すみません、その悪役公爵令嬢……私の嫁です

御剣刃金

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幼少期編

5.怒る白銀と私の秘密

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 サイフォン家は騎士の家系。
 剣に於いて右に出る者なし。

 過去、王都で名を馳せたサイフォン家ではあるが現当主は槍使いである。

 しかしながら周り、特に王家はサイフォン家には剣を奮って欲しいと願い父は今のポニーテール爺さんを私の剣の師匠として付けてる訳で……。

「何か考え事ですか?ボン」

「っつ!いえ何も」

「剣に迷いが見えますぞ?」

――カンカン!

「そーかなっ!よっ!」

「ふむ、これを捌きますか。ならばっ!セイッ!」

――カコーン!

 私の木剣が手元から遠く飛ばされる。

「これはまたいつもより遠くに飛びましたな」

「クッ」

「ボン、剣は人の心を写します。心の乱れは剣に出る事をくれぐれもお忘れなき様」

「……はい」

「では今日の稽古はここまでとします」

「え?」

「そう驚く事でもありますまい。ホレ、そこの噴水の影から姫が覗いておいでですよ」

 ポニーテール爺さんの視線の先には白銀の少女、テルルがこちらを伺っていた。

「テルル」

 私の呼び掛けに応じたのか、テルルはつかつかとこちらに歩みを進める。
 何故か飛んだ木剣を拾って。

「やいジジイ!私の物になんて事するんだ!叩きのめしてやる!」

「おやおや」

 ずっと隠していた羊の皮、はがれてますよ!!

「怒る白銀とはこの事ですかな?」

 ポニーテール爺がなにやら不穏な事を口ずさんでいる。
 なんだ怒る白銀って!ちょっとカッコイイ。

「剣を構えろジジイ!」

「よろしいので?」

 何故か私に確認してくる爺。
 いいもなにもダメに決まってる!相手は公爵令嬢ですよ!

「そんなのダメにきまっ「ターッ!」

 ちょっ!

 いいも何も既にテルルは突撃を開始して――

――ガンッ!!

「グッ!」

 テルルの一撃を剣を平にして両手で受け止める爺。
 それを機に、テルルは連撃を開始する。

「それそれそれそれ!」

「クッ!クッ!なんという」

「喋る余裕なんて与えないわよ!」

「ちょっ!え!?」

 爺の表情から余裕が消える。
 そして木剣からオーラが灯る。

 オーラ。

 この世界の戦士が使うスキルの様なもの。
 一撃の重さであったり、スピードであったり。
 要は人によってそのオーラは異なる。
 そんな物を公爵令嬢に使うとか、常軌を逸している。

「爺ダメだ!」

 私の言葉に気付いてくれたのか、爺は自身のオーラを沈めると。

「メーーーーーーン!」

 テルルの一撃が爺の頭部を直撃した。

「お、おみごと」――ガクッ

…………いやいやいやいやいや!

 6歳児!公爵令嬢!最後メーン!って!
 ツッコミどころ満載であるが、ツッコミ馴れていない私はその状況に固まるしかなく。

「どうアレク?私強いでしょ!」――えっへん!

 えっへんじゃありません!え、どーするんですコレ!

――その後、我が家のリビングにて何故か私だけが母上にこっぴどく叱られている。

「守る立場の者が守られてどうするのです!」

 ごもっともです、はい。

 壁際に佇む爺も私と同じ気持ちだろか。
 しかしこの憂鬱なお叱りの時間も、もう少しおとなしく叱られていれば終わるだろうと考えたその時。

「アレクは弱くないわ!」

 突然我が母に怒りを向ける公爵令嬢。

「いいえ姫。アレクは弱いから今私に叱られているのです」

 公爵令嬢相手に母も負けてはいいない。

「アレクは魔法を使ったら誰にも負けないわ!私だって負けちゃうもの!」

 え?

「「え?」」

 俺の驚きと爺と母の驚きは別の意味でしょう。

 そう、私は魔法を使える事を誰にも、家族にも話した事が無かったのです。
 ただ唯一この世界でこの魔法を使って助けたテルルだけが、私が魔法を扱える事を知っていた。
 と言う事です。

 なので私の「え?」はなんで今ここで言うのこの子。の「え?」である。


――――
――



「で、アレクは今どうしてる」

 昨日に引き続きリビングにてワインを手に取るガイナス。

「寝ていますわ」

「テルマイル嬢はいかがされた」

「アレクは強いだと散々泣かれた後、公爵家の家令の方達が引き取りに参られました」

「はぁ~。で、アレクはどれくらいの魔法が使えるんだ?」

「そんな事私は存じません。ですが姫がおっしゃるには……闇精霊を倒したと」

「はぁああああ!闇精霊ってあの闇の精霊の事か!」

「あなた」

「す、すまんつい興奮してしまった。しかし剣の血筋で魔法使いとは……」――チラッ

「確かに私の方の先祖に賢者が居た、と言う伝説じみた話はありますわね。眉唾物の伝承ですけど」

「それ、眉唾じゃないんじゃ……」

「それより問題は公爵家にこの事は確実に伝わるでしょう。友人である婦人にはなんとかそこで情報の拡散をとどめて頂く様にお願いはしましたが……」

「当主の公爵はそうもいかんだろうな」

「ええ」

「だがこれは国を揺るがす問題になる可能性がある、公爵様も馬鹿ではないのだ。子供達の未来の為にもここは自重していただかねばな」

「そうですね」


 そして大人達の思惑をよそに、10年の月日が流れる――――。



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