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67話
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留学先となる風の国、ミレノールは竜馬なら一日と半日あれば到着する。ただいくら王子だからとはいえ、緊急でもないのに竜馬を出してもらうのも気が引ける。それに風の上位魔法を持っているリックであれば、移動魔法をほんの数回使うだけですぐに着ける。
用意してもらった馬車だと二週間はかかってしまうため、リックは御者に笑いかけた。
「そのまま向かってて。やはり俺は早い方法で向かうことにするよ。なるべく早く勉強したいしね」
「かしこまりました。ですがお荷物がゆっくり届くことになります。いくつか積み直しされては……」
「いいよ。着替えとかは向こうでも手に入るし。だから急がないでゆっくりおいで。怪我しないようにね」
「は、はい! ありがとうございます」
御者は竜馬でも使うのだろうと多分思っているに違いない。別にそう思うなら勝手に思ってくれていい。リックは一言もそう言っていないため、嘘をついたわけでもない。
誰の目にもつかないところで何度か魔法を使い、リックはあっという間にミレノールに着いた。
リックの身分を知っているのは一部の者だけだ。その一部にはアメーリアも当てはまる。
「はじめまして、アメーリア。マヴァリージ王国第二王子、リック・サヴェージと申します」
アメーリアの家へ訪問した時は懐かしさのあまりこみ上げてくるものがあったが、それらは飲み込んでリックはにこにことお辞儀する。
「……お前がリックかい。聞いていた通りの王子様……、……ちょっと、そのお綺麗な顔をもっとよく見せてみな」
以前のアメーリアも初対面からぞんざいな口の利き方だった。周りに付き添いの者たちがいれば「無礼な」と怒り出しただろうが、以前もリックはアメーリアのところへ一人で訪問していた。
ただ、以前はもっとよく見せてこいとは言われなかった。リックは少々緊張しながらアメーリアに近づく。
アメーリアは両手でぐいっとリックの頬をつかむとしげしげと顔を眺めてくる。おちょぼ口になりながらリックは何とか「俺の顔に何か……?」と聞いた。
「……お前……この世界の人間か?」
「え?」
「……そもそも、まとっている色が違う」
ちょっと言っていることがよくわからないながらに、だがアメーリアが言いたいことは何となく察しがついた。とはいえ、まさか気づかれるとは予想もしていなかった。
「……えっと、実は、ですね……、……、……あの、その前に手を離してもらえ、たら……」
おちょぼ口のままはどうも締りが悪い。
その後、リックは遡る前の出来事をアメーリアに話した。
「まさか時の魔術を使ったとはね……。これからはもっと厳重に禁書の管理をしなくてはならないね」
「それに関してはすみません。でもすでに遡る前のアメーリアにこれでもかってくらい叱られ倒したのでご勘弁願えたら」
「ふふ。確かに私なら十二分なほど罰も与えただろうね」
「埃まみれの書庫と倉庫をすべて綺麗にさせられました」
「あはは! こんなお綺麗な王子様があの倉庫をね。そりゃ楽しい。何ならもう一度禁書を盗み読むかい?」
「勘弁してくださいよ。様々な魔術具があるからって魔法は使わせてもらえなかったんですよ……さすがにあれはきつかった」
能力は遡る前から変わらずのため、今回アメーリアに教えてもらうことは基本的になかった。それでもさらに力をつけられればと変わらず弟子にさせてもらった。そもそもまた会えたことがとても嬉しいし、感謝している。
マヴァリージ王国のことはニルスや他の者たちから定期的に情報を送ってもらっている。通信機はなるべく緊急の時に使うよう伝えていた。もしくは「俺に会えなくて寂しい時かな」と伝えたらニルスは「使わない」と微妙な顔で言ってきていた。
そのニルスはリックに言われたこともあってちょくちょくエルヴィンに会いに行っているらしい。本人からも他の者からも聞いた。ただ、二人の仲の進展に関しては残念ながら把握できない。こればかりは帰国してからのお楽しみにするしかない。
エルヴィンはちゃんと毎日ブローチをつけているようだ。上着につけているとニルスからも報告を受けている。ついでにおかしなことを文書で聞かれたりもした。
『エルヴィンに何か言ったりしたりしていないのか? エルヴィンは多分リックがいないことをかなり寂しいと思っているようなのだが』
まさかニルス、俺とエルヴィンに何かあるとか勘違いしてないよね? ほんと基本的に動じない性格してるくせにこういうことにはネガティブだねえ。慣れてないからなんだろうけど。
『ブローチを渡しただけだよ。俺と思って大切にしてねくらいは言ったかもね』
『お前はもしかしてエルヴィンのこと、好きなのか』
『そりゃあ大好きだよ。あとニルス、お前のことも大好きだからね』
『先日聞いたことはそういう意味じゃない』
『じゃあ聞くけどニルスはエルヴィンのことどう思ってる?』
もちろん他の用件が書かれたついでに書かれているとはいえ、ある意味こちらのほうがリックにとって本題なくらい毎回楽しんでいた。ただ『どう思ってる?』と直接的な聞き方をした次の文書では城や町、貴族のことについての報告しか書かれていなかった。
用意してもらった馬車だと二週間はかかってしまうため、リックは御者に笑いかけた。
「そのまま向かってて。やはり俺は早い方法で向かうことにするよ。なるべく早く勉強したいしね」
「かしこまりました。ですがお荷物がゆっくり届くことになります。いくつか積み直しされては……」
「いいよ。着替えとかは向こうでも手に入るし。だから急がないでゆっくりおいで。怪我しないようにね」
「は、はい! ありがとうございます」
御者は竜馬でも使うのだろうと多分思っているに違いない。別にそう思うなら勝手に思ってくれていい。リックは一言もそう言っていないため、嘘をついたわけでもない。
誰の目にもつかないところで何度か魔法を使い、リックはあっという間にミレノールに着いた。
リックの身分を知っているのは一部の者だけだ。その一部にはアメーリアも当てはまる。
「はじめまして、アメーリア。マヴァリージ王国第二王子、リック・サヴェージと申します」
アメーリアの家へ訪問した時は懐かしさのあまりこみ上げてくるものがあったが、それらは飲み込んでリックはにこにことお辞儀する。
「……お前がリックかい。聞いていた通りの王子様……、……ちょっと、そのお綺麗な顔をもっとよく見せてみな」
以前のアメーリアも初対面からぞんざいな口の利き方だった。周りに付き添いの者たちがいれば「無礼な」と怒り出しただろうが、以前もリックはアメーリアのところへ一人で訪問していた。
ただ、以前はもっとよく見せてこいとは言われなかった。リックは少々緊張しながらアメーリアに近づく。
アメーリアは両手でぐいっとリックの頬をつかむとしげしげと顔を眺めてくる。おちょぼ口になりながらリックは何とか「俺の顔に何か……?」と聞いた。
「……お前……この世界の人間か?」
「え?」
「……そもそも、まとっている色が違う」
ちょっと言っていることがよくわからないながらに、だがアメーリアが言いたいことは何となく察しがついた。とはいえ、まさか気づかれるとは予想もしていなかった。
「……えっと、実は、ですね……、……、……あの、その前に手を離してもらえ、たら……」
おちょぼ口のままはどうも締りが悪い。
その後、リックは遡る前の出来事をアメーリアに話した。
「まさか時の魔術を使ったとはね……。これからはもっと厳重に禁書の管理をしなくてはならないね」
「それに関してはすみません。でもすでに遡る前のアメーリアにこれでもかってくらい叱られ倒したのでご勘弁願えたら」
「ふふ。確かに私なら十二分なほど罰も与えただろうね」
「埃まみれの書庫と倉庫をすべて綺麗にさせられました」
「あはは! こんなお綺麗な王子様があの倉庫をね。そりゃ楽しい。何ならもう一度禁書を盗み読むかい?」
「勘弁してくださいよ。様々な魔術具があるからって魔法は使わせてもらえなかったんですよ……さすがにあれはきつかった」
能力は遡る前から変わらずのため、今回アメーリアに教えてもらうことは基本的になかった。それでもさらに力をつけられればと変わらず弟子にさせてもらった。そもそもまた会えたことがとても嬉しいし、感謝している。
マヴァリージ王国のことはニルスや他の者たちから定期的に情報を送ってもらっている。通信機はなるべく緊急の時に使うよう伝えていた。もしくは「俺に会えなくて寂しい時かな」と伝えたらニルスは「使わない」と微妙な顔で言ってきていた。
そのニルスはリックに言われたこともあってちょくちょくエルヴィンに会いに行っているらしい。本人からも他の者からも聞いた。ただ、二人の仲の進展に関しては残念ながら把握できない。こればかりは帰国してからのお楽しみにするしかない。
エルヴィンはちゃんと毎日ブローチをつけているようだ。上着につけているとニルスからも報告を受けている。ついでにおかしなことを文書で聞かれたりもした。
『エルヴィンに何か言ったりしたりしていないのか? エルヴィンは多分リックがいないことをかなり寂しいと思っているようなのだが』
まさかニルス、俺とエルヴィンに何かあるとか勘違いしてないよね? ほんと基本的に動じない性格してるくせにこういうことにはネガティブだねえ。慣れてないからなんだろうけど。
『ブローチを渡しただけだよ。俺と思って大切にしてねくらいは言ったかもね』
『お前はもしかしてエルヴィンのこと、好きなのか』
『そりゃあ大好きだよ。あとニルス、お前のことも大好きだからね』
『先日聞いたことはそういう意味じゃない』
『じゃあ聞くけどニルスはエルヴィンのことどう思ってる?』
もちろん他の用件が書かれたついでに書かれているとはいえ、ある意味こちらのほうがリックにとって本題なくらい毎回楽しんでいた。ただ『どう思ってる?』と直接的な聞き方をした次の文書では城や町、貴族のことについての報告しか書かれていなかった。
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