夢ノコリ

hachijam

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宿題をする夢

7.

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びくっとして振り返ると充がいた。

「そんなに驚くなよ」

僕の表情を見て充が言う。僕は何が起こったのか良く分からずに、元の机の方を向くとそこには山積みの本は無かった。小さな机があるだけだった。戸惑う、僕に

「そろそろ、閉まるって」

と充が言った。

「どこにいた?こっちが探してたんだけど」

僕は平静を装うように言う。

「探している本があるか聞いたら、奥の書庫にあるかもって言われたからそっち見て来たんだ」

充が言う奥の書事とは、こことは別の書庫で、ここが図書室だった頃はそこだけが書庫だった。その書庫は受付の奥から入る事になっている。それで充が見当たらなかった理由が分かった。受付の人がいなかった理由も分かった。一緒にその奥の書庫に行って本を探していたのだろう。

「で、本は見つかったの」

理由が分かると、ちょっとびくびくしていた自分が馬鹿らしくなった。少しだけ不機嫌そうにそう尋ねた。

「あったあった。これこれ」

そう言って見せてくれたのは、良く知られた作家のタイトルだけは知っている本だった。わざわざ大学の図書室の書庫で探す必要があったのかなと思っていたら、

「昔の版で読みたかったんだ」

と、僕の考えを察したように言う。確かに古そうな本だった。

「課題と関係あるんだっけ?」

すでに無関係だと思いながらそう聞いてみる。

「いや、全く。何となく読みたかったのを思い出しただけ」

当然のように悪びれもせずにそう答えた。

「そろそろ、閉めたいんですけど」

そこに受付の人がやってきた。

「ああ、すいません。すぐに行きます」

その声に慌てて受付に戻ろうとする僕と充。僕はもう一度だけ机の方を見て何の異変も無い事を確かめた。あれは何だったんだろうか。白昼夢と言う奴なんだろうか、そんな事を思った。

充と僕は借りる手続きを済ませて書庫を後にした。

「そう言えばさ。充が見た夢はどこまで分かっていたの?」

図書室に戻る途中、僕は気になっていた事を思い出して、そう尋ねた。

「夢?どこまで?何の事だっけ」

充は何のことを言われたのかピンと来なかったようだ。

「あの赤岡さんと出会った時の予知夢とか正夢とか言っていた奴だよ。出会いがあるっていうのは言ってたけど、それが赤岡さんだったとか、三ヶ嶋君があんな反応を見せるかまで分かってたの?」

と、聞きたい事を聞いてみた。

「あー、それね。うーん。分かっていたような分かっていないような感じかな」

ちょっと考え込むように充は続けた。

「俺が見た夢の中では、三人の女の子に会って、羽田が仲良く話していて、三ヶ嶋が女の子に見惚れていたというだけ、その詳細までは良く分からなかったというのが正直な話。まして、その後の展開はさっぱり。知っていたら、デートに合わせて、予定を開けるでしょ」

そう言われて納得する。もうひとつ気になる事があったので聞いてみる。

「その夢の続きはあるの?」

「それもさっぱり。」

充は首を横に振りながら答える。

「この先は、自力で頑張れってことじゃないの」

僕の様子を伺いながら続ける。

「まあ、また何か予知夢を見たら教えるよ」

ニヤッとしてそう言った。
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