花の存在価値

花咲 葉穏

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【鬼灯】

第6話 鬼灯の罪

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「ちょっと、メイさん…。厨二病にもほどがありますよ…。今どきそれは流石にウケないですって…。」


「シオ、黙れ。」


 私だって言いたくて言っている訳では無い。彼の方を、ギロっと睨めばそれ以降茶化して来ることはなかった。そして、縛られているミツに近寄りしゃがみこむ。ガムテープを剥がしてあげたい所だけれど、それはまだできない。今、ガムテープを外してしまえばキャンキャン吠えるに違いない。まずは、彼女の罪を聞いてもらわなければいけない。そもそも、何故彼女の罪を裁かなければいけないのか。それは、私に与えられた役目でもあるから。
 まず、何故特殊勢力ナスタチウムは公にされていないのか。何故個人に、罪として個別の武器が与えられているのか。そして、何故私たちはリスクを負ってまで人々を助けているのか。これは全て、私たちが犯した罪を『償う』ために特殊勢力ナスタチウムが出来たからだ。ナスタチウムを編成するメンバーは全て前科持ち。私たちは、償いきれない罪を犯した。それは、自分のため、家族のため、愛する人のため、理由は様々だ。しかし、全員が前科持ちだということは私にしか伝えられていない。それは、アルストロメリアから直接伝えられた極秘情報だ。そのため、私以外には知り得ない情報を、私だけが握っている。しかし、薄々勘づいている人もいるだろう。または、一部の人間のみを疑い全ての人が前科持ちとは思っていない人もいる。
 私たちは、その罪を償うためにこの命をかけて人々を守る。罪が償うのならば、必要最低限の平凡な暮らしを提供してくれるのだそう。現に、寮生活にさせてもらったり、スズラン討伐時以外は比較的自由にさせてもらっている。外に監視カメラが無数にあることは、スズランの監視の目的と私たちの監視の目的も兼ねている。監視カメラの役割については、ナスタチウムのメンバー全員が知っているだろう。だからこそ、監視カメラの目をくぐり抜けて居場所が不明という事が、やましいことをしていたのでは無いかという疑いの目を向けられる。監視カメラは、私たちにとって自分たちの存在が無害である事を証明する味方でもあるのだから。


「ミツ、貴女は監視カメラの目を盗んで何処で何をしていたのでしょう。隙を見て建物の裏口から中へ入り、私の首を絞めた。その後シオに見つかり、殺人未遂に終わり逃げた。そして、何事も無かったように入り口から正々堂々と入ろうとしたのでしょうか。それは流石に、馬鹿としか言えない犯行ですよね。」


「んんん~!!」


「あぁ、うっかりしていました。貴女の口のガムテープを取っていないので、喋りたくても喋ることが出来ませんでしたね。でも、ここでみんな白黒ハッキリつけたいことがあるのかと思いまして…。まだ、外すべきでは無いのかなと考えました。」


「白黒って、もしかしてミツさんの悪行のことですか?…俺も、それについては知りたいです。」


「オミも、あの人に何をしたのか知る必要があります。」


 そう、この二人ならばこの話にのってくると考えていた。二人は、大切な人とミツが接触したことにより、ミツのせいで大切な人を失ったと思っているのだ。ミツは、救いようのない人間。それは、ナスタチウムに入隊した時に膨大な量の資料をアルストロメリアより渡され、資料全部頭に叩き込めと言われた時のこと。


***


「えっ…、なんですか、この資料…。」


「ん?それは、鬼灯満代という人間の資料ですね。今から貴女には、この資料を全て頭に叩き込んで頂かないといけませんので…。少々大変な思いをすると思うのだけれど、頑張ってくださいね。」


 アルストロメリアの人間は、そう呟いて部屋から去っていった。厚みはどのくらいあるのだろうか。物に例えるのなら、A4サイズの紙が漢字辞典ぐらいの厚みになるほど積み重ねられていた。膨大な情報を覚えられるほど、記憶力に自信は全くない。現に、火事の記憶はショックで思い出せないのだから。しかし、やる前からできないと言い張ることも出来ずに資料の一枚目を手に取った。


「鬼灯満代、三十三歳。母親が何もしない父親に愛想を尽かし、母親が浮気したことで父親が激昂し家庭内暴力を振るうようになった。その対象に、満代も含まれる。そして、満代は家庭から抜け出す為に勉学に力を入れ有名大学を卒業し某大手企業に勤め名声と地位を得た。両親とは既に縁を切っている。」


 何となく声に出して読み上げてみたのだが、自分とは違う家庭環境に目をそらす。この資料だけを見るのなら、両親から逃げるために努力をした少女が成功しただけのように思える。彼女はただの被害者なのでは無いかと思えた。しかし、二枚目の資料を手に取ると血の気が引くほどの犯罪履歴が細かく記載されていた。


「○○年×月×日 ×時×分 会社の利益を横領。言葉巧みに男性を騙し、現金百万程度を盗み使用した。」


 会社の利益を盗んだことは、その一回に終わらず数ヶ月期間を空けてから複数回に渡ったようだ。しかし、それ以外にも彼女の悪行は山ほど綴られている。簡単に言えば、パワハラ、セクハラ、モラハラといったものだ。そして、一番目を引いた事件があった。


──────あかゆりデパート放火犯、容疑者。
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