夢ノコリ

hachijam

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テスト前の夢

2.

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「これが夢だったらって思ていない?」

女の子が言う。

「これが夢だって、気が付いているでしょ?」

女の子が続ける。どうなんだろう。この焦っている気持ちは本当のような気もするし、でも、こういう状況が現実にあり得るのだろうかと疑っている自分もいる。心のどこかでどうにかなると思っているのはそういう事なのだろうか。でも、これが夢だと誰が証明できるんだろうとも思った。

「私がいる事が夢の証明になるかも」

女の子は言う。

「君がいる事?」

「そう私は夢の中にいる者だから」

「だったら君がいたら、全て夢なの?」

僕はそう聞いてみた。

「さあ、それはどうなんだろう」

女の子は少し曖昧に笑った。

「だったら、今、この瞬間が夢だと証明できないよ」

「それはそうだね」

女の子は矛盾に気が付いたように笑う。

「それにもしかしたら覚めない夢かもしれない」

僕は思いついた事を言った。

「覚めない夢?」

「そう、今がもし夢だとして、それが覚めなければ現実と変わらないという事だよ」

「ふふふ」

「何かおかしい事、言った?」

「それはそうかもしれないけど、夢と現実では決定的な違いがある」

「決定的な違い?」

「そう。これは君の夢だという事。だから、現実ではあり得ない事も望むことが出来る」

「現実ではあり得ない事?」

「そう。例えばこんなこと」

そう言うとドロンと言う音がして、紙が一枚出てきた。

「これは明日のテストの問題。欲しいでしょ?」

「確かに…」

と、言いかけて少しだけあれっと思う。

「どうせだったら、答えが欲しいんだけど。それに何でも望み通りだったら、そもそも、テストを無くして欲しいんだけど…」

「ふふふ。そうそこがまた面白い所。自分が望んでいる物がそのまま現れるとは限らない」

「深層心理って奴?」

「それは否定はしないけど、便利過ぎる言葉な気がする。現れていない心理なんて言われたら全てがそれに当てはまってしまう気がするけど」

「君は誰なの?僕の深層心理なの?」

僕は思わず気になって尋ねた。

「それもまた難しい質問。私は私でしかないと私は思う。でも、君が望んでいるから、ここにいるのかもしれないし、そうでもないかもしれない。ただ、通り過ぎるだけの存在かもしれないし、囚われているのかもしれない」

これだけややこしい事になっているのは、夢の中だからとぼんやりと思った。でも、どこかにその答えがあるのではと少し思った。そう思ったのは夢の中だったからだろうか。何かが少し欠けている気がした。
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