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待ちぼうけする夢
2.
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「待ち合わせ?」
その声が、突然、聞こえてきた。声の感じで誰だか分かる。そちらに視線を向けると立っていたのは髪の長い女の子だった。パッと見た瞬間、この子を待っていた訳ではないと思った。同時に、何となく待ちぼうけ姿を見られた事が恥ずかしくなってしまう。でも、恥ずかしい事をしている訳ではないだろう。そう思う。ちょっと格好つけようとしていたりしたから、それを見られていたら恥ずかしかったかもしれないけど、それは気にしすぎだろう。そう思う事にした。視線を誤魔化して、聞こえなかったふりをする。
「おーい」
女の子が声を掛けてくる。僕がわざと視線を逸らして誤魔化したことに気が付いて、面白がっている感じだ。これ以上、大きな声を上げられると恥ずかしいと思い、あれ、いたんだというように今気が付きましたと言う表情をする。ばれていて、そうするんだから、恥ずかしいなと思うけど、仕方ない。
「待ち合わせ?」
もう一度、女の子が言った。
「そう。待ち合わせ」
出来るだけ、平常心で言ってみる。
「ふーん。待ち合わせは何時なの?」
「…」
「もしかして、分からないのかな?」
分かっていて聞いてきているんだと思う。相変わらず、こういう時は意地悪だと思う。だから、無視した。
「もう来ないんじゃない?」
「そんな事はない」
少しムキになって言う。ムキになっているところがその可能性が高いのではと思い始めている証拠かもしれない。
「だったら良いけどね。いつまで待つの?」
「…来るまで」
自信ないなと思いながら、そう答えた。
「それはご苦労様です」
「…」
ちょっとムッとした。だから、
「そんな意地悪な事、言って楽しい」
何て事を言ってしまった。ちょっと後悔する。でも、女の子は
「まあ、それなりに」
何て返事を返してきて、やっぱり、この子はとか思ってしまう。
「冗談、冗談」
八割は本気だった気がする。
「目が怖いよ」
それはそうだろうと思う。
「でも、いつまでも待てないだろうし。来ないかもって思っているから、不機嫌になっているんでしょ」
それは図星のような気がした。
「…」
だから返事をしないでいた。
「いつまで待っていられるかな」
女の子はそう意地悪な事を言って、その場を後にした。腹を立てながらもますます不安になる。せめて誰を待っているのか分かればなと思う。充とか三ヶ嶋君だったら、ここまで待たなくて良いのではと思ったりする。後で何か言われても遅れた方が悪いと言えそうだ。でも、そうじゃない人だったら、どうなんだろう。もし、遅れても来てくれることを期待している人だったらどうなるんだろう。そう思う。
その声が、突然、聞こえてきた。声の感じで誰だか分かる。そちらに視線を向けると立っていたのは髪の長い女の子だった。パッと見た瞬間、この子を待っていた訳ではないと思った。同時に、何となく待ちぼうけ姿を見られた事が恥ずかしくなってしまう。でも、恥ずかしい事をしている訳ではないだろう。そう思う。ちょっと格好つけようとしていたりしたから、それを見られていたら恥ずかしかったかもしれないけど、それは気にしすぎだろう。そう思う事にした。視線を誤魔化して、聞こえなかったふりをする。
「おーい」
女の子が声を掛けてくる。僕がわざと視線を逸らして誤魔化したことに気が付いて、面白がっている感じだ。これ以上、大きな声を上げられると恥ずかしいと思い、あれ、いたんだというように今気が付きましたと言う表情をする。ばれていて、そうするんだから、恥ずかしいなと思うけど、仕方ない。
「待ち合わせ?」
もう一度、女の子が言った。
「そう。待ち合わせ」
出来るだけ、平常心で言ってみる。
「ふーん。待ち合わせは何時なの?」
「…」
「もしかして、分からないのかな?」
分かっていて聞いてきているんだと思う。相変わらず、こういう時は意地悪だと思う。だから、無視した。
「もう来ないんじゃない?」
「そんな事はない」
少しムキになって言う。ムキになっているところがその可能性が高いのではと思い始めている証拠かもしれない。
「だったら良いけどね。いつまで待つの?」
「…来るまで」
自信ないなと思いながら、そう答えた。
「それはご苦労様です」
「…」
ちょっとムッとした。だから、
「そんな意地悪な事、言って楽しい」
何て事を言ってしまった。ちょっと後悔する。でも、女の子は
「まあ、それなりに」
何て返事を返してきて、やっぱり、この子はとか思ってしまう。
「冗談、冗談」
八割は本気だった気がする。
「目が怖いよ」
それはそうだろうと思う。
「でも、いつまでも待てないだろうし。来ないかもって思っているから、不機嫌になっているんでしょ」
それは図星のような気がした。
「…」
だから返事をしないでいた。
「いつまで待っていられるかな」
女の子はそう意地悪な事を言って、その場を後にした。腹を立てながらもますます不安になる。せめて誰を待っているのか分かればなと思う。充とか三ヶ嶋君だったら、ここまで待たなくて良いのではと思ったりする。後で何か言われても遅れた方が悪いと言えそうだ。でも、そうじゃない人だったら、どうなんだろう。もし、遅れても来てくれることを期待している人だったらどうなるんだろう。そう思う。
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