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第四節 「揺れる気持ち」
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美術館デートの翌週、学校ではいつもと変わらぬ日常が流れていた。けれど、僕の心はどこかそわそわしていた。紬と手を握り合ったあの瞬間が、何度も頭の中で再生される。あの温もり、あの言葉。思い出すたびに胸が熱くなり、同時に不安も押し寄せてくる。
「柊、どうしたの? 今日、なんかぼーっとしてるよ」と、紬が隣の席から声をかけてきた。
「えっ、そ、そんなことないよ」と慌てて否定するけれど、紬はじっと僕の顔を見つめてくる。
「もしかして、私のこと考えてた?」と、いたずらっぽく笑う。
「ち、違うよ!」と否定しつつも、顔が熱くなるのを感じた。
昼休み、美術室で二人きりになると、紬は真剣な顔で僕を見つめた。「ねえ、柊。私たち、これからどうなるんだろうね」
「どうって……」
「私、柊のことが好きだよ。友達としてじゃなくて、もっと特別な意味で」
紬の言葉は、まっすぐで、少しだけ怖いほどだった。
僕は自分の気持ちを整理しようとした。紬のことは大切だ。そばにいると安心するし、嬉しい。でも、「好き」という気持ちがどんなものなのか、まだはっきりとは分からない。僕は男の子で、でも女の子の服を着ている。紬はそれを受け入れてくれているけれど、周りの目や将来のことを考えると、不安が消えない。
「僕も、紬のことが大好きだよ。でも、それがどんな『好き』なのか、まだよく分からないんだ」と、正直に答えた。
紬は少しだけ寂しそうに微笑む。「うん、分かった。でも、焦らなくていいよ。柊が自分の気持ちに気づくまで、私、待ってるから」
その言葉に、僕は救われる思いがした。紬はいつも、僕の全部を受け止めてくれる。だからこそ、僕も自分の気持ちに正直でいたいと思った。
放課後、美術部の活動が始まると、部長が新しい課題を出した。「次の作品展に向けて、自分の『本当の姿』をテーマに絵を描いてみてほしい」と言う。
部員たちはそれぞれに悩みながら、スケッチブックを開く。僕も机に向かい、鉛筆を手に取った。『本当の姿』――それは、僕にとってとても難しいテーマだった。
スカートをはき、リボンタイを結ぶ自分。鏡の前で微笑む自分。だけど、時には周囲の目が怖くて、心の奥に不安を抱える自分。どれもが「本当の僕」だ。
ふと、隣で紬が描き始めた絵を覗き込む。紬は大きなキャンバスに、鮮やかな色で自分自身を描いている。「紬は迷いがないね」と声をかけると、「そんなことないよ。私だって、柊と同じで、いろんな気持ちがぐるぐるしてる」と返された。
「でも、柊がそばにいると、私は自分を好きでいられる気がするんだ」と紬が続ける。その言葉に、僕の心はまた少し温かくなった。
帰り道、夕焼けに染まる空を見上げながら、僕はそっと紬の手を握った。紬は驚いたように僕を見たが、すぐに微笑んで、ぎゅっと握り返してくれた。
「ありがとう、柊」
「僕も、少しずつ自分の気持ちを知っていきたい。……紬と一緒に」
二人の影が、長く伸びていく。揺れる気持ちを抱えながらも、僕たちは少しずつ前に進んでいた。
「柊、どうしたの? 今日、なんかぼーっとしてるよ」と、紬が隣の席から声をかけてきた。
「えっ、そ、そんなことないよ」と慌てて否定するけれど、紬はじっと僕の顔を見つめてくる。
「もしかして、私のこと考えてた?」と、いたずらっぽく笑う。
「ち、違うよ!」と否定しつつも、顔が熱くなるのを感じた。
昼休み、美術室で二人きりになると、紬は真剣な顔で僕を見つめた。「ねえ、柊。私たち、これからどうなるんだろうね」
「どうって……」
「私、柊のことが好きだよ。友達としてじゃなくて、もっと特別な意味で」
紬の言葉は、まっすぐで、少しだけ怖いほどだった。
僕は自分の気持ちを整理しようとした。紬のことは大切だ。そばにいると安心するし、嬉しい。でも、「好き」という気持ちがどんなものなのか、まだはっきりとは分からない。僕は男の子で、でも女の子の服を着ている。紬はそれを受け入れてくれているけれど、周りの目や将来のことを考えると、不安が消えない。
「僕も、紬のことが大好きだよ。でも、それがどんな『好き』なのか、まだよく分からないんだ」と、正直に答えた。
紬は少しだけ寂しそうに微笑む。「うん、分かった。でも、焦らなくていいよ。柊が自分の気持ちに気づくまで、私、待ってるから」
その言葉に、僕は救われる思いがした。紬はいつも、僕の全部を受け止めてくれる。だからこそ、僕も自分の気持ちに正直でいたいと思った。
放課後、美術部の活動が始まると、部長が新しい課題を出した。「次の作品展に向けて、自分の『本当の姿』をテーマに絵を描いてみてほしい」と言う。
部員たちはそれぞれに悩みながら、スケッチブックを開く。僕も机に向かい、鉛筆を手に取った。『本当の姿』――それは、僕にとってとても難しいテーマだった。
スカートをはき、リボンタイを結ぶ自分。鏡の前で微笑む自分。だけど、時には周囲の目が怖くて、心の奥に不安を抱える自分。どれもが「本当の僕」だ。
ふと、隣で紬が描き始めた絵を覗き込む。紬は大きなキャンバスに、鮮やかな色で自分自身を描いている。「紬は迷いがないね」と声をかけると、「そんなことないよ。私だって、柊と同じで、いろんな気持ちがぐるぐるしてる」と返された。
「でも、柊がそばにいると、私は自分を好きでいられる気がするんだ」と紬が続ける。その言葉に、僕の心はまた少し温かくなった。
帰り道、夕焼けに染まる空を見上げながら、僕はそっと紬の手を握った。紬は驚いたように僕を見たが、すぐに微笑んで、ぎゅっと握り返してくれた。
「ありがとう、柊」
「僕も、少しずつ自分の気持ちを知っていきたい。……紬と一緒に」
二人の影が、長く伸びていく。揺れる気持ちを抱えながらも、僕たちは少しずつ前に進んでいた。
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