夢ノコリ

上京する夢

３．

普段より、二本前の電車に乗って、大学に向かっていた。混んでいる時間帯なので、昨日とは違っていた。ただ、いつもほどは混んでいない。今日がたまたま空いていたというよりは、二本前だという事が大きかったのかなと思う。区切りとなる時間と言うのは、同じ人が多いという事だろうか。

これだけ混んでいると何もする事が出来ない。ただ、立っているだけだ。その中で、僕は夢の事を考えていた。どうして、あんな夢を見たのだろうか。夢を見た時には、いつも感じる素朴な疑問であり、その答えは見つかるようで見つからない。

今日、起きる前に見ていた夢は上京する夢だった。シチュエーションから考えると、最近見たテレビとかがごちゃ混ぜになっているというところなのかなと思う。ただ、夢に見るほど、印象的な出来事かと言われれば疑問に思ってしまう。

夢に出てきたお笑い芸人もテレビで見ていれば、面白いとは思うけど、それだけで、特別なファンでは無かった。ドラマも物語としては、ありきたりな感じで、特別な印象は残っていなかった。充だったら、深層心理は違うんだとか言われそうだなと思った。

自分の深層心理なんてもの真面目に考えた事が無かったけど、そもそも、本当にそんなものがあるのだろうか。だんだんと頭の中がぐちゃぐちゃし始めた。朝の時間帯にこういうのを考えるのは辛いのかもしれないと思った。

ひとつだけ気になったのは、上京の夢だった事である。確かにドラマの影響かもしれないけど、実際、僕は上京していない。と言うよりも、どちらかと言えば真逆である。都心に近い所に生まれて、今も実家暮らしで上京と言うのを考える必要も無かった。

そういう人間がどうしてそんな上京の夢を見るのか。たまたまと言ってしまえば、それまでだけど、本当に深層心理だとすれば、僕は現状を変えたいと思っていたりするのだろうか。細かい不満が無いと言えば、嘘になるけど、今の状況に大体は満足しているというのも正直なところだ。もし、それを否定したいと考えている自分がいるとしたら、それは何なんだろうか。また、考えが複雑になってくる。

悪い癖だなと少し思う。

「いつも、考え過ぎるよね」

そんな事を人に言われた事があるのを思い出した。今まで思い出す事も無かった事をふと思い出した事に僕は戸惑った。そう言えばと思い出す。今朝見た夢に出てきた彼女は、ドラマに出ていた女優さんよりも、その言葉を僕に言った人に似ていた気がする。彼女の名前は何だっけなと思い出そうとした。なかなか、思い出せない中、電車は降りる駅にたどり着いた。