夢ノコリ

大きなカラスの夢

８．

思ったより時間が掛かったなと倉庫に戻って思った。三戸さんがあそこまで熱心に聞いてくるとは思わなかった。それと同時に、道を覚えるのだけはどうにも苦手なんだという事も分かった。もしかしたら、本当に苦手な事を隠したかったから、あんな風な態度を取っていたのだろうか。なんか、三戸さんだったらそういう事もやりそうな気もするけど、でも、やる気が無かったのは本当だろうなとは思った。

これから、本当に真面目になるんだろうか。正直言って、半信半疑だった。昨日、今日と真面目に働いていたのは事実だろうけど、それも単なる気まぐれなのではと思ったりした。これまでの行いがあるにしろ、そういう風に見てしまうのは、悪いのかなとも思う。反省しているようだったから、純粋に信じてあげるべきなんだろうと思いながら、いやいや、あまり期待しない方が良いという気持ちにもなってくる。いずれにしろ、しばらく様子を見ないと分からない。

何ともとらえどころがない人なんだなと改めてそう思った。明日になったら気まぐれに辞めますと言っても驚かない気もした。でもまあ、何だかんだで要領は良さそうなので言ったからには、それなりの対応をするのかなと思った。そうして欲しいという気持ちもある。

少し倉庫を留守にしている間に、仕事が入っていた。量が多い訳でも、緊急性が高い訳でもなかったけど、他にやる事も無いので、さっさと片づけた。新しい方法を試すいい機会だとも思った。やってみると、効率は良くなっている気がする。

気がするだけで良いのかなと思ったけど、どうやって、効率が良くなったことを証明すれば良いのか分からなかった。正確に証明するためには、時間とか測るのかなとか思ったけど、そもそも、元のやり方の時間がどれくらい掛かったのかも正確に把握している訳では無いなと思った。もう少し試してみて、考えよう。とりあえず、そんな事を考えた。

ようやくバイトの終了の時間が近づいてきた。今日は作業としては、一番楽だったけど、その分、時間を長く感じた。どっちが良いんだろうと思いながら、何だかんだで、一週間連続のバイト、実際は一日休んだので完全に一週間では無かったけど、が終わってホッとした。

「ふぅ」

と大きくため息を吐いてしまった。疲れたと大きな声で言いたい気分だったけど、今日のところは、そんなには疲れていないと思ったので、自重した。これで夏休みを楽しむための資金が溜まったと思う。それを考えるとニヤニヤしてしまう。ようやく夏休みらしい気分を味わえそうだ。