夢ノコリ

hachijam

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重い荷物を背負っている夢

8.

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「どう調子は?」

台車の荷物を運んでいる僕に社長が声を掛けた。僕の事では無く、三戸さんの事を聞いているんだと思う。普段だったら、そんな当たり障りのない質問に、当たり障りのない答えをするんだけど、その時はちょっと返答に困ってしまった。

「…」

だから、荷物を一生懸命、運んでいて気が付きませんでした、という感じを装った。いつもに増して今日は聞こえないふりをしている回数が多い気がした。

「やっぱり、大変か。そうだよね」

僕の沈黙をそう解釈したようだ。

「え?あっ、すいません、聞いてませんでした」

その解釈は間違いでは無かったけど、今日の三戸さんを見ると、間違いなのかなとも思ってしまった。だから、そんな風に言って、誤魔化した。

「…、ううん。何でも無い。もう少しだから、頑張って」

「はい」

とすぐに返事をしたけど、その質問の意味が、今、運んでいる荷物に対してなのか、それとも三戸さんとの仕事の事を言っているのか、どっちにも取れるなと思い、その返事で良かったのか悩んでしまう。考え過ぎなんだろうか。

それ以降、特に声を掛けられる事は無かった。社長は何かを考えているようにも、考えていないようにも見える。

「はい。ご苦労様、台車は片づけとくから、今日はもういいよ。ありがとうね。帰るところだったでしょ」

荷物を運んだ僕に社長が言う。

「あっ、はい」

わざわざ倉庫に向かった理由が何だったのか、僕にも分からない。下山さんがいないのは分かっていたし、もしかして、社長がいると思ったのだろうか。でも、社長に会っても何を言いたいのかも分からなかった。昨日まで、いや、今日の朝までなら、大変ですと素直に愚痴を言う事も出来たのになと思った。

「じゃあ、失礼します」

きっと疲れているから、ややこしい事を考えるんだと思う。もう少しで三戸さんとの仕事も終わるはずだ。そうなったら、こんなに難しく考える必要もなくなる。でも、下山さんが戻って来た時、三戸さんは真面目になっているんだろうか。何となく上手くやってくれそうな気もしたけど、それを下山さんは受け入れるんだろうか。

更にややこしく物事を考え始めて、げんなりとしてしまった。やっぱり、疲れているんだろう。そのせいにしてしまうのが、一番だった。きっと、寝て目が覚めたら難しく考え過ぎていたと思うんだろう。そのはずだ。そう思い込むことにしたけど、やっぱり、ため息が出てしまった。朝とは違ったため息だったと思う。
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