君と描く未来

Novelhajimemashita

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第九節 「未来への選択」

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春の終わりを告げる風が、校庭の桜の葉を揺らしている。僕と紬は三年生になり、進路や将来の話題が少しずつ増えてきた。美術部の部室にも、受験や卒業の話がちらほらと聞こえる。そんな中、僕たちの関係も、静かに、けれど確かに変化していた。

ある日の放課後、美術室で二人きりになったとき、紬がぽつりと切り出した。「柊、進路はどうするの?」
僕は少しだけ迷ってから答える。「美術の道に進みたいと思ってる。まだ具体的には決めてないけど、絵を描くことを続けたい」
紬は嬉しそうに微笑む。「私もだよ。美術の先生になりたいって、ずっと思ってるの」
「一緒に頑張ろうね」と僕が言うと、紬は優しく頷いた。

その夜、家で進路希望調査票を前に、僕はしばらくペンを持ったまま動けなかった。美術の道を選ぶこと、そして自分らしく生きること――どちらも、僕にとっては大きな挑戦だ。父と母は「柊がやりたいことをやりなさい」と言ってくれるけれど、社会の中で自分がどう受け入れられるのか、不安は尽きない。

翌日、紬と一緒に帰る道すがら、僕は勇気を出して口を開いた。「紬、僕ね、これからもずっと自分らしく生きていきたい。男の子だけど、好きな服を着て、好きなことをして、好きな人と一緒にいたいんだ」
紬は僕の手をぎゅっと握り、「私も、柊と一緒に未来を歩きたい。どんな困難があっても、絶対に離れないよ」と力強く言ってくれた。

それからの日々、僕たちはお互いの夢や不安、将来についてたくさん話し合った。美術部の後輩たちに自分たちの経験を語ったり、時には一緒に進学説明会に参加したり。周囲の視線や偏見に悩むこともあったけれど、紬と一緒なら乗り越えられると信じられた。

ある日、部活帰りに紬がふと立ち止まり、僕の顔を見つめて言った。「柊、私ね、将来――もし柊がよければ、ずっと一緒にいたい。結婚とか、そういう未来を一緒に考えてもいい?」
僕は驚きと嬉しさで胸がいっぱいになり、自然と笑みがこぼれた。「もちろんだよ、紬。僕も、紬と一緒に未来を作りたい」

その瞬間、夕焼けの光が二人を包み込む。すれ違いや不安を乗り越えて、僕たちはようやく心から「一緒に未来を歩む」ことを選び取ったのだ。

家に帰ると、両親に自分の進路や紬とのことを話した。母は涙ぐみながら「柊が幸せなら、それが一番」と言ってくれ、父も「自分の道を信じろ」と背中を押してくれた。家族の温かさに、僕はまた一歩前に進む勇気をもらった。

進路希望調査票の「志望理由」の欄に、僕はこう書いた。「自分らしく生きることを、絵で伝えたい。誰もが自分を好きになれる世界を作りたい」と。

新しい春が、もうすぐそこまで来ている。僕と紬は、手を取り合いながら、未来への扉を静かに開こうとしていた。
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