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【鬼灯】
第3話 救援
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『ミツさん、いい加減オペレーション聞いてくれますか?貴女が勝手な行動をすると、俺たちにまで出動命令がでるんですからね。いい加減自覚してください。あ、紫苑彼方、出動しました。』
『三瀬林恩美花、出動。射撃位置、配置つきました。』
オペナビから聞こえてくる呆れ口調の男性と、淡々と任務をこなす落ち着いた女性の声。紫苑彼方、通称シオ。そして、三瀬林恩美花、通称オミ。二人は私の部下にあたる存在だ。
シオとは好んで話さないが、彼は特殊部隊の中でも特別器用なタイプだ。特殊部隊の保有している様々な武器を使いこなすことができる上に、多少はオペレーションも出来るようだ。基本的にスズランとの戦闘は銃を用いる。近距離では、不利なことが多い。例えば、防護服を着ていたとしても布が薄い部分はある。そこに噛みつかれてしまえば、スズランの毒が体内に回ってしまう。そのリスクを考えた場合、近距離の武器はカルミアとデイジー、そしてラベンダーにはまず渡されない。特殊部隊のみ、そういったリスクを負って近距離武器も渡される場合がある。シオもその一人。他に近距離武器を任されてるのは、ミツともう一人の私の同期、計三名に渡されている。優秀だからという理由ではなく、適正や本人の意思で決められる。シオはどういう理由か分からないが、今回の場合ミツが足でまといになっている為素直にありがたいと思った。
そして、もう一人。向かい側の射撃位置へついた部下は、オミ。淡い桃色の髪はハーフツインテールで、平均女性よりも低めの華奢な体。性格は、社交的とはいえないが、素直な女性で嘘はつかない。シオに比べると器用とは呼べず、間違いなく不器用な部類だ。しかし、どのような相手でも平等に接することが出来る。オミには最愛の人がいるときいているが、最愛の人のみ特別でそれ以外はそれ以外としてまとめられているのかもしれないが。
『こんな事もあろうかと、予めシオとオミを呼んでいて正解だったわ。シオ、射撃で仕留め損ねたスズランをお願い。メイとオミは、上からの射撃で出来るだけ数を減らして。大体あと十分後ぐらいには、今のスズランより更に多い数が一気に押し寄せてくるわ。それまで、スズランをできるだけ減らして、一気にスズラン爆弾で片付けましょう。』
『ちょっとちょっとお~、おハル?あたしの役目のオペレーション忘れるなんて、そんな馬鹿なことあるのかしら?』
『えぇ…?それはミツさんが、初めに私のオペレーションが聞こえておらず、一人でスズランの所へ向かってしまったのでオペレーションが要らないのかと思って…。』
『全く、ミツさんのせいでスズラン区域から一番遠い俺とオミまで出動する羽目になったんですからね。』
オペレーションを先に聞かなかったのはミツなのだが、指示をしなければしないで文句を言ってくる。そこへハルへの怒りの矛先を自分に向けるように、口を挟むシオ。これはハルのためというより、オペナビでぐだぐだされることが嫌だったのではないかと、私は予想した。
『あらぁ、別にいいじゃない~。どうせ休みなんて、みんな寝て過ごすだけでしょう?ぐうたら過ごすより、体を動かした方が健康的になれるわよ~。』
『それとこれは関係ないですよね?ミツさんがオペレーションを無視するから、無駄な工数が増えてるの理解できてます?その癖、オペレーションがなければキャンキャン吠えていい加減にしてください。』
ぴしゃりと低い声で言い切る彼。珍しくシオが怒りを露わにした瞬間だった。あまりの気迫にオペナビを聞くメンバーは静まり返った。普段から彼は、のらりくらりとしていて掴みどころがない。へらへらとした張り付いたような笑みを常に浮かべていて、怒りという感情を出したところは見たことがなかった。そんな彼はまだ続ける。
『知ってますよ?ミツさんのやっていること。ナスタチウムのみんな、黙っててあげてるんです。…だって、みんな、お互い様なので。でも、そろそろ我慢出来ないんですよね。』
『ちょ、ちょっと、おシオ?何を、訳の分からないことを…。』
『何が訳が分からないのですか?オミも知っています。オミの大好きなあの人も、シオさんのご家族やハルさんの兄も、そしてメイさんも。みんなミツさんと関係がありますよね。まるで、何か弱みを握っていたかのように。』
シオとミツの間に入り込んだのは、オミ。彼女の素直さは時に人を追い詰める怖さを持っていると思う。ミツの悪行を全て言ってしまえば、ナスタチウムも得をしない事は分かっている。それを踏まえた上で、彼女は発言しているのだろうか不安になる。しかし、賢いオミならわかった上で言っているのだろう。
『な、なによ揃いも揃って…。なんの事か全く分からないわ!ねえ、メイも何か言ったらどうなの!?』
『…私ですか。』
『ええ、貴女だって今ここで話されたくないことがあるのは分かってるのよ?』
ミツへそう言われた途端、ゾッと背筋が凍った。私が話されたくないこと。それを知っているのは、ミツだけだ。ここでミツを庇えば、私は大切な仲間を失うかもしれない。しかし、それをこの場で話されたとしてもきっと皆は私の傍から離れていくのだろう。不甲斐なさから奥歯をぐっと噛み締めて、言葉を話そうとした瞬間、ヘリコプターの音が響き始める。そして、オペナビから状況に似合わない明るい声が聞こえてきた。
『おーい!ナスタチウムのみんな、聞こえてる?本部アルストロメリア所属、美和ましろ。出動しました!流石にナスタチウムのみんなでは対処出来ないぐらいの、大量のスズランが接近中だよ。今から、上空より射撃を開始します。住民達の町を壊したくなかったんだけどね、上からの指示なのでナスタチウムのみんなも安全な建物に逃げてくださーい!五分後には射撃開始します!』
『三瀬林恩美花、出動。射撃位置、配置つきました。』
オペナビから聞こえてくる呆れ口調の男性と、淡々と任務をこなす落ち着いた女性の声。紫苑彼方、通称シオ。そして、三瀬林恩美花、通称オミ。二人は私の部下にあたる存在だ。
シオとは好んで話さないが、彼は特殊部隊の中でも特別器用なタイプだ。特殊部隊の保有している様々な武器を使いこなすことができる上に、多少はオペレーションも出来るようだ。基本的にスズランとの戦闘は銃を用いる。近距離では、不利なことが多い。例えば、防護服を着ていたとしても布が薄い部分はある。そこに噛みつかれてしまえば、スズランの毒が体内に回ってしまう。そのリスクを考えた場合、近距離の武器はカルミアとデイジー、そしてラベンダーにはまず渡されない。特殊部隊のみ、そういったリスクを負って近距離武器も渡される場合がある。シオもその一人。他に近距離武器を任されてるのは、ミツともう一人の私の同期、計三名に渡されている。優秀だからという理由ではなく、適正や本人の意思で決められる。シオはどういう理由か分からないが、今回の場合ミツが足でまといになっている為素直にありがたいと思った。
そして、もう一人。向かい側の射撃位置へついた部下は、オミ。淡い桃色の髪はハーフツインテールで、平均女性よりも低めの華奢な体。性格は、社交的とはいえないが、素直な女性で嘘はつかない。シオに比べると器用とは呼べず、間違いなく不器用な部類だ。しかし、どのような相手でも平等に接することが出来る。オミには最愛の人がいるときいているが、最愛の人のみ特別でそれ以外はそれ以外としてまとめられているのかもしれないが。
『こんな事もあろうかと、予めシオとオミを呼んでいて正解だったわ。シオ、射撃で仕留め損ねたスズランをお願い。メイとオミは、上からの射撃で出来るだけ数を減らして。大体あと十分後ぐらいには、今のスズランより更に多い数が一気に押し寄せてくるわ。それまで、スズランをできるだけ減らして、一気にスズラン爆弾で片付けましょう。』
『ちょっとちょっとお~、おハル?あたしの役目のオペレーション忘れるなんて、そんな馬鹿なことあるのかしら?』
『えぇ…?それはミツさんが、初めに私のオペレーションが聞こえておらず、一人でスズランの所へ向かってしまったのでオペレーションが要らないのかと思って…。』
『全く、ミツさんのせいでスズラン区域から一番遠い俺とオミまで出動する羽目になったんですからね。』
オペレーションを先に聞かなかったのはミツなのだが、指示をしなければしないで文句を言ってくる。そこへハルへの怒りの矛先を自分に向けるように、口を挟むシオ。これはハルのためというより、オペナビでぐだぐだされることが嫌だったのではないかと、私は予想した。
『あらぁ、別にいいじゃない~。どうせ休みなんて、みんな寝て過ごすだけでしょう?ぐうたら過ごすより、体を動かした方が健康的になれるわよ~。』
『それとこれは関係ないですよね?ミツさんがオペレーションを無視するから、無駄な工数が増えてるの理解できてます?その癖、オペレーションがなければキャンキャン吠えていい加減にしてください。』
ぴしゃりと低い声で言い切る彼。珍しくシオが怒りを露わにした瞬間だった。あまりの気迫にオペナビを聞くメンバーは静まり返った。普段から彼は、のらりくらりとしていて掴みどころがない。へらへらとした張り付いたような笑みを常に浮かべていて、怒りという感情を出したところは見たことがなかった。そんな彼はまだ続ける。
『知ってますよ?ミツさんのやっていること。ナスタチウムのみんな、黙っててあげてるんです。…だって、みんな、お互い様なので。でも、そろそろ我慢出来ないんですよね。』
『ちょ、ちょっと、おシオ?何を、訳の分からないことを…。』
『何が訳が分からないのですか?オミも知っています。オミの大好きなあの人も、シオさんのご家族やハルさんの兄も、そしてメイさんも。みんなミツさんと関係がありますよね。まるで、何か弱みを握っていたかのように。』
シオとミツの間に入り込んだのは、オミ。彼女の素直さは時に人を追い詰める怖さを持っていると思う。ミツの悪行を全て言ってしまえば、ナスタチウムも得をしない事は分かっている。それを踏まえた上で、彼女は発言しているのだろうか不安になる。しかし、賢いオミならわかった上で言っているのだろう。
『な、なによ揃いも揃って…。なんの事か全く分からないわ!ねえ、メイも何か言ったらどうなの!?』
『…私ですか。』
『ええ、貴女だって今ここで話されたくないことがあるのは分かってるのよ?』
ミツへそう言われた途端、ゾッと背筋が凍った。私が話されたくないこと。それを知っているのは、ミツだけだ。ここでミツを庇えば、私は大切な仲間を失うかもしれない。しかし、それをこの場で話されたとしてもきっと皆は私の傍から離れていくのだろう。不甲斐なさから奥歯をぐっと噛み締めて、言葉を話そうとした瞬間、ヘリコプターの音が響き始める。そして、オペナビから状況に似合わない明るい声が聞こえてきた。
『おーい!ナスタチウムのみんな、聞こえてる?本部アルストロメリア所属、美和ましろ。出動しました!流石にナスタチウムのみんなでは対処出来ないぐらいの、大量のスズランが接近中だよ。今から、上空より射撃を開始します。住民達の町を壊したくなかったんだけどね、上からの指示なのでナスタチウムのみんなも安全な建物に逃げてくださーい!五分後には射撃開始します!』
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