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上京する夢
7.
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昼休み混んでいる食堂に僕と充と三ヶ嶋君はいた。僕と三ヶ嶋君は日替わり定食を選んで、充はうどんを食べていた。充は前の講義が如何に面倒だったかを語っている。いつもの事だから、僕と三ヶ嶋君は軽く受け流していた。
「午後どうする」
充が話を変えてきた。充がこういう話をする場合、自分は講義を出るつもりはないから、一緒にサボらないというニュアンスを含んでいる。
「講義」
そんな空気を察してか、三ヶ嶋君が簡潔に言う。僕も無言のまま、三ヶ嶋君と同意見である事を示した。
「そうか、やっぱりそうだよな」
と何だか悔しそうな充。
「やっぱ、出るべきなのかな。でも、面倒だよな」
とグチグチと文句を言っていた。
「面倒なら、出なければいいじゃん」
とはっきりと三ヶ嶋君が言い、僕も無言で頷いた。ちなみに午後の講義は必修では無いし、出席を取っている訳でもない。ただ、講義としては比較的分かりやすいからなのか、人気があり、出席する人が多い講義だ。充も午前中からの流れで出席する事が多かった。そう考えると、充がそういうのは意外と珍しい気がした。皆勤賞と言う感じでは無かったが、これまであまりサボらない講義のひとつだったように思う。
「何かあるの?」
そう聞いて欲しそうだったので、聞いて上げる事にした。
「もしかしたら、素敵な出会いがあるかもしれないんだよ」
何だか妙に照れたように、ニヤニヤしたように言う充。何なんだこいつは、と顔を見合わせる僕と三ヶ嶋君。それに対して、大真面目に語った内容はとても馬鹿馬鹿しかった。それは充が見た夢の話から始まる。大げさに語る充の話は要約するとこんな感じだ。とてもリアルな夢で今日の出来事を予言しているというのだ。正夢、予知夢だなんて事を言っていた。
起きた時には、ただリアルな夢を見たぐらいにしか思わなかったようだが、それが現実と重なっている事に徐々に気が付いたのだという。例を挙げると、朝見たテレビの占いの結果が同じだったとか、来た電車にギリギリ乗れなかったとか、そんな感じの事が続いたのだそうだ。
その夢の中で、午後の授業に出なかったら、素敵な女の子に出会ったのだという。呆れる僕と三ヶ嶋君。
「勝手にサボって出会いを求めたらいいじゃん」
少し意地悪そうに三ヶ嶋君が言う。
「いや、それがさ、その時に、羽田と三ヶ嶋がいたんだよ。それきっかけで知り合う事になるんだからいないとダメだろ」
と訳が分からない事を言ってきた。あまりの熱心さに大丈夫なのかなと思った僕と三ヶ嶋君は再び顔を見合わせてしまった。
「何にしろ、講義あるから無理だな」
と、冷静に言う三ヶ嶋君。僕はまた黙って頷く事にした。
「そうだよな」
結局、昼食を終え、教室に向かう僕と三ヶ嶋君の後をトボトボと充はついてきた。まだ、諦めきれないようだった。そんな充を無視するように教室に入ると、いつもとは違いガラガラに空いた教室だった。一瞬、教室を間違えたかと思ったけど、そうでは無かった。そんなに早い時間でもないのにどうしたんだろうと思っていたら、見知った同じ学部の知り合いが、
「今日は、臨時の休講だって」
と教えてくれた。きょとんと顔を見合わせる僕と三ヶ嶋君。
「やっぱり、運命の出会いはあるんだ」
と充が嬉しそうにつぶやいた。
「午後どうする」
充が話を変えてきた。充がこういう話をする場合、自分は講義を出るつもりはないから、一緒にサボらないというニュアンスを含んでいる。
「講義」
そんな空気を察してか、三ヶ嶋君が簡潔に言う。僕も無言のまま、三ヶ嶋君と同意見である事を示した。
「そうか、やっぱりそうだよな」
と何だか悔しそうな充。
「やっぱ、出るべきなのかな。でも、面倒だよな」
とグチグチと文句を言っていた。
「面倒なら、出なければいいじゃん」
とはっきりと三ヶ嶋君が言い、僕も無言で頷いた。ちなみに午後の講義は必修では無いし、出席を取っている訳でもない。ただ、講義としては比較的分かりやすいからなのか、人気があり、出席する人が多い講義だ。充も午前中からの流れで出席する事が多かった。そう考えると、充がそういうのは意外と珍しい気がした。皆勤賞と言う感じでは無かったが、これまであまりサボらない講義のひとつだったように思う。
「何かあるの?」
そう聞いて欲しそうだったので、聞いて上げる事にした。
「もしかしたら、素敵な出会いがあるかもしれないんだよ」
何だか妙に照れたように、ニヤニヤしたように言う充。何なんだこいつは、と顔を見合わせる僕と三ヶ嶋君。それに対して、大真面目に語った内容はとても馬鹿馬鹿しかった。それは充が見た夢の話から始まる。大げさに語る充の話は要約するとこんな感じだ。とてもリアルな夢で今日の出来事を予言しているというのだ。正夢、予知夢だなんて事を言っていた。
起きた時には、ただリアルな夢を見たぐらいにしか思わなかったようだが、それが現実と重なっている事に徐々に気が付いたのだという。例を挙げると、朝見たテレビの占いの結果が同じだったとか、来た電車にギリギリ乗れなかったとか、そんな感じの事が続いたのだそうだ。
その夢の中で、午後の授業に出なかったら、素敵な女の子に出会ったのだという。呆れる僕と三ヶ嶋君。
「勝手にサボって出会いを求めたらいいじゃん」
少し意地悪そうに三ヶ嶋君が言う。
「いや、それがさ、その時に、羽田と三ヶ嶋がいたんだよ。それきっかけで知り合う事になるんだからいないとダメだろ」
と訳が分からない事を言ってきた。あまりの熱心さに大丈夫なのかなと思った僕と三ヶ嶋君は再び顔を見合わせてしまった。
「何にしろ、講義あるから無理だな」
と、冷静に言う三ヶ嶋君。僕はまた黙って頷く事にした。
「そうだよな」
結局、昼食を終え、教室に向かう僕と三ヶ嶋君の後をトボトボと充はついてきた。まだ、諦めきれないようだった。そんな充を無視するように教室に入ると、いつもとは違いガラガラに空いた教室だった。一瞬、教室を間違えたかと思ったけど、そうでは無かった。そんなに早い時間でもないのにどうしたんだろうと思っていたら、見知った同じ学部の知り合いが、
「今日は、臨時の休講だって」
と教えてくれた。きょとんと顔を見合わせる僕と三ヶ嶋君。
「やっぱり、運命の出会いはあるんだ」
と充が嬉しそうにつぶやいた。
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