夢ノコリ

hachijam

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上京する夢

10.

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30分後、僕たちは再び大学に戻って教室にいた。興奮している様子の充、何だか照れている三ヶ嶋君、戸惑う僕の三人は、授業が始まるまでの時間を黙って過ごしていた。僕は何が起こったのかを冷静に考えようとした。

そもそもは、充が見た夢の話が発端である。その夢の真義を確かめるために駅へと向かった。本来であれば、講義があったので、その時間に駅に向かう事は無かったはずだ。それが、たまたま、休講になり、駅に向かう事になった。そこで出会ったのが中学校時代の同級生である。

単なる偶然と言ってしまえば、それまで何だけど、充はそれが起こる事を知っていたみたいだった。そうなると夢の通りだという事だろう。それが僕をその場に連れて行きたかった理由だったようだ。

その中でひとつ気になるのは三ヶ嶋君の態度だった。心ここにあらずと言う感じになっている。そう言えば、お姫様なんて事を言っていたのを思い出す。何を言っているんだろうと思ったけど、すぐに昨日、話していた夢の事を思い出した。そのお姫様に似ている子がいたのだろうか、あの三人の中に。それが赤岡さんではないだろうなと少し気になった。確かに可愛かったけどと思い、慌てて頭の中で否定する。何を否定したかったのかは定かでは無かった。

そう言えばと自分の夢の事も思い出していた。もう、今朝見た夢の中で出てきた彼女は、赤岡さんに間違いない気がした。でも、何で赤岡さんが僕の夢に出てきたのだろう。それも上京したというシチュエーションで、ごちゃごちゃと考えると更に訳が分からなく。

「いつも、考え過ぎるよね」

と、言う言葉がよみがえってきた。そうか、その言葉は昔、赤岡さんに言われた言葉だったと思い出した。

何で、そう言われる事になったのかははっきりとは覚えていない。でも、冗談っぽく、でも、かなり本気でそう言われたような気がする。戸惑ったと同時にかなり心の奥に突き刺さった言葉だったのを思い出した。

中学時代の事を思い出しそうな気がした。あの頃、赤岡さんの事をどう思っていたんだろうと考える。好きとか、嫌いとかそういう対象として意識していたんだろうか。そこら辺は曖昧だ。同級生でそれなりに話をしていた一人であった気がする。でも、卒業して、進路がバラバラになってからは会っていないし、夢の中で見かけても名前も思い出せなかったぐらいだ。

でも、会った瞬間に名前を思い出したのも事実だった。何だか可愛くなったなと言うのが、何の気なしに思ったことだった。そう思った自分の気持ちが分からないまま、その日の残りの時間を過ごすことになる。
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