夢ノコリ

hachijam

文字の大きさ
150 / 275
福引する夢

1.

しおりを挟む
目の前に福引のガラガラが置いてあった。その向こうに長い髪の毛の女の子が立っていて手にはベルを持っていた。

「抽選券一枚で、一回挑戦できますよ」

女の子は楽しそうに言う。僕は抽選券が無いかポケットを探してみた。

「あった」

すぐに一枚見つけて、思わず叫んでしまった。大きく抽選券と書かれていて、とても分かりやすい。

「じゃあ、これで」

抽選券を女の子に渡す。

「はい。どうぞ」

どのくらいのスピードで回したらいいのか少し迷って、控えめに回したら、すぐに赤色の球が出てきた。

「おめでとうございます。三等です」

控えめにベルを鳴らす。とりあえず、何か当たったらしい。女の子はしゃがむと、足元にあった段ボールから紙を一枚取り出して僕に渡す。抽選券より一回り小さくて、抽選補助券と書かれていた。三枚で一回抽選できますと書かれていた。

これだと福引は出来ない。僕はもう一度、ポケットを探してみた。するとくしゃくしゃに丸められていた抽選券が一枚出てきた。これでまた挑戦できる。妙に嬉しくなった。

今度はさっきとは違い気合を入れて挑戦してみようと思う。その前に、気になった事を聞く。

「あの、この福引、何が当たるんですか?」

「うーん」

女の子は少し考えてから言う。

「とってもいい事ですよ」

「いい事?」

「はい。当たってからのお楽しみです」

女の子はニコニコと笑う。

そう言われると妙に張り切ってしまう。大きく気合を入れて素早く勢いよく回してみる。どっかに飛んでいってしまうのではと思えるほど勢いがついて、ガラガラが回る。勢いが付き過ぎたのか、なかなか球が飛び出してこなかった。

グルグルと十秒、もしかしたら、それよりもずっと長かったかもしれないけど、回り続ける。手で止めないと止まらないかもと思い始めたら徐々にスピードが落ちて来て、最後はゆっくりと止まった。そして、それと同時に球が飛び出した。

今度は白の球だった。

「わー。凄い、二等です。おめでとうございます」

女の子はそう言うと、足元の段ボールから今度は二枚の紙を取り出して僕に渡す。そこには抽選補助券と書かれていた。

「…あの、これ…」

「はい、二等の商品です」

女の子はあくまでニコニコしている。手元に三枚の抽選補助券があるという事はもう一回、福引に挑戦できる。でも、と思う。

「もしかして、一等の商品が抽選補助券三枚とかいうオチじゃないよね」

僕は疑っていた。女の子は、ちょっとだけ図星と言う顔をしたけど、

「さあ、それは当たってからのお楽しみです」

と言った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

不倫の味

麻実
恋愛
夫に裏切られた妻。彼女は家族を大事にしていて見失っていたものに気付く・・・。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜

黒城白爵
ファンタジー
 異次元から現れたモンスターが地球に侵攻してくるようになって早数十年。  魔力に目覚めた人類である覚醒者とモンスターの戦いによって、人類の生息圏は年々減少していた。  そんな中、瀕死の重体を負い、今にもモンスターに殺されようとしていた外神クロヤは、これまでの人生を悔いていた。  自らが持つ異能の真価を知るのが遅かったこと、異能を積極的に使おうとしなかったこと……そして、一部の高位覚醒者達の横暴を野放しにしてしまったことを。  後悔を胸に秘めたまま、モンスターの攻撃によってクロヤは死んだ。  そのはずだったが、目を覚ますとクロヤは自分が覚醒者となった日に戻ってきていた。  自らの異能が構築した新たな力〈システム〉と共に……。

処理中です...