夢ノコリ

hachijam

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重い荷物を背負っている夢

1.

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照り付ける太陽の下、僕は大量の汗をかきながら歩いていた。足元は砂漠で、とても歩きづらい。その上、何だか分からないけど、背中に重い荷物を背負っていた。荷物を降ろしたいと思うけど、そのたびに、どっかから、

「大丈夫、大丈夫」

と社長の声が聞こえてくる。いや、大丈夫じゃないでしょ、と思いながら、荷物を降ろせないまま、一歩ずつ、進む。更にだんだんと苦しくなっている。足が砂に沈んで歩きにくい。しかも、前に進めば進むほど、荷物が重くなっている気がする。更に足は深く沈み歩きにくくなる。もうやだ、荷物捨てようと思ったら、目の前にオアシスが見えた。

「おーい。もう少しだ、頑張れー」

という声が聞こえた気がした。朦朧とする意識の中、オアシスの方をじっと見ると、誰かが手を振っている。とりあえず、あのオアシスまでは頑張ろうと自分に言い聞かせる。

でも、そこからの一歩が大変だった。

オアシスが見えた事で、気持ちが緩んだからなのか、一気に荷物が重くなった気がする。いや、これは気のせいではないだろう、本当に重くなっているんだと実感した。どんどん、体が砂に沈んでいく。何か、もうどうでもいいやと思ったら、

「ははは」

と、背中から笑い声が聞こえてきた。馬鹿にしているようなその笑い声に腹が立つ。声を聞いただけで、その人の顔が浮かんできた。急に悔しくなって、その荷物を最後まで運ぼうと思う。そう思うと、足取りがしっかりとしてきた。一歩一歩、足を進めると今度は足が沈まなくなる。これだったら、進めると思うと、一気にオアシスが近づいてきた。

ようやく、たどり着いてホッとする。これで荷物を降ろせる。そう思ったら、

「はい、休憩していないで、次」

と、背中から声が聞こえてくる。途端にオアシスからまた砂漠に戻される。どこかで、あーそうか、やっぱりなと言う気持ちにもなってくる。荷物は重いまま、体全体がゆっくりと砂に沈んでいくようだった。



目が覚めた時、汗をびっしりとかいていた。夏真っ盛りだから、当たり前なのだけど、この時間からすでに暑い。とりあえず、汗だくのまま

重い荷物を背負っている夢
砂漠を歩く
オアシスにたどり着くも、また砂漠

と書いた。それを見て、ため息をついてしまう。何か、とても、分かりやすく現状を示している気がした。時計を見てみたら、そんなにのんびりして良い時間でも無かった。少し、急いだ方が良い、そう思う事で、あれこれと考えそうになるのをどうにか誤魔化した。
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