夢ノコリ

hachijam

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カギを失くした夢

9.

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赤岡さんとの会話はそこで終わった。電車が降りる駅に着いたからだ。僕は充とは違い話が盛り上がったからと言って、大学をサボるという選択肢は選ばなかったし、赤岡さんも同様だった。それが当たり前だと思うけど、駅で別れて、それぞれの大学に向かった。

結局、全て解決したような、そうでも無いようなどっちだか分からない感じだったけど、ここ何日か抱えていた、僕の中の勝手なモヤモヤと言うのはある程度解消された。単純にこの話題を誰かと話をしたかっただけなのかもしれない。その相手に最もふさわしかったのが赤岡さんだったのかなと思った。その説明は何だか納得がいく説明のような気もした。

充は当事者だから話をしても、モヤモヤが無くなる事は無いし、三ヶ嶋君とだとただの愚痴大会になってしまう。向こうの事情を知っているという事を考えれば、この話をする丁度良い相手は赤岡さんしかいなかったんだなと思った。少し無理やりに理屈をつけている気もしたけど、それは間違っていない答えのような気もした。

いずれにしろ、その日、充の顔を見ても、普段以上にイライラとさせられる事は無かった。それは慣れもあったと思うけど、やっぱり、赤岡さんと話した事が影響したのかなと思った。

帰りの電車の中、ぼーっとして流れる風景を見ていたら、朝、赤岡さんが何かを聞きたそうにしていたのをちょっと思い出した。僕は何でそれを聞こえないふりをしたのだろうか。聞かれてまずい事があるのかなと思ったけど、はっきりとした答えは分からなかった。積極的に話すような事は無いと考えたから、そういう態度を取ったのだろうか、いちいち言い訳をしないといけない事なのか疑問に思ってしまった。

「羽田君の恋愛話はどうなの?」

とか、あの質問が続いて、僕自身の事を聞かれていたらなんて答えただろうか。

「赤岡さんはどうなの?」

とか、そのまま質問を返していそうな気もする。

単純な興味だけで言えば、その質問をしてみたいという気持ちはあった。でも、何かあまり答えは聞きたくない気がする。僕自身もはっきりした答えが出来ずに曖昧になりそうだった。

何を言っても嘘になりそうな気がしたのかもしれない。それを心の中でどこか嫌がっていたのかなと思ったりした。

夏だとどこに遊びに行くのが楽しいんだろうと、考えを無理矢理変えてみた。暗くなる空を見ていたら、花火とか行くのも悪くないのかもしれないとちょっと思ったりした。有名な花火大会の日付はいつなんだろうとふと思った。
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