12星座のたからもの

花咲 葉穏

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第3話 再会

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***


 目的の場所に、飛行機で向かった。そして、更にそこからバスへ港まで向かう。長い道のりでも、仲間に会える嬉しさから浮き足立ってしまっていた。そんな様子をからかいもせず、微笑ましそうに許容してくれる花楓。次第に見えてくる広大な海に、期待を膨らませる。一度は訪れた事のある無人島。当時は、楽しい事だけではなく苦しい事もあった。しかし、それを乗り越えてこその絆がある。外の景色を見ていると、バスに揺られているからか次第に心地よい眠気に襲われる。朝も早起きしていたし、夜は楽しみであまり眠れなかった。花楓が起こしてくれるだろうと思えば、そのまま眠気に逆らうことなく瞼を閉じる。


***


「…ろ、おーい、このみ。おきろ~。」


「ん…?うん、おきてるおきてる…。寝てないよ、おかあさん…。」


「誰がおかあさんだ。もうそろそろ降りるぞ、おきろ。」


 どれくらい寝ただろうか。聞き覚えのある声に、寝惚けながら返事をする。うっかりおかあさんと呼んでしまったが、起こしてくれた人物は花楓だった。ふわぁ、と抑えきれない欠伸をして瞼を開ける。そして、なにか違和感を感じる。自分は窓際に座っていて、窓側に頭を寄せていた。しかし、自分のすぐ左側に感じる体温に寝惚けている頭をフル回転させた。こんなに近かったっけ、そう思いおそるおそる隣を見るとすぐ近くに花楓の顔があった。


「おはよ。起きてくれて助かった。そろそろ肩が痛くなりそうだったんだ。」


「あ、あぁ…、ごめん。寄りかかるつもりは無かったんだけど。多分、丁度いい枕だったのかな~。あはは、あはは…。」


「誰が枕だ。まあでも、気にするな。これには深い訳がある。」


「え、なに。」


「最初は窓の方に寄りかかってただろ?このみが寝たあと、急ブレーキかかって目の前の手すりに盛大にでこぶつけてた。それでも起きなくて、一旦放っておいたんだけどな。その後も何回か急ブレーキかかって、その度にでこぶつけてたんだ。あまりにも見ていて痛そうだったから、窓側に寄りかからせてやったんだけどな。その後のカーブで、思いっきり俺の肩に頭突きしてきたから、めんどくさくてそのままにしておいた。」


 彼の顔に疲労の色が見える。随分とお騒がせしたようだ。やや申し訳なく感じつつ、もう一度謝った。そして、次に止まる駅の名前がアナウンスされたため、バスの停止ボタンを押す。彼に言われた通りなら、私の額は青あざでも出来ているんじゃないかと心配になる。持ってきていた、コンパクトミラーで額を確認した。青あざにはなっていなかったが、痛々しい程に赤くなっていた。みんなに会う前に、赤みが引いてくれと言わんばかりに自分の額を撫でた。
 そして、バスが駅に止まると、私たちは二人でバスを降りる。キャリーケースを引きながら、指定された船着き場へ向かった。既に感じる潮風と、海鳥の鳴き声により期待が昂る。五年間、一切連絡をとっていなかった訳では無い。メッセージでは、ほぼ毎日誰かしらと話していた。仕事の愚痴だったり、恋バナだったり、色々話した。でも、実際に顔を合わせて話すことは五年ぶり。感動で誰か泣いてしまうかもなと思いつつ、徐々に近付く船着き場に足取りが軽快になる。


「あれ?部長と副部長じゃね?おーい!!こっちだぜー!!」


「えっ!うそうそ!ほんとにこのみと花楓!?やばーい!五年ぶり!!会いたかったよ~!!」


「ちょっ、ちょっと要!急に飛びついたら危ないでしょ…。はぁ、死んだかと思った。後ろに倒れて、砂に顔が埋もれて死んじゃうかと思った。」


「あははっ!このみは相変わらずだなあ!ほんとにこのみがこの世に存在してる~…。はぁ~、生きててよかったあ。」


 船着き場が見えてくると、既に集まっていた数名がこちらに気付く。まずこちらに気付いた彼は、牛込亜月うしごめあつき。私と花楓のことを特に慕ってくれていた部員。太陽に照らされて赤く輝く髪と、キラキラの眩しい笑顔が良く似合う犬系男子だ。両手をブンブン振りながら、こちらに大きな声で呼びかけてくる。それに、便乗してきた女性は獅子渡要ししどかなめ。今回の旅行の企画者だ。ボブ位の髪はおしゃれに外ハネに巻かれていて、夏っぽさを感じる雰囲気。要はこちらに気付くなり、全速力でこちらに飛びついてきた。鈍臭い私は、彼女に飛びつかれ支えきれず後ろによろけた。慣れた手つきで花楓が私の背中を支えてくれた。大学の頃を思い出すような光景に、自然とリラックスしてすらすらと言葉が出てくる。


「ほらほら、みんな待ってるよ!あっち行こう!」


 要がぐいぐいと手を引っ張ってくる。みんなと言っても、まだ全員は集まっていないのか船着き場にいる人影は数人のようだ。要に手を引かれていれば、すかさず私は花楓の手を掴んで引っ張った。こういう時、花楓は遠慮して私たちの中に入ってこない。それを本人は気にしていたことを、たった今思い出した。大学の頃の懐かしさに心が温まりながらも、手を引かれて驚いている彼の方へ振り返った。


「ほら!!ちんたらしてないで、ついてきなさーい!」


「ふはっ、はいはい、~。」
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