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嘘をつく夢
1.
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目の前に美味しそうなケーキが置いてあった。何だか、小腹がすいている。食べていいのか迷っていたら、余計にお腹が空いてくる。誰もいないし、いいやと思って一口食べる。美味しい。クリームたっぷりのショートケーキだ。
一口食べると二口食べたくなる。食欲を刺激されたのか、更にお腹も減った気がする。気が付いたら、全部食べてしまった。食べて良かったのかなと罪悪感に駆られながらも満足している自分がいた。と、そこに人がやってきた。赤岡さんだった。ちょっとドキッとする。そして、空っぽになった、お皿をじーっと見ている。あれは赤岡さんのだったのかなと思う。僕は素知らぬ顔をする。と、
「食べた?」
と聞いてきた。怒っているのか、怒っていないのか、良く分からない感じだった。でも、怒っていると、僕は直感して、
「何の事?」
ととぼけた。
「ここにケーキあったでしょ?」
赤岡さんの追及は続く。
「そう?気が付かなかったけど」
あくまでとぼけてみる。じーっと僕の方を見ている。すぐに謝った方が良いなと思うけど、何となくそれが出来ない。
「食べたでしょ?」
「ううん。食べてない」
結果、嘘をつく事になってしまう。
「本当に?」
「本当」
「ケーキあったのも知らない?」
「うん。気が付かなかった」
こうなったら、どこまでも嘘をついた方が良いと思う。
「ふーん。そうなんだ」
「うんうん。勘違いしてるんじゃない。最初からなかったよ」
そこで赤岡さんが首を傾げる。
「あれ、気が付かなかったって、言ってなかったっけ?」
「えっ、あれ、ん、そんな事、言った。言い間違いかな。ケーキは見ていない、うん、間違いない」
しどろもどろなのが、怪しさ満載だなと我ながら思う。嘘をついているのは誰だって分かるだろうと思ってしまう。
「そうなんだ。で、ケーキ、どんな味だった?」
不意を突いてきたけど、そんな誘導尋問には乗らない。
「ケーキがあったのかも知らないのに、味は分からないよ」
ちょっと自信を取り戻したように落ち着いて答える。これで乗り切れるのではないかと思った。
「そうか、そうだよね。…でも、じゃあ、何で、口元にクリームが付いてるの?」
思わず手で口元を拭う。でも、クリームはついていなかった。
赤岡さんを見ると、ほらと言わんばかりの顔をしている。
見事に引っ掛けられてしまったようだ。
「やっぱり、食べたでしょ」
断定するように言う。
「いや、食べてない」
僕はまだ嘘をついた。
赤岡さんは呆れたように首を横に振ると
「やっぱり、嘘をつくんだ」
と、寂しそうに言った。
一口食べると二口食べたくなる。食欲を刺激されたのか、更にお腹も減った気がする。気が付いたら、全部食べてしまった。食べて良かったのかなと罪悪感に駆られながらも満足している自分がいた。と、そこに人がやってきた。赤岡さんだった。ちょっとドキッとする。そして、空っぽになった、お皿をじーっと見ている。あれは赤岡さんのだったのかなと思う。僕は素知らぬ顔をする。と、
「食べた?」
と聞いてきた。怒っているのか、怒っていないのか、良く分からない感じだった。でも、怒っていると、僕は直感して、
「何の事?」
ととぼけた。
「ここにケーキあったでしょ?」
赤岡さんの追及は続く。
「そう?気が付かなかったけど」
あくまでとぼけてみる。じーっと僕の方を見ている。すぐに謝った方が良いなと思うけど、何となくそれが出来ない。
「食べたでしょ?」
「ううん。食べてない」
結果、嘘をつく事になってしまう。
「本当に?」
「本当」
「ケーキあったのも知らない?」
「うん。気が付かなかった」
こうなったら、どこまでも嘘をついた方が良いと思う。
「ふーん。そうなんだ」
「うんうん。勘違いしてるんじゃない。最初からなかったよ」
そこで赤岡さんが首を傾げる。
「あれ、気が付かなかったって、言ってなかったっけ?」
「えっ、あれ、ん、そんな事、言った。言い間違いかな。ケーキは見ていない、うん、間違いない」
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「そうなんだ。で、ケーキ、どんな味だった?」
不意を突いてきたけど、そんな誘導尋問には乗らない。
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ちょっと自信を取り戻したように落ち着いて答える。これで乗り切れるのではないかと思った。
「そうか、そうだよね。…でも、じゃあ、何で、口元にクリームが付いてるの?」
思わず手で口元を拭う。でも、クリームはついていなかった。
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見事に引っ掛けられてしまったようだ。
「やっぱり、食べたでしょ」
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「やっぱり、嘘をつくんだ」
と、寂しそうに言った。
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