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52話
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その日のうちにエルヴィンが自宅へ帰ると、ヴィリーとラウラが駆けつけてきた。
「熱を出されたと聞きました。もう大丈夫なのですか?」
二人からほぼ同じような言葉をほぼ同時に言われ、何気に「さすが双子」と感心してしまう。
「ああ、もう大丈夫。熱も下がったし元気だよ」
「よかった……昨日の朝から具合が悪そうでしたのでとても心配でした」
「本当に? お兄様、本当にもう大丈夫なの? 私、気が気じゃなくて」
二人が心底ホッとした顔になる。改めて「俺の弟と妹かわいい」と思いつつ、ラウラの恰好が気になった。
「ありがとう。本当に大丈夫。心配かけてごめんな二人とも。……ところでラウラ」
「はい」
「お前のその恰好は……?」
「あ」
エルヴィンに聞かれ、ハッとなったラウラは顔を赤らめる。
「……その、シーチングで作られた仮縫いドレスの試着と合わせを……」
どうやらウエディングドレスを作っている過程での試着をしていたようだ。別に下着姿でもないしドレスもそれなりの形にはなっているものの、上はビスチェのままといった風だし少なくとも絶対にこれで外へは出られない。
元々おとなしくて恥ずかしがり屋だったであろうラウラも今ではずいぶん変わった。だがさすがに今さらながらに恥ずかしくなったようだ。見えている肩まで真っ赤になっている。
ただ、そんな姿でも我を忘れる勢いでエルヴィンを心配して駆けつけてきてくれたのだと思うと愛しさがこみ上げる。エルヴィンは微笑みながらマントを脱いでラウラにかけた。
「ほんと心配してくれてありがとうな、ラウラ。でも今頃仕立て屋やメイドがお前を心配してるだろうよ。早く戻ってあげなさい」
「はい」
では、とラウラが戻っていく際に、とりあえずラウラと一緒についてきていたメイドの一人が困ったような笑みをエルヴィンへ向けつつ頭を下げてきた。それを苦笑しながら見送っているとヴィリーに「兄様」と呼ばれる。
「うん?」
「とにかくお元気になられて本当によかったです」
「ありがとう」
「ですが……何故ニルスのところになんか」
「何故って、そこは俺も倒れてたから詳しい過程は知らないけど……城で倒れた俺を運んで医師まで呼んで介抱してくれた相手だぞ。だいたいお前は相変わらず俺の親友を何だと思ってるんだ」
いまだに何故かニルスに対し、まるで敵対心のような何か思うところがあるヴィリーに、エルヴィンは呆れた顔を向けた。
「ニルスは兄様のことをよからぬ風に見てます」
「何だよそれ……。ほんとにヴィリーはもう」
ヴィリーはとてつもなくいい子なのだが、ニルスに限らず何故かエルヴィンの友人に対して何というのだろうか。
……シビア? ちょっと違うけど何かそんな感じ。
「だって俺がいつも、ニルスには気をつけてって言ってるのに兄様、全然気をつけてくださらないし無防備だ」
「何だよ無防備って。だいたい親友に対して警戒する必要ないだろ」
「兄様はわかっておられません。で?」
「で?」
何を問われているのかわからず、エルヴィンは首を傾げた。
「何もされてませんよね?」
「何をされるって……」
呆れて言いかけたところで、夢で見たのであろうニルスとのキスが頭によぎった。
「ゴホ」
「兄様っ? 申し訳ございません、まだ病み上がりでしょうに俺としたことが……! 早く部屋で横になってください。部屋は多分もう暖められていますから」
「いや、ああ、うん、そうだね……ありがとう」
違うと否定しようとして、だが「そうじゃなくて変な夢見たらしくてさ、ニルスとキスしたっていう」などと言えば多分ヴィリーに呆れられそうな気がする。なので言うのはやめておいた。
だがその後しばらくヴィリーが必死になって看病してこようとしたので「もうほんと大丈夫だから」と何度も言う羽目になった。
「ですが咳き込んでおられました」
「あー、うん、あれね……。その、たまたまだよ。たまたま。ほんとに大丈夫。そうだ、ヴィリー。どうせなら久しぶりに一緒にお茶しよう。夕食までもうそんなに時間ないかもだけど、ヴィリーならいけるだろ?」
「本当に大丈夫ですか……?」
「ああ」
「では、はい! 是非」
嬉しそうににこにこと頷くヴィリーを見て、改めて「俺の弟かわいい」と心底思う。
これほど嬉しそうなのは、エルヴィンを慕ってくれているのもあるが、多分いまだに甘い菓子が好きだからもあるのではとエルヴィンは微笑ましく思った。
時間を遡ってからラウラを社交的にさせるため出かけることが多くなった絡みか、以前より頻繁にヴィリーが甘い菓子を食べている姿を見るようになっていた。そんな姿につい「太らなければいいが」なんて思ったりもしたが、それに関しては杞憂だったようだ。騎士を目指して日々訓練していたエルヴィンに倣い、ヴィリーもすぐにひたすら剣の稽古をするようになった。そのためもあってか、今のところ甘い菓子が大好きなままでも中々のスタイルを維持している。
おかげでかヴィリーも結構モテていると聞く。そのわりに、人のことを一切言えないが全く浮ついた噂一つ聞かない。もったいないと思う。
「熱を出されたと聞きました。もう大丈夫なのですか?」
二人からほぼ同じような言葉をほぼ同時に言われ、何気に「さすが双子」と感心してしまう。
「ああ、もう大丈夫。熱も下がったし元気だよ」
「よかった……昨日の朝から具合が悪そうでしたのでとても心配でした」
「本当に? お兄様、本当にもう大丈夫なの? 私、気が気じゃなくて」
二人が心底ホッとした顔になる。改めて「俺の弟と妹かわいい」と思いつつ、ラウラの恰好が気になった。
「ありがとう。本当に大丈夫。心配かけてごめんな二人とも。……ところでラウラ」
「はい」
「お前のその恰好は……?」
「あ」
エルヴィンに聞かれ、ハッとなったラウラは顔を赤らめる。
「……その、シーチングで作られた仮縫いドレスの試着と合わせを……」
どうやらウエディングドレスを作っている過程での試着をしていたようだ。別に下着姿でもないしドレスもそれなりの形にはなっているものの、上はビスチェのままといった風だし少なくとも絶対にこれで外へは出られない。
元々おとなしくて恥ずかしがり屋だったであろうラウラも今ではずいぶん変わった。だがさすがに今さらながらに恥ずかしくなったようだ。見えている肩まで真っ赤になっている。
ただ、そんな姿でも我を忘れる勢いでエルヴィンを心配して駆けつけてきてくれたのだと思うと愛しさがこみ上げる。エルヴィンは微笑みながらマントを脱いでラウラにかけた。
「ほんと心配してくれてありがとうな、ラウラ。でも今頃仕立て屋やメイドがお前を心配してるだろうよ。早く戻ってあげなさい」
「はい」
では、とラウラが戻っていく際に、とりあえずラウラと一緒についてきていたメイドの一人が困ったような笑みをエルヴィンへ向けつつ頭を下げてきた。それを苦笑しながら見送っているとヴィリーに「兄様」と呼ばれる。
「うん?」
「とにかくお元気になられて本当によかったです」
「ありがとう」
「ですが……何故ニルスのところになんか」
「何故って、そこは俺も倒れてたから詳しい過程は知らないけど……城で倒れた俺を運んで医師まで呼んで介抱してくれた相手だぞ。だいたいお前は相変わらず俺の親友を何だと思ってるんだ」
いまだに何故かニルスに対し、まるで敵対心のような何か思うところがあるヴィリーに、エルヴィンは呆れた顔を向けた。
「ニルスは兄様のことをよからぬ風に見てます」
「何だよそれ……。ほんとにヴィリーはもう」
ヴィリーはとてつもなくいい子なのだが、ニルスに限らず何故かエルヴィンの友人に対して何というのだろうか。
……シビア? ちょっと違うけど何かそんな感じ。
「だって俺がいつも、ニルスには気をつけてって言ってるのに兄様、全然気をつけてくださらないし無防備だ」
「何だよ無防備って。だいたい親友に対して警戒する必要ないだろ」
「兄様はわかっておられません。で?」
「で?」
何を問われているのかわからず、エルヴィンは首を傾げた。
「何もされてませんよね?」
「何をされるって……」
呆れて言いかけたところで、夢で見たのであろうニルスとのキスが頭によぎった。
「ゴホ」
「兄様っ? 申し訳ございません、まだ病み上がりでしょうに俺としたことが……! 早く部屋で横になってください。部屋は多分もう暖められていますから」
「いや、ああ、うん、そうだね……ありがとう」
違うと否定しようとして、だが「そうじゃなくて変な夢見たらしくてさ、ニルスとキスしたっていう」などと言えば多分ヴィリーに呆れられそうな気がする。なので言うのはやめておいた。
だがその後しばらくヴィリーが必死になって看病してこようとしたので「もうほんと大丈夫だから」と何度も言う羽目になった。
「ですが咳き込んでおられました」
「あー、うん、あれね……。その、たまたまだよ。たまたま。ほんとに大丈夫。そうだ、ヴィリー。どうせなら久しぶりに一緒にお茶しよう。夕食までもうそんなに時間ないかもだけど、ヴィリーならいけるだろ?」
「本当に大丈夫ですか……?」
「ああ」
「では、はい! 是非」
嬉しそうににこにこと頷くヴィリーを見て、改めて「俺の弟かわいい」と心底思う。
これほど嬉しそうなのは、エルヴィンを慕ってくれているのもあるが、多分いまだに甘い菓子が好きだからもあるのではとエルヴィンは微笑ましく思った。
時間を遡ってからラウラを社交的にさせるため出かけることが多くなった絡みか、以前より頻繁にヴィリーが甘い菓子を食べている姿を見るようになっていた。そんな姿につい「太らなければいいが」なんて思ったりもしたが、それに関しては杞憂だったようだ。騎士を目指して日々訓練していたエルヴィンに倣い、ヴィリーもすぐにひたすら剣の稽古をするようになった。そのためもあってか、今のところ甘い菓子が大好きなままでも中々のスタイルを維持している。
おかげでかヴィリーも結構モテていると聞く。そのわりに、人のことを一切言えないが全く浮ついた噂一つ聞かない。もったいないと思う。
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