すみません、その悪役公爵令嬢……私の嫁です

御剣刃金

文字の大きさ
4 / 15
幼少期編

4.知らない事実

しおりを挟む
 我がサイフォン家は古くから続く騎士の家系であり、王家守護騎士として王家直々に使える家柄だ。
 だが近衛騎士と言うわけではなく、ここ何代かは王都を守護する守備兵の任務が主である。
 このまま行けば政治的な理由から我が家は平民として過ごす事になるかもしれない。
 戦争の無い今の平和な時代、守もなにも街の警備くらいしかやる事がないのだから……。
 
「アレク!帰ったぞ!」

「父上お帰りなさい!」

「おう!今日の鍛錬はどうだった?」

「爺にまた剣ごと放り投げられました」

「がははははっ!小さなお前ではそうだろうな!だがな、お前はサイフォンの血を引く者だ。必ず身体も大きくなり、いずれあんなポニーテール爺さんなんかひとひねり出来る!」

「は、はぁ」

「ぐははははっ!じゃ大きくなる為に飯を喰うぞ!それっ!」

 父は私を持ち上げる。
 持ち上げられた私の視線は高さ2メートル30といったところだろう。
 高い!
 身長2メートルを超える身長の持ち主である父、ガイナス・サイフォン騎士爵。
 普段は大きな剣を腰にしているが、彼の主たる武器は槍である。

 2メートルを超える大男が3メートルを超える槍を構えるのだ。
 普通の人ならちびって逃げ出す。

 そんな父が街を巡回しているのだから王都が平和でないはずもない。
 平和と言えば、最近姿を見ないハルの事が気になっていた。
 現代社会と違い、この世界は未だ未熟な所が多い。
 平民の一家族が急に消えたとしても、大事にはけっしてならない。
 この世界で情報を得るには王家発行の新聞か自分の足、もしくは……。

「そういえば父上」

「ん?」

「最近街で赤い髪の少年を見ませんでした?」

「あぁお前がたまに連れて来るあの赤毛の少年か」

「ええ」

「どうした?喧嘩でもしたか」

「いえ、そう言うわけでもないのですが」

 視線を逸らす私に何か思ったのか。

「ふむ。少し調べておこう」

「あ、ありがとうございます!」

――そう。もしくは、王都守備兵の情報網だ。

――――
――

 その日の晩、サイフォン家のリビングにて大男がソファーで手芸をする妻を横目にワインを口に運ぶ。

「アレクは寝たか?」

「ええ、先程」

「そうか」

「いかがいたしました?」

 手芸の手を止めるテレサ・サイフォン。ガイナス・サイフォンの妻であり、アレクの母である。

「いや、アレクの友達の事なんだが……」

「テルマイル嬢の話なら先日したじゃありません事?」

「あ、いや、そっちではなくだな。ハル嬢の事だ」

「……あなた。まさかまだ伝えていないのですか?」

「ま、そのなんだ。タイミングを逃したと言うかそのだな……」

「あなた!あなたが自分から言うと言うのでお任せしていたのに、あれからどれくらい月日が経ったとお思いです!」

「すまん!だがアレクも悪いんだぞ!あんな可愛い少女を男の子と間違えてるアイツが悪い!」

「はぁ~この親子は……まぁ教会が認定した少女です、いずれ教会から発表もございましょう。アレクが気付くならそれはそれ。気付かなければ平民の家族が一つ行方不明になったといずれ自分で心の処理をするでしょう」

「だがなぁ……教会の方でもハル様がアレクと会わせろと駄々をこねているご様子だと聞き及んでいてな……」

「そこまでおっしゃるならちゃんと申せばよろしくって?それより問題なのはテルマイル様の方です!」

 プンプンとはこう言う時に使う言葉なんだろうなと、ガイナスは妻から視線を外しワインを煽る。

「はぁ~、うちの息子はなんでややこしい御仁からこうも好意を寄せられるんだ」

「あら。モテるのは父親似じゃないですか」

「え?」

「あなたも学生時代におモテになられてたじゃないですか」

「俺がモテたのはお前だけだぞ?告白されたのもお前しかおらん」

「……そうですね」

「なんだ今の間は」

「なんでもございません」

 結局、聖女ハル嬢に関してはアレクの気付きに任せる事にしたガイナスは、明日の昼食は平民街の狸亭で東方の蕎麦でも食べるか。と再びワインを口に運んだ。
 





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

これ、ゼミでやったやつだ

くびのほきょう
恋愛
これは、もしかしたら将来悪役令嬢になっていたかもしれない10歳の女の子のお話。

悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。

三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。 何度も断罪を回避しようとしたのに! では、こんな国など出ていきます!

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

ナイスミドルな国王に生まれ変わったことを利用してヒロインを成敗する

ぴぴみ
恋愛
少し前まで普通のアラサーOLだった莉乃。ある時目を覚ますとなんだか身体が重いことに気がついて…。声は低いバリトン。鏡に写るはナイスミドルなおじ様。 皆畏れるような眼差しで私を陛下と呼ぶ。 ヒロインが悪役令嬢からの被害を訴える。元女として前世の記憶持ちとしてこの状況違和感しかないのですが…。 なんとか成敗してみたい。

悪役令嬢の取り巻き令嬢(モブ)だけど実は影で暗躍してたなんて意外でしょ?

無味無臭(不定期更新)
恋愛
無能な悪役令嬢に変わってシナリオ通り進めていたがある日悪役令嬢にハブられたルル。 「いいんですか?その態度」

良くある事でしょう。

r_1373
恋愛
テンプレートの様に良くある悪役令嬢に生まれ変っていた。 若い頃に死んだ記憶があれば早々に次の道を探したのか流行りのざまぁをしたのかもしれない。 けれど酸いも甘いも苦いも経験して産まれ変わっていた私に出来る事は・・。

婚約者を奪い返そうとしたらいきなり溺愛されました

宵闇 月
恋愛
異世界に転生したらスマホゲームの悪役令嬢でした。 しかも前世の推し且つ今世の婚約者は既にヒロインに攻略された後でした。 断罪まであと一年と少し。 だったら断罪回避より今から全力で奪い返してみせますわ。 と意気込んだはいいけど あれ? 婚約者様の様子がおかしいのだけど… ※ 4/26 内容とタイトルが合ってないない気がするのでタイトル変更しました。

悪役令嬢だったので、身の振り方を考えたい。

しぎ
恋愛
カーティア・メラーニはある日、自分が悪役令嬢であることに気づいた。 断罪イベントまではあと数ヶ月、ヒロインへのざまぁ返しを計画…せずに、カーティアは大好きな読書を楽しみながら、修道院のパンフレットを取り寄せるのだった。悪役令嬢としての日々をカーティアがのんびり過ごしていると、不仲だったはずの婚約者との距離がだんだんおかしくなってきて…。

処理中です...