夢ノコリ

hachijam

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マイクのテストをする夢

2.

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「…はい。では次に叫んでみたい事をどうぞ」

また、次の指示がヘッドフォンから聞こえてきた。

「叫んでみたい事?」

相手に聞こえていない事は分かっていても、自然と呟いてしまう。何を言ったら良いんだろうと思う。特別に叫びたい事も無いような気もするけど、何かを言わないと先に進まない気がする。とりあえず思いついた事を叫んでみる。

「バカヤロー」

叫ぶ言葉と言えば、これが定番だろう。何か心地よい感じで声が響いた気がする。慣れてきたのだろうか。ちょっと考えたら、テレビとかでバカヤローと叫んでいる人は見た事あるけど、実際に叫んでいるのを聞いた事は無い気がした。僕はもちろんなかった。それでも不自然な感じではなく、自然に叫べた気がして、何だか満足した気分になる。

「…はい。もっと感情のこもった言葉を叫んでください」

そんな風にダメだしされた。なんだろう、感情のこもった言葉ってと考えるけど、浮かばない。

「…はい。もたもたしてないで早くしてください」

少しヘッドフォンから聞こえる声がイライラしているのが伝わってくる。どうしたら良いんだろうと思ったら、急に隣から

「好きだー」

という声が聞こえてきた。えっと驚いて右側を向くと、マイクを持って、充が叫んでいた。自信満々の表情をしている。見ているこっちが恥ずかしくなりそうだ。

「私もー」

という声が今度は反対側から聞こえてくる。また、驚いてそっちを見ると、沢島さんがマイクを持って叫んでいた。そして、戸惑う僕に向かって、さあと言う感じで手を出してくる。どうしていいのか分からず、充の方を向くと、同じように手を出していた。

何だ、この空気は。僕も同じ言葉を叫ばないといけないのか。恋愛ドラマの海岸のシーンでもあるまいし、何で体育館のマイクのテストでそんな事を叫ばないといけないんだと思う。でも、二人の催促は止まらない。加えてヘッドフォンからは、

「…はい。いい加減にしてください。早くしてください」

と言うイライラがピークに達したような声が伝わってくる。変に期待されているから余計に声を出すのが難しくなってしまう。勢いで真似して誤魔化せるようなタイミングでは無くなってしまった。どうにか誤魔化したいと考えるけど、丁度良い言葉が浮かんでこない。

「えーっと」

ようやく出たのはそれだけで、呆れるような充と沢島さんの視線を感じる。

「ごほん」

気まずさをごまかすためにわざと咳払いしたら、ハウリングして高い音がぴーっとなった。
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