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12話
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ちなみにリックに仕え、いつもそばにいたニルスは何故留学にはついていかなかったのだろうとエルヴィンは思っていた。ニルスいわく「リックがそうしろと」らしい。
「何で?」
「……さあ」
どのみち理由を知っていたとしても口数の少ないニルスがベラベラと喋ってくるとは思えない。とはいえリックがニルスを残らせたのは何か意味でもあったのだろうかと多少気にはなる。留学するにしても仕えている者がそばにいたほうがいいのではないのだろうか。
ただでさえニルスは剣の腕が立つ。何があるかわからない外国で、ニルスの存在は安心だとエルヴィンは思うのだが。
あと、遡る前はどうだったんだろ。やっぱりニルスは残ってたのかな。それとも一緒に行ってたのかな。
リックが留学していることはもちろん知っていたが、ニルスの存在を知らなかったエルヴィンにわかるはずもない。かといってニルスに「ニルスって以前は殿下と一緒に行ってたのか?」と聞けるはずもない。こいつは何を言っているのだと、頭のやばそうな相手を見る目で見られること請け合いだ。
少しでも以前と違うところを探そうとしてるみたいだな俺。必死か。
苦笑した後に、必死にもなるわと自分に突っ込んだ。
「大丈夫か? 熱でもあるのでは……?」
ニルスが怪訝そうな顔をしてエルヴィンの額に触れてきた。ひやりとした手が気持ちいい。すっきりしそうだ。しかしその手がすぐ離れようとしたので思わずそのままで、とつかんだ。
『具合が悪いわけでもないのか? とても心配だがでももしかしたらやっぱりリックをひたすら思っているのかもしれないしやっぱりリックが好きなのでは。いやでも今まで見てきてそんな風には見えなかったしリックが留学してからという気がするがどうなんだろう。あとおとなしく額を触らせてくれてるとこすらかわいい上につかまれた。手が額にあるせいで少し上目遣い気味にこちらを見る様子もかわいいしもう結婚するしかな……』
「饒舌かよ……!」
思わずまた叫んでいた。ニルスがびっくりしたように額から手を放し、エルヴィンを見ている。それはそうだろう。リックに付き添っていないのは何でかと聞いた後黙っていたかと思えば、いきなりわけのわからないことを叫び出した男でしかない。
ああ、これじゃあ俺ほんとにただのやばいやつ。
手で顔を覆いたくなったが、その途中でエルヴィンは我に返ったかのようにぎしりと固まった。自分の奇行はさておき、今の声は本当になんなのだと疑問しかない。
ニルスの声のように思えるし、今この近くにはエルヴィンとニルス以外人はいない。普通に考えてもニルスの声だと思うだろう。
でも……やっぱり耳から聞こえてきた声じゃなかった気がする。
それに思わず突っ込んでいたように、ニルスはあんなにたくさんのことを話す人ではない。聞こえてきた気がした声はほぼノンブレスでつらつら終わりを見せない勢いで喋っていた。あと、内容がどう考えてもおかしい。
俺がかわいいって何だ。
正直、自分の顔は整っているほうだという自覚はある。遡る前もわりとモテていた気がする。恋人がいたことも何度かある。だがかわいいとは何だ。
まあ恋人はいても、ラウラとかのことに気を取られて結局死ぬまで一度も結婚してないけ──
そう思っている途中でさらに気になる。
つか結婚するしかないって何だよ……っ?
「本当に大丈夫か……? 顔色があまりよくない」
ニルスはますます心配そうにエルヴィンを見てきた。エルヴィンが知っているニルスだ。言葉数が相当少ないし一見素っ気ないが、実は男らしい上に優しい。いつものニルスだ。
「あ、ああ。大丈夫。ありがとう」
エルヴィンは笑いかけた。
お前の声が聞こえた気がしたんだけど、お前誰だよと百回くらい言っても足りないほどあり得ないことに、饒舌な上に俺のことかわいいとか結婚するしかないとか言ってきたんだけど、やっぱりお前なの?
聞けない。
改めてニルスとはかけ離れている気がするし、どう考えてもエルヴィンがやはり大丈夫じゃない人に聞こえるだろう。
どうしよう。
ニルスと何でもないような話を、主にエルヴィンがしながら、ひたすら考えていた。
どうしようか。
だがどうしようもない。ニルスから聞こえてきた気がするものの、気のせいである可能性がまだ高い。
時を遡ったと知った時と同じように、しばらく黙って様子を見るか。
どう考えてもそれが一番いいような気がした。誰かに相談してみたいし、一番身近で頼りになりそうなのは今だとニルスだが、声がそもそもニルスから出ている気がしている限りはニルスにも言えない。もちろん一番の親友だと思っているニアキスにも言えない。親友には違いないが、相談相手としてニアキスだとあまりにも荷が重そうだ。
馬鹿にしてるわけじゃないからな、ニアキス。少々生温い目で見てるだけだから。
改めて、やはりしばらくは様子見が一番いいだろうとエルヴィンは思った。
まずはどういった時に声が聞こえた気がしたのか考えよう。そしてどういう理屈があげられそうかを次に考えていこう。
方向性が決まり、エルヴィンはニルスに「じゃあそろそろ休憩終わらせて仕事するかな」と満面の笑みを向けた。
「何で?」
「……さあ」
どのみち理由を知っていたとしても口数の少ないニルスがベラベラと喋ってくるとは思えない。とはいえリックがニルスを残らせたのは何か意味でもあったのだろうかと多少気にはなる。留学するにしても仕えている者がそばにいたほうがいいのではないのだろうか。
ただでさえニルスは剣の腕が立つ。何があるかわからない外国で、ニルスの存在は安心だとエルヴィンは思うのだが。
あと、遡る前はどうだったんだろ。やっぱりニルスは残ってたのかな。それとも一緒に行ってたのかな。
リックが留学していることはもちろん知っていたが、ニルスの存在を知らなかったエルヴィンにわかるはずもない。かといってニルスに「ニルスって以前は殿下と一緒に行ってたのか?」と聞けるはずもない。こいつは何を言っているのだと、頭のやばそうな相手を見る目で見られること請け合いだ。
少しでも以前と違うところを探そうとしてるみたいだな俺。必死か。
苦笑した後に、必死にもなるわと自分に突っ込んだ。
「大丈夫か? 熱でもあるのでは……?」
ニルスが怪訝そうな顔をしてエルヴィンの額に触れてきた。ひやりとした手が気持ちいい。すっきりしそうだ。しかしその手がすぐ離れようとしたので思わずそのままで、とつかんだ。
『具合が悪いわけでもないのか? とても心配だがでももしかしたらやっぱりリックをひたすら思っているのかもしれないしやっぱりリックが好きなのでは。いやでも今まで見てきてそんな風には見えなかったしリックが留学してからという気がするがどうなんだろう。あとおとなしく額を触らせてくれてるとこすらかわいい上につかまれた。手が額にあるせいで少し上目遣い気味にこちらを見る様子もかわいいしもう結婚するしかな……』
「饒舌かよ……!」
思わずまた叫んでいた。ニルスがびっくりしたように額から手を放し、エルヴィンを見ている。それはそうだろう。リックに付き添っていないのは何でかと聞いた後黙っていたかと思えば、いきなりわけのわからないことを叫び出した男でしかない。
ああ、これじゃあ俺ほんとにただのやばいやつ。
手で顔を覆いたくなったが、その途中でエルヴィンは我に返ったかのようにぎしりと固まった。自分の奇行はさておき、今の声は本当になんなのだと疑問しかない。
ニルスの声のように思えるし、今この近くにはエルヴィンとニルス以外人はいない。普通に考えてもニルスの声だと思うだろう。
でも……やっぱり耳から聞こえてきた声じゃなかった気がする。
それに思わず突っ込んでいたように、ニルスはあんなにたくさんのことを話す人ではない。聞こえてきた気がした声はほぼノンブレスでつらつら終わりを見せない勢いで喋っていた。あと、内容がどう考えてもおかしい。
俺がかわいいって何だ。
正直、自分の顔は整っているほうだという自覚はある。遡る前もわりとモテていた気がする。恋人がいたことも何度かある。だがかわいいとは何だ。
まあ恋人はいても、ラウラとかのことに気を取られて結局死ぬまで一度も結婚してないけ──
そう思っている途中でさらに気になる。
つか結婚するしかないって何だよ……っ?
「本当に大丈夫か……? 顔色があまりよくない」
ニルスはますます心配そうにエルヴィンを見てきた。エルヴィンが知っているニルスだ。言葉数が相当少ないし一見素っ気ないが、実は男らしい上に優しい。いつものニルスだ。
「あ、ああ。大丈夫。ありがとう」
エルヴィンは笑いかけた。
お前の声が聞こえた気がしたんだけど、お前誰だよと百回くらい言っても足りないほどあり得ないことに、饒舌な上に俺のことかわいいとか結婚するしかないとか言ってきたんだけど、やっぱりお前なの?
聞けない。
改めてニルスとはかけ離れている気がするし、どう考えてもエルヴィンがやはり大丈夫じゃない人に聞こえるだろう。
どうしよう。
ニルスと何でもないような話を、主にエルヴィンがしながら、ひたすら考えていた。
どうしようか。
だがどうしようもない。ニルスから聞こえてきた気がするものの、気のせいである可能性がまだ高い。
時を遡ったと知った時と同じように、しばらく黙って様子を見るか。
どう考えてもそれが一番いいような気がした。誰かに相談してみたいし、一番身近で頼りになりそうなのは今だとニルスだが、声がそもそもニルスから出ている気がしている限りはニルスにも言えない。もちろん一番の親友だと思っているニアキスにも言えない。親友には違いないが、相談相手としてニアキスだとあまりにも荷が重そうだ。
馬鹿にしてるわけじゃないからな、ニアキス。少々生温い目で見てるだけだから。
改めて、やはりしばらくは様子見が一番いいだろうとエルヴィンは思った。
まずはどういった時に声が聞こえた気がしたのか考えよう。そしてどういう理屈があげられそうかを次に考えていこう。
方向性が決まり、エルヴィンはニルスに「じゃあそろそろ休憩終わらせて仕事するかな」と満面の笑みを向けた。
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