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また遅刻する夢
4.
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よく考えれば、中学が同じという事は、当然、家もそれほど離れている訳でもなく、当然、最寄り駅も同じだったりする。しかも、最寄り駅が同じ大学に向かうとなれば、電車も同じなはずである。だから偶然出会うという事はあり得ない話ではないとは思う。ただ、これまで、そういう偶然が無かったうえ、昨日の偶然の出会いから考えると、この偶然の出会いと言うのは何なんだろう、と少しロマンチックな事を考える前に、遅刻していて、慌てている姿を知り合いに見られたというのが単純に恥ずかしかった。
「遅刻?」
赤岡さんはそう尋ねてきた。
「いや、ギリギリ間に合うはず」
平静を装ってそう言い返した。その言い方がおかしかったのか、また、赤岡さんが笑った。
「そっちは?」
「講義は午後から。早めに行ってレポート書こうかなと思って」
自然な感じで会話が続いていくのが不思議な感じがした。昨日、会話した事が一番の理由だと思ったけど、こういう予想もしていない出会いだったので、緊張する間もなかったというところだろうか。よく考えれば、別に緊張する理由も無いはずなのだが。
「まさか、羽田君がナンパしてくるとは思わなかったよ」
話は自然と昨日の話題になった。
「いや、あれはいろいろと訳があって」
言い訳しようとしてどう言ったら良いのか分からなくなる。
「いいよ、いいよ、分かるから。大丈夫、大丈夫」
本当に分かっているのか怪しいが、冗談めかした口調だったので、あえて反論はしなかった。
「で、誰が好みだったの?」
また、返事に困る事を聞いてきた。僕はあの時にいた他の女の子の事を思い出す。ショートカットの赤岡さん、メガネをかけていた子、ロングヘアの子の3人。赤岡さん以外名前も知らない子の顔を思い浮かべて誰が可愛かったかなと思う。
「いやいやいや、そう真面目に考えられても…」
赤岡さんはまた楽しそうに言った。
「ねぇねぇ、メガネをかけてた子、覚えてる?」
ちょっと声を潜めて言う。
「あっ、うん」
何となく大人しそうな雰囲気の子だった。メガネの印象だけかもしれないが…。
「美加って言うんだけど。その子がそっちの無口だった人の事、気になったみたい」
唐突な話の展開に戸惑う。ずっと喋っていた充では無いし、僕でも当然なく、無口だったのは三ヶ嶋君だった。
「三ヶ嶋君の事かな?」
「ふーん。三ヶ嶋って言うんだ。…で、その三ヶ嶋君、彼女とかいるの?」
何だか少し話がややこしくなりそうだ。
「たぶん、いないと思うけど」
「そうか、そうか」
と、一人で納得する。
「今度の土曜日って大学は?」
話が進んでいく。
「講義はないけど…」
「だったらさ、みんなで出かけない?」
「みんなって?」
「そっちのおしゃべりな人と無口な人と羽田君と私と美加と岬」
岬と言うのはロングヘアの女の子の事のようだ。
「予定聞かないと分からないけど」
急な展開に戸惑いながらもそう言う。
「そうだよね。じゃあ、予定聞いて連絡してよ」
そう言うと話が一気に決まってしまった。ちょっと反論しそうになったけど、充に連絡しろと言われた事を考えれば好都合だと思い直した。
「じゃあ、予定が分かったら連絡する」
気が付いたらもう降りる駅に着きそうだった。遅刻ギリギリの状況には変わりがない。僕がどことなくそわそわしている姿を見て赤岡さんが言う。
「遅刻しないように頑張ってね」
僕は苦笑いしながら、ドアが開いたと同時にダッシュをする。赤岡さんの笑っている顔が浮かんだけど、それを気にしている余裕は無かった。
「遅刻?」
赤岡さんはそう尋ねてきた。
「いや、ギリギリ間に合うはず」
平静を装ってそう言い返した。その言い方がおかしかったのか、また、赤岡さんが笑った。
「そっちは?」
「講義は午後から。早めに行ってレポート書こうかなと思って」
自然な感じで会話が続いていくのが不思議な感じがした。昨日、会話した事が一番の理由だと思ったけど、こういう予想もしていない出会いだったので、緊張する間もなかったというところだろうか。よく考えれば、別に緊張する理由も無いはずなのだが。
「まさか、羽田君がナンパしてくるとは思わなかったよ」
話は自然と昨日の話題になった。
「いや、あれはいろいろと訳があって」
言い訳しようとしてどう言ったら良いのか分からなくなる。
「いいよ、いいよ、分かるから。大丈夫、大丈夫」
本当に分かっているのか怪しいが、冗談めかした口調だったので、あえて反論はしなかった。
「で、誰が好みだったの?」
また、返事に困る事を聞いてきた。僕はあの時にいた他の女の子の事を思い出す。ショートカットの赤岡さん、メガネをかけていた子、ロングヘアの子の3人。赤岡さん以外名前も知らない子の顔を思い浮かべて誰が可愛かったかなと思う。
「いやいやいや、そう真面目に考えられても…」
赤岡さんはまた楽しそうに言った。
「ねぇねぇ、メガネをかけてた子、覚えてる?」
ちょっと声を潜めて言う。
「あっ、うん」
何となく大人しそうな雰囲気の子だった。メガネの印象だけかもしれないが…。
「美加って言うんだけど。その子がそっちの無口だった人の事、気になったみたい」
唐突な話の展開に戸惑う。ずっと喋っていた充では無いし、僕でも当然なく、無口だったのは三ヶ嶋君だった。
「三ヶ嶋君の事かな?」
「ふーん。三ヶ嶋って言うんだ。…で、その三ヶ嶋君、彼女とかいるの?」
何だか少し話がややこしくなりそうだ。
「たぶん、いないと思うけど」
「そうか、そうか」
と、一人で納得する。
「今度の土曜日って大学は?」
話が進んでいく。
「講義はないけど…」
「だったらさ、みんなで出かけない?」
「みんなって?」
「そっちのおしゃべりな人と無口な人と羽田君と私と美加と岬」
岬と言うのはロングヘアの女の子の事のようだ。
「予定聞かないと分からないけど」
急な展開に戸惑いながらもそう言う。
「そうだよね。じゃあ、予定聞いて連絡してよ」
そう言うと話が一気に決まってしまった。ちょっと反論しそうになったけど、充に連絡しろと言われた事を考えれば好都合だと思い直した。
「じゃあ、予定が分かったら連絡する」
気が付いたらもう降りる駅に着きそうだった。遅刻ギリギリの状況には変わりがない。僕がどことなくそわそわしている姿を見て赤岡さんが言う。
「遅刻しないように頑張ってね」
僕は苦笑いしながら、ドアが開いたと同時にダッシュをする。赤岡さんの笑っている顔が浮かんだけど、それを気にしている余裕は無かった。
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