夢ノコリ

hachijam

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上京する夢

9.

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充の視線を追うと、そこには三人組の女の子がいた。年齢で言えば、僕たちと同じくらい大学生だろうか。この辺りには大学が多いし、沿線を含めれば、その可能性は高いような気がした。驚いたのが、

「お姫様…」

と三ヶ嶋君が呟いた事だった。僕があっけに取られていると、その事を聞き逃さなかった充がニヤニヤと言う。

「だから言っただろ」

何が起こっているのか、僕は状況がつかめなかった。そうこうしている内に、その女の子たちは駅へと向かってしまう。慌てて、その三人を追う充。すぐに三ヶ嶋君が続く。僕はどうしていいか分からないまま、とりあえず、二人に続く事にした。これはただナンパしようとしているだけなのではと少し思いながら。

「ねぇねぇ」

声をかけたのは充だった。こういう事に慣れているのだろうか。と、そんな事を思う。普段だったら、三ヶ嶋君はそういうのを止めそうだ。でも、その時はそうしなかった。

三人組の女の子は声を掛けられた事に気が付き、振り返った。そこで僕は始めて、その女の子たちの顔をちゃんと見る。そして、この日、一番、びっくりした事が起こった。

そこに、僕が夢の中で見た、その人とそっくりな人がいたからだ。更に怪訝そうな表情を浮かべたその人が

「羽田君?」

と言った事で更に驚く事になる。

「赤岡さん?」

僕はすぐにその名前を思い出した。赤岡みどり。それが、僕がその人と似ていると思った人の名前だ。そして、僕の中学時代の同級生でもある。声を掛けられた瞬間、一気に思い出した。

状況が分からなく、軽くパニックになる。これじゃ、ナンパしたら知り合いだったというオチになりそうだ、事実、それに近い状態なので、否定も出来ないと思った。と、言うか何でここにいるんだとか、訳が分からなくなる。そう言えば、大学に入ったなんて話は聞いていた気もするとか、いろいろと浮かんでくるが冷静に考える余裕はなかった。

結局、その場で何を話したのか、よく覚えていない。僕と赤岡さんが知り合いである事を口実に充がいろいろと調子の良い事を言っていた気がする。赤岡さんたちは僕たちの大学とは違う大学だったが、近くの大学で良く知っているところだった。赤岡さんたちもこれから講義があるようで、そんなにのんびりとはしていられないらしい。機会があったら飲みに行こうよと充がこれまた上手い事を言い、結果として、僕と赤嶋さんが連絡先を交換する事でその場はお開きとなった。

一体何が起こったのだろう。呆然としながら、僕は充と三ヶ嶋君と共に大学へと戻った。
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