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第三節 「秘密の共有」
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週末がやってきた。朝から晴れ渡った青空が広がり、僕はいつもより少しだけ早く目を覚ました。今日は紬と約束していた美術館デートの日だ。制服ではなく、私服で出かけるのは久しぶりだ。クローゼットを開けて、どの服にしようかと悩む。白いブラウスに淡いピンクのカーディガン、ふんわりとしたスカートを選んだ。鏡の前で何度もバランスを確かめ、最後に小さなイヤリングをつける。男の子として生まれた僕だけど、こうして可愛い服を選ぶ時間が何よりも好きだった。
リビングに降りると、母が微笑んで「今日は紬ちゃんとお出かけ?」と声をかけてくれる。「うん、美術館に行くんだ」と答えると、「楽しんできてね」と送り出してくれた。父は新聞から顔を上げて「気をつけてな」と短く言う。両親のこうした自然な態度が、僕の背中をそっと押してくれる。
待ち合わせ場所の駅前に着くと、すでに紬が待っていた。紬はデニムのショートパンツに、白いシャツをラフに羽織っている。いつも制服姿ばかり見ているせいか、新鮮な印象だ。「柊、今日も可愛いね」と紬が照れくさそうに微笑む。「紬も似合ってるよ」と返すと、紬は少しだけ頬を赤らめた。
電車に揺られ、美術館へ向かう。車内では、最近描いた絵の話や、好きな画家の話で盛り上がった。紬はピカソやモネが好きらしい。僕は静物画や、柔らかい色使いの絵が好きだと話すと、「柊らしいね」と笑われた。
美術館に着くと、館内は落ち着いた雰囲気で、展示室には静かな音楽が流れていた。僕たちは並んで絵を眺めながら、時折小さな声で感想を言い合う。紬は一枚の抽象画の前で立ち止まり、「こういう絵って、自由でいいよね」と言った。「うん、見る人によって感じ方が違うし、正解がないのがいい」と僕も答える。
昼食は美術館のカフェでとることにした。窓際の席に座り、ケーキと紅茶を注文する。紬はフォークでケーキをつつきながら、ふいに真剣な表情になった。
「ねえ、柊。……私、ずっと言いたかったことがあるんだ」
「なに?」
「柊が、女の子の服を着てること。最初はびっくりしたし、周りの目も気になった。でも、今はすごく素敵だと思う。柊が自分らしくいるのを見て、私も自分の好きなことをもっと大事にしたいって思ったんだ」
紬の言葉に、胸が熱くなる。「ありがとう、紬。僕も、紬がそばにいてくれるから、自分でいられるんだと思う」と素直に気持ちを伝えた。
紬は少しだけ目を伏せてから、僕の手をそっと握った。手のひらがじんわりと温かい。「これからも、ずっと一緒にいられたらいいな」と紬が小さな声で言う。僕は驚きつつも、嬉しくてたまらなかった。「うん、僕もそう思う」と、しっかりと返事をした。
カフェの窓から差し込む光が、二人の手を優しく照らしていた。僕たちは、誰にも言えなかった小さな秘密を、そっと共有したのだった。
リビングに降りると、母が微笑んで「今日は紬ちゃんとお出かけ?」と声をかけてくれる。「うん、美術館に行くんだ」と答えると、「楽しんできてね」と送り出してくれた。父は新聞から顔を上げて「気をつけてな」と短く言う。両親のこうした自然な態度が、僕の背中をそっと押してくれる。
待ち合わせ場所の駅前に着くと、すでに紬が待っていた。紬はデニムのショートパンツに、白いシャツをラフに羽織っている。いつも制服姿ばかり見ているせいか、新鮮な印象だ。「柊、今日も可愛いね」と紬が照れくさそうに微笑む。「紬も似合ってるよ」と返すと、紬は少しだけ頬を赤らめた。
電車に揺られ、美術館へ向かう。車内では、最近描いた絵の話や、好きな画家の話で盛り上がった。紬はピカソやモネが好きらしい。僕は静物画や、柔らかい色使いの絵が好きだと話すと、「柊らしいね」と笑われた。
美術館に着くと、館内は落ち着いた雰囲気で、展示室には静かな音楽が流れていた。僕たちは並んで絵を眺めながら、時折小さな声で感想を言い合う。紬は一枚の抽象画の前で立ち止まり、「こういう絵って、自由でいいよね」と言った。「うん、見る人によって感じ方が違うし、正解がないのがいい」と僕も答える。
昼食は美術館のカフェでとることにした。窓際の席に座り、ケーキと紅茶を注文する。紬はフォークでケーキをつつきながら、ふいに真剣な表情になった。
「ねえ、柊。……私、ずっと言いたかったことがあるんだ」
「なに?」
「柊が、女の子の服を着てること。最初はびっくりしたし、周りの目も気になった。でも、今はすごく素敵だと思う。柊が自分らしくいるのを見て、私も自分の好きなことをもっと大事にしたいって思ったんだ」
紬の言葉に、胸が熱くなる。「ありがとう、紬。僕も、紬がそばにいてくれるから、自分でいられるんだと思う」と素直に気持ちを伝えた。
紬は少しだけ目を伏せてから、僕の手をそっと握った。手のひらがじんわりと温かい。「これからも、ずっと一緒にいられたらいいな」と紬が小さな声で言う。僕は驚きつつも、嬉しくてたまらなかった。「うん、僕もそう思う」と、しっかりと返事をした。
カフェの窓から差し込む光が、二人の手を優しく照らしていた。僕たちは、誰にも言えなかった小さな秘密を、そっと共有したのだった。
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