夢ノコリ

hachijam

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大きなカラスの夢

7.

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「ああ、羽田さん。もう具合、大丈夫?」

僕が荷物を置いていると、三戸さんが話しかけてきた。

「はい。大丈夫です」

そう作業しながら、僕は答える。

「なら、良かった」

と三戸さんは微笑みながら答えたけど、何だか、やつれているように感じるのは気のせいだろうか。その事が少し心配になる。

「昨日は急に休んでしまって、すいませんでした」

まずは謝る。

「ん、ああ、大丈夫、大丈夫。調子悪い時は仕方ないよ。うんうん」

「社長、怖かったでしょ?」

下山さんが急にそう言ったのでびっくりした。

「ん、まあ、そうだね」

三戸さんは苦笑いを浮かべてそう答えた。

「俺も一度あるんで…」

「ああ、そうなんだ。なるほど、分かったよ。確かに怖かったよ」

そう三戸さんが認めた。何がどう怖かったのか詳しく聞きたかったけど、下山さんと三戸さんの経験した者にしか分からないという雰囲気で、問いただす事ができなかった。

「…、これからは、それなりに真面目に働きます」

三戸さんがポツリとそう呟いた。その発言に僕は驚く。

「ああ、でも、俺は俺だから、必要以上には出来ないよ」

そう言い訳するように付け加えた。

「そう、それが一番だと思いますよ」

下山さんはそう言うと、用件が済んだという風にその場を後にした。何となく、照れくさく感じたのかもしれない。僕も荷物を確認して、倉庫に戻ろうとしたら、また、三戸さんが話しかけてきた。

「…、一応、言っておくけど、社長に言われたから、そう思ったんじゃないよ」

「?」

「羽田さんが頑張っているのを見て、少しは真面目になった方が良いかなと思って…。次の仕事がすぐに見つかるか、分からないし、給料分ぐらいは働かないといけないなと思って…」

どこまで本心なのかは掴みかねていたけど、割と本気で言っているのかもと思ってしまった。でも、僕のどこを見て、そう思ったのかは、正直、良く分からなかった。体調が悪くなるほど、頑張った甲斐があったというのは、良い方に考え過ぎなんだろうか。

「あ、え、はい」

どう答えて良いのか分からず、そんな風に言ってしまった。

「ああ、そうそう。ひとつお願いがあるんだけど…」

そう言うと、道の覚え方を僕に聞いてきた。どうやら、道を覚えるのだけは本当に苦手らしい。それでどうしてドライバーをしているんだろうと思ったけど、そういうのを聞いてくるのは、それなりに真面目になろうとしているのだとは思った。僕もそんなに詳しくないと思いつつ、そのやる気を尊重して、いくつか、覚えておくと目印になる場所を説明したりした。
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