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hachijam

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7.

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ジェットコースターに乗って、私はキャーキャーとはしゃいでしまった。彼は黙っていたので、少し恥ずかしかったけど、彼の顔を見たら、少し青ざめていて、もしかして、苦手だったから静かだったのかなとも思う。でも、彼は平気を装っていた。大丈夫と心配するのも彼に悪い気がして、面白かったねと言ったら、引きつった顔で頷いていた。

次に彼はお化け屋敷に行こうと言った。この遊園地の目玉のひとつらしい。そう聞くと、私も楽しみになる。でも、想像以上に怖かった。まず、待っている時に、お化け屋敷から出てくる人の顔を見ていたら、何となく嫌な予感がしてきて、そこから、雰囲気にのみこまれてしまった。暗いお化け屋敷の中に入った時には、彼の背中にしがみついている感じだった。

彼は全く平気そうで、今度はとても頼もしく見える。私の事をちゃんと気にしてくれるのも嬉しかった。背後から出てきたお化けにびっくりして、腰を抜かしそうになったら、彼が手を差し出して起こしてくれた。ちょっと遠慮がちに手を握る。そのまま、お化け屋敷を出るまで離さなかった。お化け屋敷でドキドキしているのか、手を握ってドキドキしているのか、途中から分からなくなった。

お化け屋敷を出て、彼が怖かったねと笑ったように言う。こういうのは平気なんだなと思う。そこで、手をずっと握りっぱなしだった事に気が付いて慌てて離す。ずっと握っていたかったなと思ったけど、それは言えなかった。

その後もいろいろと乗り物に乗る。ジェットコースター、お化け屋敷に比べるとインパクトは弱かったけど、でも、彼と一緒だと何でも楽しいなと思った。最後の最後に観覧車に乗る事になった。

実は観覧車が一番緊張する。二人きりになるからだ。しかも、遊園地に行くことを友達に報告したら、観覧車で良い雰囲気になるよなんて煽られてしまった。そんな事を言わると余計に意識してしまう。友達曰く、一番上に着いた時にキスすると、永遠に結ばれるのだそうだ。

ついさっき、手をつないでドキドキしていた自分がそんな事出来るんだろうか。彼はそういう話を知っているんだろうか。もし、キスされそうになったら、私はどうするんだろう。そんな事を頭で考えると、顔が真っ赤になってぼーっとしてしまいそうだった。期待している自分と、そんな事はあり得ないと思っている自分がいる。列に並んで順番を待っていると、少しずつ、ドキドキが強くなってきた。だんだん、彼の顔をまともに見れなくなる。
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