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46話
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また同じような夢を見ていた。実際に起こったことでもないだろうに、何故また見るのか。
目を覚ますとそこにニルスがいた。最初はまだ夢の延長かと思っていたが、ホッとすることに夢から醒めた上に本物のニルスのようだ。ハンノの代わりにいてくれたらしい。
エルヴィンはまだ具合は悪いものの心底安心した。ニルスがいることでこれほど安心するとはと頭の片隅で思う。
もしかしたら今は家族がそばにいるほうがつらいのかもしれない。具合がかなり悪いと自分でもわかる。この弱っている状態であの夢だ。その上で家族がそばにいたら過去を繰り返しそうな気持ちになりかねない。それくらい、今のエルヴィンは弱っていた。シュテファンの夢が相当きつかったのかもしれない。
ニルスも過去に関わっているし、だからこそあの夢でもニルスが出てきたのだろう。しかもあんな風に抱えて。それでも今のエルヴィンにとってはニルスがいてくれるほうが安心できた。
「──起きたのなら帰ろう。馬車は用意してある」
帰る?
大好きな、そして過去に耐え難いほどの別れを味わってしまった家族の元へ?
おまけに帰ってもまた一人で眠ることになる。そうしたらあの夢を、あの夢でなくても過去の夢を見るかもしれない。
「……帰り、たくな……、いや、だ……もう、嫌だ……」
「エルヴィン?」
ニルスが怪訝そうな様子で、だが心配してくれているのだろう、近づいてエルヴィンを覗き込んできた。
頭がぐらぐらする。割れそうに痛い。おまけに寒い。帰りたくない。
エルヴィンはニルスにしがみついた。
「嫌、だ……」
「エルヴィン……具合、かなり悪いんだな。すまない、大丈夫だ。無理に動けなんて言わない。もう少しここで眠っているといい。後でまた来……」
行ってしまう。
行ってしまう。
一人も嫌だった。また眠ってあの夢を見たら耐えられない。それにここにいるニルスは今の、現実のニルスだ。包みなんて抱えていないニルスだ。
ここにいて欲しい。
多分熱に浮かされてもいたのだろう。高い熱により、冷静な判断もできなくなっていたのかもしれない。ただひたすら怖くてつらくて、ニルスにいて欲しかった。
頼むから離れないで。
さらにぎゅっとしがみつく勢いで抱きついた。温かい。寒くて体の節々が痛いエルヴィンに、まるでニルスの温かみは麻薬のようにしみ込んでくる。
「……」
ニルスが何か言ったが、聞こえなかった。そういえばエルヴィンから触れているというのに何も聞こえてこない。情けない様子のエルヴィンに呆れて強い感情など湧く余地もないのかもしれない。もしくは眠っていたし、覚えていないがブローチのついている上着を脱いでいるのかもしれない。今の自分の服装すらエルヴィンは把握できないほど心身ともに疲労し、つらかった。
ふと、ニルスが抱きつくエルヴィンを離そうとしてきた。だがエルヴィンはそうさせるかとしがみつく。耳元でため息が聞こえた。やはり呆れているのかもしれない。だが一人は嫌だった。
「クソ……」
だが悪態をつかれたのは聞こえた。どれだけ呆れられているのか。それでも今離したら一人になってしまいそうで無理だと思っていると少し強い力で肩をつかまれた。そのまま引きはがされるのかと思いきや、ニルスの唇がエルヴィンの唇に触れてきた。
驚く元気もないどころか、とても温かくて心地いい。おまけに一人じゃないと思えてエルヴィンは離された腕をニルスの後頭部に回した。
すると唇がますます密着してくる。何度も何度も触れ合い、優しく食まれ、その内温かい舌が中に入ってきた。
息が荒くなる。だが苦しいよりはやはり心地よくて、もっとしたいし、して欲しかった。夢なんて吹き飛びそうだと思えた。
お互いの息がお互いにかかる。時折呼吸音が漏れる。温かい舌や唇をそして何度も何度も味わい合った。
あまりに心地よくて、エルヴィンの意識がまたゆっくりと失われていく。
ただ、また夢の中へ行くとわかりつつも、今はもう怖くもつらくもなかった。とても温かいからかもしれない。きっと羽根布団にくるまれるような夢に包まれそうだ。
エルヴィンは少し口元を緩めながら眠りに陥った。
一方、ニルスは眠ってしまったらしいエルヴィンを一旦そっとカウチに横たえると、近くの椅子に座って頭を抱えた。
やってしまった。最低だ。俺は本当に最低でろくでもないクソ野郎じゃないだろうか。
心底申し訳なく思っている。それは間違いない。だがさらに最低なことに、嬉しさと心地よさと興奮がまるで泡が湧いてくるかのように次から次へとニルスの感情の中ではじける。
エルヴィンにキスしてしまった。エルヴィンとキスした。
「なんてことだ……」
最悪で最低で、そして最高の気分だった。
「……すまない、エルヴィン」
申し訳なく思うのも本当だ。ニルスは深いため息をつくと立ち上がり、エルヴィンに近づいた。そしてあまり見ないようにしながら乱れた服を正していく。カウチにかけられたエルヴィンの上着も着させると、ニルスはそっとエルヴィンを抱えた。
深いキスをしている間、エルヴィンの口内はとても熱かった。私見もかなりあるだろうが、高熱のせいだろう。眠らせてあげたいが、このままここに放置はできない。
自宅へ帰るのが嫌なのは、もしかしたら家族に心配かけたくないからかもしれない。
ニルスは待たせてある馬車までエルヴィンを抱えたまま移動し、自分の屋敷へ向かわせた。
目を覚ますとそこにニルスがいた。最初はまだ夢の延長かと思っていたが、ホッとすることに夢から醒めた上に本物のニルスのようだ。ハンノの代わりにいてくれたらしい。
エルヴィンはまだ具合は悪いものの心底安心した。ニルスがいることでこれほど安心するとはと頭の片隅で思う。
もしかしたら今は家族がそばにいるほうがつらいのかもしれない。具合がかなり悪いと自分でもわかる。この弱っている状態であの夢だ。その上で家族がそばにいたら過去を繰り返しそうな気持ちになりかねない。それくらい、今のエルヴィンは弱っていた。シュテファンの夢が相当きつかったのかもしれない。
ニルスも過去に関わっているし、だからこそあの夢でもニルスが出てきたのだろう。しかもあんな風に抱えて。それでも今のエルヴィンにとってはニルスがいてくれるほうが安心できた。
「──起きたのなら帰ろう。馬車は用意してある」
帰る?
大好きな、そして過去に耐え難いほどの別れを味わってしまった家族の元へ?
おまけに帰ってもまた一人で眠ることになる。そうしたらあの夢を、あの夢でなくても過去の夢を見るかもしれない。
「……帰り、たくな……、いや、だ……もう、嫌だ……」
「エルヴィン?」
ニルスが怪訝そうな様子で、だが心配してくれているのだろう、近づいてエルヴィンを覗き込んできた。
頭がぐらぐらする。割れそうに痛い。おまけに寒い。帰りたくない。
エルヴィンはニルスにしがみついた。
「嫌、だ……」
「エルヴィン……具合、かなり悪いんだな。すまない、大丈夫だ。無理に動けなんて言わない。もう少しここで眠っているといい。後でまた来……」
行ってしまう。
行ってしまう。
一人も嫌だった。また眠ってあの夢を見たら耐えられない。それにここにいるニルスは今の、現実のニルスだ。包みなんて抱えていないニルスだ。
ここにいて欲しい。
多分熱に浮かされてもいたのだろう。高い熱により、冷静な判断もできなくなっていたのかもしれない。ただひたすら怖くてつらくて、ニルスにいて欲しかった。
頼むから離れないで。
さらにぎゅっとしがみつく勢いで抱きついた。温かい。寒くて体の節々が痛いエルヴィンに、まるでニルスの温かみは麻薬のようにしみ込んでくる。
「……」
ニルスが何か言ったが、聞こえなかった。そういえばエルヴィンから触れているというのに何も聞こえてこない。情けない様子のエルヴィンに呆れて強い感情など湧く余地もないのかもしれない。もしくは眠っていたし、覚えていないがブローチのついている上着を脱いでいるのかもしれない。今の自分の服装すらエルヴィンは把握できないほど心身ともに疲労し、つらかった。
ふと、ニルスが抱きつくエルヴィンを離そうとしてきた。だがエルヴィンはそうさせるかとしがみつく。耳元でため息が聞こえた。やはり呆れているのかもしれない。だが一人は嫌だった。
「クソ……」
だが悪態をつかれたのは聞こえた。どれだけ呆れられているのか。それでも今離したら一人になってしまいそうで無理だと思っていると少し強い力で肩をつかまれた。そのまま引きはがされるのかと思いきや、ニルスの唇がエルヴィンの唇に触れてきた。
驚く元気もないどころか、とても温かくて心地いい。おまけに一人じゃないと思えてエルヴィンは離された腕をニルスの後頭部に回した。
すると唇がますます密着してくる。何度も何度も触れ合い、優しく食まれ、その内温かい舌が中に入ってきた。
息が荒くなる。だが苦しいよりはやはり心地よくて、もっとしたいし、して欲しかった。夢なんて吹き飛びそうだと思えた。
お互いの息がお互いにかかる。時折呼吸音が漏れる。温かい舌や唇をそして何度も何度も味わい合った。
あまりに心地よくて、エルヴィンの意識がまたゆっくりと失われていく。
ただ、また夢の中へ行くとわかりつつも、今はもう怖くもつらくもなかった。とても温かいからかもしれない。きっと羽根布団にくるまれるような夢に包まれそうだ。
エルヴィンは少し口元を緩めながら眠りに陥った。
一方、ニルスは眠ってしまったらしいエルヴィンを一旦そっとカウチに横たえると、近くの椅子に座って頭を抱えた。
やってしまった。最低だ。俺は本当に最低でろくでもないクソ野郎じゃないだろうか。
心底申し訳なく思っている。それは間違いない。だがさらに最低なことに、嬉しさと心地よさと興奮がまるで泡が湧いてくるかのように次から次へとニルスの感情の中ではじける。
エルヴィンにキスしてしまった。エルヴィンとキスした。
「なんてことだ……」
最悪で最低で、そして最高の気分だった。
「……すまない、エルヴィン」
申し訳なく思うのも本当だ。ニルスは深いため息をつくと立ち上がり、エルヴィンに近づいた。そしてあまり見ないようにしながら乱れた服を正していく。カウチにかけられたエルヴィンの上着も着させると、ニルスはそっとエルヴィンを抱えた。
深いキスをしている間、エルヴィンの口内はとても熱かった。私見もかなりあるだろうが、高熱のせいだろう。眠らせてあげたいが、このままここに放置はできない。
自宅へ帰るのが嫌なのは、もしかしたら家族に心配かけたくないからかもしれない。
ニルスは待たせてある馬車までエルヴィンを抱えたまま移動し、自分の屋敷へ向かわせた。
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