夢ノコリ

hachijam

文字の大きさ
120 / 275
カギを失くした夢

2.

しおりを挟む
「失くしたカギはこれ?」

そう言って現れたのは髪の長い女の子だった。手に良くある家のカギみたいなカギを持っている。

見ただけでは瞬時に判断する事が出来ない。でも、女の子が言っているから、そうなのだろうと僕は思う。

「たぶん、そうだと思う」

あまり自信があった訳ではないけど、そう答えた。

「本当?」

「…」

そう言われると自信が無い。

「見ただけで必要なカギかどうか分からないんだ」

少し意地悪そうに言い、クスッと笑う。表情はいつも通り見えないけど、何だか意地悪だなと思う。

「開けてみれば分かるだろ」

負け惜しみの様に言うが、それは間違っていないと思う。

「確かにそうかもしれないけど…」

ちょっと困ったように言う。

「良いから貸してよ」

少し乱暴にカギを奪って、カギを差し込もうとする。でも、大きさが合わない。カギが大きいようだ。

「あれっ」

一回やれば分かるはずだけど、ちょっと意地になって何度もカギをはめようとした。でも、カギの大きさは変わる事は無かった。

「もしかして、こっちかな?」

そう言うと、別のカギを取り出して見せた。見た目はさっきと全く同じようなカギだ。大きさも変わらないような気もしたけど、小さいような気もする。

女の子のその態度にますます、苛立った僕はもう一度、乱暴にカギを奪った。でも、また大きさが合わない。今度はカギが小さいようで、カギ穴には一応入るけど、スカスカな感じだった。

「じゃあ、これ?それともこっち?」

今度は二つ同時に鍵を取り出した。こうなると意地だ。僕は黙ってカギを奪い。順番に試してみる。今度は両方とも大きさは合うようだが、ひとつは空回りして開く気配が無く、もうひとつはがっちりとはまって動かなかった。

これは間違いなく意地悪をされていると感じた僕は、じっと女の子をにらんだ。女の子は、怖いという風に肩をすくめた。

「カギを探して欲しいって頼んだのに、自分のカギを失くしてしまうのはダメなんじゃない」

そんな風に女の子は言う。さっきまでのちょっとふざけた感じとは違って真剣な言い方になっている。その変化にちょっと戸惑い、ちょっと冷静になった僕は、さっきの自分の態度の悪さもあって、何だか急に恥ずかしくなってしまった。

「いや、でもさ…」

ちょっと言い訳して誤魔化そうとするが言葉が続かなかった。

あたふたしている僕を見て、女の子はクスッと笑い、

「本当に失くしたの?カギは閉まっているの?そもそも、ドアを開ける必要があるの?」
と、続けて聞いてきた。

「まあ、何でも良いんだけど」

女の子はそれだけ言うと、サッと姿を消した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

不倫の味

麻実
恋愛
夫に裏切られた妻。彼女は家族を大事にしていて見失っていたものに気付く・・・。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

処理中です...