夢ノコリ

hachijam

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雨が降りそうな夢

10.

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「じゃあ、次はその映画を見に行こうよ」

割と自然に言えたけど、良く言えたなと思ったりもした。

「うん。そうだね」

「いつだったら大丈夫?」

社交辞令では無い事をアピールする。ここで決めないと、またモヤモヤするかもしれないとも思った。

「ええっと」

少し赤岡さんが考える。やっぱり、忙しいのだろうか。

「週末だったら、大丈夫かな」

意外とすぐだ。

「バイトあるから、土曜日はちょっと無理かもしれないけど、日曜だったら、こっちも大丈夫」

そう答えた。

「でも良いの?忙しいんじゃない?」

少し遠慮がちに言われた。

「大丈夫、バイト以外は暇だから」

堂々と言う事じゃないかもしれないけど、そう言った。

「うーん」

まだ少し迷っているようだった。だから、思い切って、

「じゃあ、日曜日に決めよう」

と言ってみた。

「あ、うん。分かった」

僕の勢いに押されたのか、そう赤岡さんは答えた。少し、強引だったかなと思ったけど、これぐらいは許されるだろうと思う事にした。嫌だったら、断われたはずだ。そうではないはずだ。多分。

地元の駅に着いた。勇君は起こされたばかりでまだ眠そうな顔をしていた。赤岡さんにお礼を言うように言われて、寝ぼけた感じで頭を下げていた。そして、赤岡さんと一緒に帰っていく。その後ろ姿を見送って、僕も帰ろうとしたら、突然、勇君が振り返り、僕のところに走ってきた。

何か忘れ物でもしたのかなと思っていたら、じっとこちらの顔を見ている。そして、

「お兄ちゃんはお姉ちゃんの彼氏なの?」

と聞いてきた。不意を突かれた質問。

「いや、違います」

変な丁寧語で答えてしまった。

「でも、好きなんでしょ?」

なんて答えたら良いのか困る。すると、勇君を呼ぶ赤岡さんの声が聞こえてくる。

「今度、デート行くんでしょ?」

真面目な顔で聞いてくる。話を聞いていたのだろうか。

「おいてくよー」

赤岡さんの声が大きくなった。

「まあ、いいや。でも、僕はお姉ちゃんが好きだからね。忘れないでね」

それだけ言うと、勇君は赤岡さんのところに駆け出して行ってしまった。ライバル宣言なのだろうか。なかなか、困った事になったなと思うけど、何に困っているのかは良く分からない。もしかして、今日の勇君の行動は、僕と赤岡さんを二人っきりで出かけさせないためにした事なんだろうか。それにしては、純粋に楽しんでいるように見えたけど、一石二鳥の作戦と言う事なんだろうか。なかなか侮れないかもしれないと思った。次の約束もまた邪魔してくるんだろうか。それが少し気になった。
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