夢ノコリ

hachijam

文字の大きさ
104 / 275
4番バッターの夢

7.

しおりを挟む
結局、午前中の講義に充は出席しなかった。僕と三ヶ嶋君は充が来たら詳しい事情聴取を行う事で合意したのだが、肝心の本人が来なくては何も出来なかった。少し前まではどうとっちめてやろうかなんて、盛り上がっていたのだが、それもちょっと落ち着いていた。

そうなると、今度は何となく男二人で学食で食事をしているのが寂しいような気もしてきた。別に普段とそんなに変わりある事ではないのに、突然にそんな風に感じるのは何なんだろうと思ってしまった。

一応、断っておくけど、僕は沢島さんに気がある訳ではない。それはとりあえずは間違いない事で、そういう点で、充と沢島さんが話していた事に嫉妬していたとか、そういう気持ちは無かった。ただ、分かりやすい感情として、何となく羨ましいなと言う思いを抱いていたのかもしれないと思ったりする。そういうのを冷静に分析している自分と言うのもちょっと嫌だったりする。

ちょっと冷静になってしまった僕と三ヶ嶋君は特に会話も無く淡々と食事をする。そういうのも別に珍しい事ではないのだけど、何となく微妙な感じになってしまった。

午後の最初の時間は講義が入っていなかったので、課題を進めるつもりだったけど、そんな雰囲気のまま、何となく時間は過ぎて僕はなかなか課題に集中する事が出来なかった。三ヶ嶋君は熱心にやっているようだったけど、時折、充が早く来ないかと気にしているようだった。

結局、空いた時間に少しでも課題を進めるという僕の考えは失敗に終わってしまう。別に誰かのせいという事ではないはずなのに、僕は充のせいという事で自分自身に納得させる事にした。もう、今日は大学を休むつもりなのかと思うと、また更にモヤモヤした気分になっていた。

特別に何かをしたわけでもないのに、勝手に疲れてどんよりしていた僕だったが、それでも午後の残りの講義には出ないといけないとわずかばかりの気力を振り絞る事にした。講義が終わった、その残り少ない気力で少しでも課題を進めると心に決めた。

来ない充の事は気にしてもしょうがない。そんな風に割り切ろうとした。でも、そんな風に考え始めると、当然のようにそれが邪魔される。満面の笑みをたたえて、充が登場したのだった。

別に何をされた訳でもないのに、その顔を見ただけで、ちょっとイライラしてしまった。石でもぶつけてやろうかと少しだけ本気で思ったけど、近くに石が転がっていなかったので、実現するには至らなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

不倫の味

麻実
恋愛
夫に裏切られた妻。彼女は家族を大事にしていて見失っていたものに気付く・・・。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

処理中です...