を愛称で呼ぶのは不味いですね。
ですが大人を舐めない方が良いでしょう。こういった場合は惚けるのが大人の振る舞い方なのですよ少年。
「えっと、私はテルマイル様と申し上げたつもりでしたが気が動転してしまい、舌をかんでしまいその様に言ってしまったかもしれません。もし貴方に不快感を与えてしまったのあれば謝罪致します」
どうです怒れる少年。
冷静に返されては怒るのも馬鹿らしくなるでしょ?
しかも直ぐに紡がれる訂正と謝罪。ぐうの根も出ないでしょう。
「ふざけるな!そんな事でこの俺は騙されないぞ!」
あれ?
「テルマイル嬢は俺の婚約者だ!お前の様な下賤貴族が断りもなく喋っていい相手ではないわ!」
そのセリフで私はピンと来ました。
「(あー、この人王子だ)」
貴族街に位置するその学園は貴族街にありながらも、優秀な平民であれば受け入れる。この時代では門戸の開かれた学園である。
しかしながら貴族の選民主義が根深く、平民であれば後ろ盾の無い者は早々に学園を去ってしまうだろう。
だが人の心や思想とは関係なく春の風は心地よく、ここセレスティアでも桜が舞い、春の零れ日が独りの青年の髪を照らす。
「――漸く学園生活か」
眼鏡を掛けたブルーに近い紺色の髪の青年は貴族の証である黒い制服に身を包む。
腰に下げた剣は刃が潰された模造ではあるが、それが学園の騎士科の学生である事を示す。
それと彼には他の生徒には無い袖に輝く金のライン。
それは現時点での学年騎士科主席を意味していた。
青年は独り講堂へ続く石畳を進む。
「おい、そこの新入生!早々の遅刻だぞ!急げ!」
「遅刻なのに早々とはこれ如何に」
「なにしてんだ!走れ!」
「あ、はい!」
俺はポニーテール爺さんの懸命な指導により、晴れて騎士科への入学を果たしたのだった。
――――
――
「それでは新入生挨拶。入学試験主席のサイフォン・アレキサンドロス君前へ」
どうやら間に合った様だ。
私は講堂へ駆け込むと、そのままの勢いで「はい!」と声を上げ壇上へと駆け上がる。
前世の記憶があり子供の吸収力のあった私には、この世界の試験は非常に容易かった。
一番苦労した科目は勿論剣技でした。
点数を稼いだのは戦術や心得等の筆記だったのでしょう。
やってて良かった貴族。学園に対する父からの贈り物が良かったのでしょう。大助かりです。
正直剣術の腕は子供の頃から全く上達していませんが、試験官も手を抜いてくれた様です。
非常に弱かったので少し腰が引けました。
なので剣術実技試験もトップ、なんて言う破格の成績を頂きました。
いったい父は何を試験官へ送ったのでしょうか。気になります。
所詮この世も処世術が大切だと言う事ですね!なんと世知辛い。
「紹介に預かりましたアレキサンドロス・サイフォンです。これから3年間このセレスティア王立学園で学び、王国の礎となり、民と王を守る為の訓練を怠らず、邁進する事をここに誓い挨拶と代えさせて頂きます。また教師の先生方並びに先輩方には若輩者の私達を導いて頂ければ幸いです(イジメとかやめてください)。これから3年間共に学ぶ同級生一同を代表して、何卒宜しくお願い致します。入学生代表、サイフォン騎士爵嫡男アレキサンドロス」
「あいつサイフォン騎士団長の息子だぜ」
「キャッ!眼鏡が知的なのに騎士団長の嫡男て事は強いんでしょ!なんかイイわ」
「そうね、肩幅もなんか頼れる感じがいいかも」
「これは競争率高そうね」
そんな声があちらこちらから聞こえて来る。
眼鏡を掛けていると知的に見えるのは仕方がないとしても、事実この学園程度のレベルであれば教師をしても問題ないと思うのは少し傲慢ですね。止めておきましょう。
ですが挨拶を終え席に戻る途中、不穏な声が耳に入って来ました。
「なんで代表挨拶が王子じゃなくてあんなモブなのよ。これじゃこの先どうなるかわからなくなっちゃうじゃない!」
なんでしょうか。
やはり貴族の学園なだけあって、王子ファンも居ると言うことでしょうが……この先とはいったい――痛っ!
「あら私とした事が。お怪我はありませんか?」
私の足元では、おもいっきり足を踏み抜かれています。
そして見上げればそっぽを向いて周りに笑顔を振りまくテルルの姿。
いつもの彼女のイタズラですね。
どうしてもちょっかいを出したくなるなんて、可愛いじゃないですか。
「テルル様、どうぞ先に足を上げて頂けると幸いです」
言いながらそっと彼女の足を触ろうとしたその瞬間。
「貴様どういうつもりだ!」
男性の手が私の肩を掴む。
振り向くと、そこには金髪を靡かせる白い制服の男子生徒が、鬼の形相で私を見下ろしていました。
この学園は階級によりその制服にも色分けがあります。
王族、大公、公爵、侯爵家までが白い制服。
伯爵、子爵、男爵、騎士爵は黒色。平民に至ってはなんとネズミ色です。
特に白い制服は、その爵位の少なさから必然的に子供の数も少ないわけなのですが……これは厄介です。
どう切り抜けるにしても、彼が何故怒っているのかがわかりません。
ここは一旦様子を。
「貴様!何故テルマイル嬢をテ、テ、テテテ、テルル様なぞと!そ、そんな馴れ馴れしく呼んでいるんだ!」
んー、これは失念してました。
そう言えば彼女の名前はテルマイルで間違いないですが、ずっと愛称で呼んでいたのでその違和感に私自身が気付く事が出来ませんでした。
確かに、ただの騎士爵の息子が公爵家令嬢を愛称で呼ぶのは不味いですね。
ですが大人を舐めない方が良いでしょう。こういった場合は惚けるのが大人の振る舞い方なのですよ少年。
「えっと、私はテルマイル様と申し上げたつもりでしたが気が動転してしまい、舌をかんでしまいその様に言ってしまったかもしれません。もし貴方に不快感を与えてしまったのあれば謝罪致します」
どうです怒れる少年。
冷静に返されては怒るのも馬鹿らしくなるでしょ?
しかも直ぐに紡がれる訂正と謝罪。ぐうの根も出ないでしょう。
「ふざけるな!そんな事でこの俺は騙されないぞ!」
あれ?
「テルマイル嬢は俺の婚約者だ!お前の様な下賤貴族が断りもなく喋っていい相手ではないわ!」
そのセリフで私はピンと来ました。
「(あー、この人王子だ)」
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