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69話
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留学してからエルヴィンには会っていないため、あのブローチが上手く作用してくれているか確認は取れていない。また、上手く作用してくれていてもそれにエルヴィンがどう対処しているのかもわからない。
少なくとも不思議現象ということでニルスに話したりしていないのは、ニルスが何も言っていないためわかる。ということはエルヴィンも魔術に気づき、思うことがあってニルスに話していないのではないだろうか。
エルヴィンは誠実な人だ。だから人が強く思う心が読めてしまうとわかれば、あえて読もうとしないか相手に訳を話しそうな気がする。
今回ニルスに話していなさそうなところを見ると、普通に考えられるパターンとしては、まだこの力を探っている最中だからか、力についてわかったものの人の心が読めることに楽しみを見出して利用しているか、どういった場合に読めてしまうか気づいて誰にもあえて話さない上で使わないよう心掛けているかだ。
一般的な人なら二つ目だろう。利用する。リックとてそんな能力が突然降ってわいてきたら利用しようと考える気がする。実際は使おうと思えば使えるものの、さすがに毎回かなり力を使わなくてはならないか、同じく結構力を使って魔術具を作らなくてはならない。よって面倒だから使ったことはない。
エルヴィンの場合、考えられるのは一つ目か三つ目だろう。
今はどの段階なのかな。知りたいけどちゃんと帰国した時の楽しみにしよう。
「ねえ、今ニルス、エルヴィンのこと考えてる?」
「……考えてない。とにかくデニス殿下はそういう派手な女性じゃなければ婚約しないということだろうか」
絶対リックの言葉でエルヴィンが浮かんだであろうニルスは首を振ってきたが、嘘はあまり大して上手ではない。
「まさか。兄上もそこまで馬鹿じゃないと思うよ。そりゃ好みの女性に骨抜きにされちゃったりしたら馬鹿にもなりかねない、流されやすいとこはあるけどさ」
「……言いすぎでは」
ところがそうでもないんだよ、ニルス。幸いお前は以前の記憶のないニルスだけどもね。
「とりあえず俺もさ、兄上にお似合いそうな、淑女でいてしっかりした令嬢がいれば積極的に勧めようとは思っているよ」
「……あの、リック」
「何?」
「……エルヴィンの妹はその、確かまだ結婚とか、は……」
気にしてくれているんだ、とリックはまたにこにこした。
「ああ、ラウラね! 確かに出会った頃よりずいぶんしっかりしてきた気がするラウラは兄上に合うかもしれないね」
「い、いや……だが」
「大丈夫だからそんなに困った顔しないでくれる? 世の令嬢たちが見たらギャップと庇護欲にかられちゃうんじゃない?」
「……俺の表情を読めるのは俺の兄さん以外だとお前くらいだろ」
「そっか。でもごめん、俺はお前とは付き合えない」
「やめろ」
「つれないねえ。とにかく大丈夫。ラウラ、まだ結婚とか考えたくないと思ってるって言いたいんでしょ。確かエルヴィンもそんなこと言ってた気がするし、その気がないのに無理やり推したらかわいそうだもんね」
「……ああ」
その時のニルスはあからさまにホッとしていた。
それらのやり取りをつい思い出し、顔がほころぶ。
「どうかなさいましたか?」
デニスの婚約者について色々考えてはデニスからうやむやにされて困惑しているであろう大臣の一人に、リックはにこにこしながら首を振る。
「どうもしないよ。ところで大臣。兄上の婚約者なんだけどね……」
元々候補に上がっていた令嬢だ。後は多分あれよあれよという間に決まるのではとリックは思った。遡る前もラウラに決まった時はそんな流れだった。
今回デニスの婚約者が決まるのが以前に比べて遅いのは多分ラウラというわかりやすい適任者が全面的に出ていないからだろう。関係者の中では兄が大好きなアリアネがわがままを言って結婚させないようにしているのではといった噂さえある。改めて貴族たちは噂が大好きだなと思いつつ、リックもそんな噂を利用して物事を進めることもあるため、別に嫌悪はしていない。あとアリアネはデニスほど手のひらで転がしやすいわけでないのもあり確かに相変わらずわがままかもしれないが、遡る前に比べるとずいぶんマシだとリックは思っている。
ただ遡る前のアリアネもそこまでひどい姉ではなかった。自分勝手で好き放題なところはあったが、デニスが大好きなところは今から思えばかわいらしいとさえ思える。ラヴィニアのことも、以前はよく構ってくれていたデニスが変わってしまった原因であるため、どうやら快く思っていないようだった。本人に直接聞いたわけではないが、仕えている者から聞いた話によると、当時ラウラのことも不憫には思っていたようだ。ただ、ひたすらおとなしいラウラと親しいわけでもなく、実際のところ好きでも嫌いでもない相手として無関心ではあったらしい。
今のアリアネだったらどうだっただろうかとリックは少し思う。もしかしたらそれでもおとなしすぎていた当時のラウラには無関心だったかもしれない。
でも今回の婚約者はおとなしめで淑やかな人でありつつ、言うことは言うしっかりした人だ。また違ってくるんじゃないかな。
ところで婚約者が決まるのが遅いとはいえリックが留学してからまだそんなに経ってはいないだろう。順調な結果にリックは満足した。ちなみに予想通り、ニルスはデニスの婚約相手がどんな令嬢か、家柄だけは把握しているが外見はちっとも覚えていない様子だった。
少なくとも不思議現象ということでニルスに話したりしていないのは、ニルスが何も言っていないためわかる。ということはエルヴィンも魔術に気づき、思うことがあってニルスに話していないのではないだろうか。
エルヴィンは誠実な人だ。だから人が強く思う心が読めてしまうとわかれば、あえて読もうとしないか相手に訳を話しそうな気がする。
今回ニルスに話していなさそうなところを見ると、普通に考えられるパターンとしては、まだこの力を探っている最中だからか、力についてわかったものの人の心が読めることに楽しみを見出して利用しているか、どういった場合に読めてしまうか気づいて誰にもあえて話さない上で使わないよう心掛けているかだ。
一般的な人なら二つ目だろう。利用する。リックとてそんな能力が突然降ってわいてきたら利用しようと考える気がする。実際は使おうと思えば使えるものの、さすがに毎回かなり力を使わなくてはならないか、同じく結構力を使って魔術具を作らなくてはならない。よって面倒だから使ったことはない。
エルヴィンの場合、考えられるのは一つ目か三つ目だろう。
今はどの段階なのかな。知りたいけどちゃんと帰国した時の楽しみにしよう。
「ねえ、今ニルス、エルヴィンのこと考えてる?」
「……考えてない。とにかくデニス殿下はそういう派手な女性じゃなければ婚約しないということだろうか」
絶対リックの言葉でエルヴィンが浮かんだであろうニルスは首を振ってきたが、嘘はあまり大して上手ではない。
「まさか。兄上もそこまで馬鹿じゃないと思うよ。そりゃ好みの女性に骨抜きにされちゃったりしたら馬鹿にもなりかねない、流されやすいとこはあるけどさ」
「……言いすぎでは」
ところがそうでもないんだよ、ニルス。幸いお前は以前の記憶のないニルスだけどもね。
「とりあえず俺もさ、兄上にお似合いそうな、淑女でいてしっかりした令嬢がいれば積極的に勧めようとは思っているよ」
「……あの、リック」
「何?」
「……エルヴィンの妹はその、確かまだ結婚とか、は……」
気にしてくれているんだ、とリックはまたにこにこした。
「ああ、ラウラね! 確かに出会った頃よりずいぶんしっかりしてきた気がするラウラは兄上に合うかもしれないね」
「い、いや……だが」
「大丈夫だからそんなに困った顔しないでくれる? 世の令嬢たちが見たらギャップと庇護欲にかられちゃうんじゃない?」
「……俺の表情を読めるのは俺の兄さん以外だとお前くらいだろ」
「そっか。でもごめん、俺はお前とは付き合えない」
「やめろ」
「つれないねえ。とにかく大丈夫。ラウラ、まだ結婚とか考えたくないと思ってるって言いたいんでしょ。確かエルヴィンもそんなこと言ってた気がするし、その気がないのに無理やり推したらかわいそうだもんね」
「……ああ」
その時のニルスはあからさまにホッとしていた。
それらのやり取りをつい思い出し、顔がほころぶ。
「どうかなさいましたか?」
デニスの婚約者について色々考えてはデニスからうやむやにされて困惑しているであろう大臣の一人に、リックはにこにこしながら首を振る。
「どうもしないよ。ところで大臣。兄上の婚約者なんだけどね……」
元々候補に上がっていた令嬢だ。後は多分あれよあれよという間に決まるのではとリックは思った。遡る前もラウラに決まった時はそんな流れだった。
今回デニスの婚約者が決まるのが以前に比べて遅いのは多分ラウラというわかりやすい適任者が全面的に出ていないからだろう。関係者の中では兄が大好きなアリアネがわがままを言って結婚させないようにしているのではといった噂さえある。改めて貴族たちは噂が大好きだなと思いつつ、リックもそんな噂を利用して物事を進めることもあるため、別に嫌悪はしていない。あとアリアネはデニスほど手のひらで転がしやすいわけでないのもあり確かに相変わらずわがままかもしれないが、遡る前に比べるとずいぶんマシだとリックは思っている。
ただ遡る前のアリアネもそこまでひどい姉ではなかった。自分勝手で好き放題なところはあったが、デニスが大好きなところは今から思えばかわいらしいとさえ思える。ラヴィニアのことも、以前はよく構ってくれていたデニスが変わってしまった原因であるため、どうやら快く思っていないようだった。本人に直接聞いたわけではないが、仕えている者から聞いた話によると、当時ラウラのことも不憫には思っていたようだ。ただ、ひたすらおとなしいラウラと親しいわけでもなく、実際のところ好きでも嫌いでもない相手として無関心ではあったらしい。
今のアリアネだったらどうだっただろうかとリックは少し思う。もしかしたらそれでもおとなしすぎていた当時のラウラには無関心だったかもしれない。
でも今回の婚約者はおとなしめで淑やかな人でありつつ、言うことは言うしっかりした人だ。また違ってくるんじゃないかな。
ところで婚約者が決まるのが遅いとはいえリックが留学してからまだそんなに経ってはいないだろう。順調な結果にリックは満足した。ちなみに予想通り、ニルスはデニスの婚約相手がどんな令嬢か、家柄だけは把握しているが外見はちっとも覚えていない様子だった。
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