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5:それは小麦と恋の香り
焼けたパンはほんのり甘く
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いつもより早く起きたイヴは手で髪を梳いて服を着ると部屋から出た。エプロンをつけて、気合を示すように強めに結んだ。朝の準備の一連の流れを思い浮かべなから店側の扉を開けて店へと入った
早い起床だったが店には既にシェリーがいて準備に取り掛かっていた。シェリーの姿に一瞬怯んで言葉が出なくなる。深呼吸をしてシェリーに近付いた
「おはようございます!」
「……ああ、おはよう」
シェリーは振り向いてはくれなかったが声音は怒っているようなものではなかった。そのことに僅かに胸をなで下ろした
「シェリーさん……ごめんなさい。昨日は仕事に遅れてしまって……それに、えっと、ごっご心配おかけしました!」
上手い言葉が見付からず纏まりきっていないながらも勢いをつけて謝罪の言葉を口にした。勢いに任せてしまったというのもあり、イヴの顔はこわばっている
沈黙が降りている場に溜め息が落ちる。視線を落としていたイヴは恐る恐る顔を上げてシェリーの背中を見つめた
「アンタはもうここの一員なんだから、ちゃんと自覚を持って、あまり心配かけないようにね」
昨日とは打って変わって優しい声にイヴは目を瞬かせる。また怒られても仕方がない状況だったが、シェリーから返ってきたものは予想外で思わず呆けた。そんなイヴにシェリーは振り向いて箒を押し付けた。その顔は普段通りであり、もう怒りは見えなかった
「ほら、何ボーッとしてんだい。早くしないとお客が来ちまうよ。掃除は任せたよ、イヴ」
「……は、はいっ!」
両手でぎゅっと箒の柄を握って肯いた。急いで開店のため店内を床を掃き始める。それをシェリーは目を細めて見ていた
店内を綺麗にして、一度中に入れば今日のパンが用意されていた。香ばしい香りにイヴは自然と大きく空気を吸い込む。どれもこれも美味しそうでついつい手を伸ばしてしまいそうだ。全ては無理でも余ったものなら食卓に上るというのに
手を出してしまいそうになったが香りだけ堪能して札を籠へとつけていく。間違えないようにパンと札を見比べて、慎重につけていった
札を着け終わったイヴはまじまじとパンの山を見る。黒竜襲撃の際にパンを持って出たのを思い出していた
――美味しいから、逃げて落ち着いたら食べてほしかったんだけど……。あのパンどうなったんだろう
竜とて食事をするはず。彼らから逃げて、それに疲れて一息ついた時にでも食べてほしくて持っていったイヴだが、あのような展開になってしまうとは思わなかった。状況が状況であったためあのパンがどうなってしまったのかイヴにはとんとわからなかった
「イヴ君?」
「あ、はい!」
パンを見つめて思考に耽っていたイヴは顔を上げる。パンの入った籠を持ったグレンが立っていた
グレンは籠をテーブルに置く。火の近くでの作業であるためグレンの顔には大量の汗が浮かんでいた。その汗を首に巻いている布で拭う。
「ちょうど良かった。これ新作なんだ。白いパンが人気だからね。もう少し安価で食べられるようにと思って。数は少ないが……」
「わかりました、出しておきます」
他のパンに比べて籠の中に入っている数は多くない。新作のパンは中が真っ白な白いパンと同じ系統のものだった。白いパンは風味豊かで軽く、口当たりが良くて人気だった。しかし上質な物を使っている分どうしても値を上げなければならない
そこで新作を考えたようだった。生地は白いパンと同じものだったが、砕いた木の実が入っているようだった
「これは……木の実?」
「昨日たくさんいただいてね。せっかくだから使ってみたんだ」
「じゃあ白いパンに……木の実、と」
新しい札に新作のパンの名前を書いていく。それを持ってきたばかりの籠へとつけた
「イヴー? ああ、ここにいたのかい」
「あ、シェリーさん。新作だそうです」
「へえ。じゃあ目立つところに置こうか」
イヴが店舗の中にいないから探しに来たのだろう。シェリーが入ってきた。横に退いて新作を見せるとシェリーはまじまじと見る。頭の中で配置を考えているのだろう
「っとと、もうお客が並んでいるから並べて店を開けるよ」
「はーい!」
籠を持って先に店を持っていくシェリーに続いてイヴも籠を持っていく
新作を目につく場所に置き、他のパンも設置していく。パンで囲まれると扉に手をかけて大きく開いた。待っていた客の嬉しそうな顔が目に入る。自然とイヴの顔に笑みが浮かんだ
「開店でーす!」
早い起床だったが店には既にシェリーがいて準備に取り掛かっていた。シェリーの姿に一瞬怯んで言葉が出なくなる。深呼吸をしてシェリーに近付いた
「おはようございます!」
「……ああ、おはよう」
シェリーは振り向いてはくれなかったが声音は怒っているようなものではなかった。そのことに僅かに胸をなで下ろした
「シェリーさん……ごめんなさい。昨日は仕事に遅れてしまって……それに、えっと、ごっご心配おかけしました!」
上手い言葉が見付からず纏まりきっていないながらも勢いをつけて謝罪の言葉を口にした。勢いに任せてしまったというのもあり、イヴの顔はこわばっている
沈黙が降りている場に溜め息が落ちる。視線を落としていたイヴは恐る恐る顔を上げてシェリーの背中を見つめた
「アンタはもうここの一員なんだから、ちゃんと自覚を持って、あまり心配かけないようにね」
昨日とは打って変わって優しい声にイヴは目を瞬かせる。また怒られても仕方がない状況だったが、シェリーから返ってきたものは予想外で思わず呆けた。そんなイヴにシェリーは振り向いて箒を押し付けた。その顔は普段通りであり、もう怒りは見えなかった
「ほら、何ボーッとしてんだい。早くしないとお客が来ちまうよ。掃除は任せたよ、イヴ」
「……は、はいっ!」
両手でぎゅっと箒の柄を握って肯いた。急いで開店のため店内を床を掃き始める。それをシェリーは目を細めて見ていた
店内を綺麗にして、一度中に入れば今日のパンが用意されていた。香ばしい香りにイヴは自然と大きく空気を吸い込む。どれもこれも美味しそうでついつい手を伸ばしてしまいそうだ。全ては無理でも余ったものなら食卓に上るというのに
手を出してしまいそうになったが香りだけ堪能して札を籠へとつけていく。間違えないようにパンと札を見比べて、慎重につけていった
札を着け終わったイヴはまじまじとパンの山を見る。黒竜襲撃の際にパンを持って出たのを思い出していた
――美味しいから、逃げて落ち着いたら食べてほしかったんだけど……。あのパンどうなったんだろう
竜とて食事をするはず。彼らから逃げて、それに疲れて一息ついた時にでも食べてほしくて持っていったイヴだが、あのような展開になってしまうとは思わなかった。状況が状況であったためあのパンがどうなってしまったのかイヴにはとんとわからなかった
「イヴ君?」
「あ、はい!」
パンを見つめて思考に耽っていたイヴは顔を上げる。パンの入った籠を持ったグレンが立っていた
グレンは籠をテーブルに置く。火の近くでの作業であるためグレンの顔には大量の汗が浮かんでいた。その汗を首に巻いている布で拭う。
「ちょうど良かった。これ新作なんだ。白いパンが人気だからね。もう少し安価で食べられるようにと思って。数は少ないが……」
「わかりました、出しておきます」
他のパンに比べて籠の中に入っている数は多くない。新作のパンは中が真っ白な白いパンと同じ系統のものだった。白いパンは風味豊かで軽く、口当たりが良くて人気だった。しかし上質な物を使っている分どうしても値を上げなければならない
そこで新作を考えたようだった。生地は白いパンと同じものだったが、砕いた木の実が入っているようだった
「これは……木の実?」
「昨日たくさんいただいてね。せっかくだから使ってみたんだ」
「じゃあ白いパンに……木の実、と」
新しい札に新作のパンの名前を書いていく。それを持ってきたばかりの籠へとつけた
「イヴー? ああ、ここにいたのかい」
「あ、シェリーさん。新作だそうです」
「へえ。じゃあ目立つところに置こうか」
イヴが店舗の中にいないから探しに来たのだろう。シェリーが入ってきた。横に退いて新作を見せるとシェリーはまじまじと見る。頭の中で配置を考えているのだろう
「っとと、もうお客が並んでいるから並べて店を開けるよ」
「はーい!」
籠を持って先に店を持っていくシェリーに続いてイヴも籠を持っていく
新作を目につく場所に置き、他のパンも設置していく。パンで囲まれると扉に手をかけて大きく開いた。待っていた客の嬉しそうな顔が目に入る。自然とイヴの顔に笑みが浮かんだ
「開店でーす!」
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