夢ノコリ

hachijam

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旅行の前の日の夢

5.

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だからと言って、旅行を中止するという選択肢は僕の中では無かった。何もしないでぼーっとしているだけだから、そういう事を考えてしまうと思った僕は、改めて荷物を鞄から出してみる。さっき、入れたばかりだから何が入っているのかも分かっているのに、改めて忘れ物が無いのかを確認する事にした。そうすれば、また、気分が盛り上がるのではないかなと考えた。

確かに水着を見て、海で泳ぐ事とか考えると、自然と気分は盛り上がってくる。何をして遊ぶか、バナナボート、水上スキー、スキューバダイビング、海のレジャーが次々と浮かんでくる。それを考えるとやっぱり旅行は楽しみだなとホッとした気分になった。

その気分のままでいられれば良いのだけど、荷物をひとつずつ鞄に入れるたびに少しずつまた寂しい気分になっていた。全ての荷物を入れると大きなため息を吐いてしまう。何でこんな風にモヤモヤした気分になるんだろうと思った。

ふと何かひとつ入れ忘れた物があったように思えた。それが何なのか分からなかったのだけど、それは絶対に必要な物だった気がする。慌てて、もう一度、鞄の中を覗いてみたけど、それは入っていなかった。何か分からない物なのに、中に入っていないという事だけは分かるという不思議な状態だったが、それはきっと何となく分かっている物で、見てそこにあると思えないという事はやっぱりないんだろうと思う。

慌てて、周囲を見渡してみると、それらしきものが落ちているのが見えた。いつそれを落したんだろう。最初から落ちていたんだろうか。そんな事を考えるけど、とりあえず、それを鞄の中に入れる事の方が重要だと思った。

何か分からない、それを拾って鞄の中に入れる。これで大丈夫、鞄を閉じて、そう思う。でも、また不安になり、それを本当に鞄の中に入れたのか気になってしまった。本当についさっき入れたはずの物だから、そんな心配はする必要はないのだけど、やっぱり、気になって鞄を開けてしまった。

そこに入れてあるはずの物は、そこには無かった。不安が当たった事の方が当然のように感じた僕はまた周囲を見渡す。そして、それがそこに落ちている事に気が付く。また拾って鞄の中に入れる。でもすぐにまた不安に感じ鞄の中を見てみると、中には無くて、周囲を見渡して、それを発見する。慌てて拾って…。

それを何度も繰り返していると急に馬鹿らしくなってしまった。もう準備は止める。旅行も中止にすると腹を立てる。でも、時計を見ると、何時に出かければ良いんだっ気なんて事を思っていたりもした。
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