107 / 193
107話
しおりを挟む
目的地に到着してからはそこそこ慌ただしかった。
さすがにゼノガルトには王子たちが向かう旨、連絡があらかじめ入っているため、希望通り盛大に歓迎の儀など行われなかったものの、すぐさま宮殿へ案内された。そして一旦部屋でゆっくりする暇もなく、ゼノガルトの王へ挨拶に城まで向かった。どこの国も同じだろうが、宮殿も城もやたら広いので移動だけでわりと大変だったりする。
ちなみにエルヴィンたち護衛騎士は席を外している。王子たちには騎士でないものの剣の腕も確かな補佐役がそれぞれついているし、友好の場で護衛騎士が離れずついているのは全くもってよくない。
とはいえ謁見の間にある大きな扉の前で待機はしている。これでも仕事でリックたちを護衛している身だ。用はないから茶でも飲んで休憩して待っているというわけにはいかない。
最初は所在なさげに待機していたが、気づけばエルヴィンは扉の両側に立っている王の騎士たちと談話とまではいかないものの気軽に話していた。デニスの護衛騎士フリッツ・バルツァーはそんなエルヴィンを少々ハラハラしたように見ている気がするが、気のせいかもしれないというか気のせいだと思っておこう。
少し喋るくらい、いいよな? もちろん注意散漫になるつもりはないけど、そこそこ時間かかるだろう間、さすがに退屈だ。
あと、ゼノガルトについての話も聞いてみたい。
「道中は貴族の屋敷に滞在じゃなくて宿だったのか」
「うん。完全にお忍びってわけじゃないけど、公にもしてないしね」
「へえ。ああそうそう。ここの話だっけ。ここは雷の土地なだけあって、機械関連が発達してるよ」
「確かにここへ来る途中、あまり俺の国で見ないような建物とかあったよ」
「町の噴水広場は通ったか?」
「通った通った」
「そこに大きな時計台があっただろ」
「えっと、ああ、うん、あった!」
「その時計台な、一時間おきに針のところが開いて機械仕掛けで動く人形が踊るんだぜ」
「えっ、魔法でじゃなくて?」
「魔法だと絶えず誰かがかけなくちゃだろ」
「機械だとそうじゃないのか?」
「ああ。基本ほったらかしてても大丈夫。もちろん定期的なメンテナンスは必要だけどな」
騎士二人が得意げに教えてくれる。
マヴァリージ王国はそもそもエレメントのない国だけに、魔術具はよく使用されるものの魔法をふんだんに使われた町はない。だがそんな魔法でなくとも何かを動かしたりできると知ってエルヴィンはわりとわくわくしながら話を聞いていた。
「あ、でもその機械を動かす動力に雷魔法が使われてるってことか。そのメンテナンスとかにも」
「まあ、そういうことだ。雷は通常自然に発生するものだしな、それを自在に動力に利用するにはやっぱ魔法だな。魔法は生活になくてはならないもんだよな」
やはりそうか、魔法はいるよなあ。今回の新たな商業的契約ってのはこの機械関連での取引だろうかな。それともマヴァリージで豊富な魔術具関連だろうかな。
「にしてもあんた、王子様の護衛騎士のわりに気さくだなあ」
「え、俺?」
「うんうん。もうお一人はあまり喋ってくれないけど」
「……悪いな、一応護衛中だし」
フリッツが申し訳なさげに謝ると騎士たちは「いやいや。でもエルヴィンだっけ? エルヴィンも同じ護衛じゃないのか」と笑いをかみ殺している。
エルヴィンも遡る前ならフリッツと同じだったかもしれない。そもそも昔からあまり社交的ではなかったし、成人して社交界にデビューしてからも最低限の付き合いしかしてこなかった。
今もあまり賑やかな場は得意ではないが、こうして気さくに誰かと接することはもしかしたら何かの役に立つと身をもって学んでいる。何より案外楽しい。
「俺らも護衛というか、勝手に出入りする者がいないよう見張り役をしているわけだけどさ、やっぱたまにはこうして少し話したりもしたいんだよな」
「そうそう」
話していても彼らは周りに目を配っている。他に誰もいなくとも話していても警戒は怠ってはいない。例え城内のそれも基本誰も勝手に立ち入らない謁見の間の扉だったとしてもだ。
こういった姿勢は俺も見習いたいな。
「護衛騎士っつっても休憩時間はあるんだろ? 時間が合えばよかったら町を案内がてら、酒場へ行かないか? 最近中々いい子が入った店、知って……」
騎士の一人が言いかけているところで、どうやら謁見が終わったらしい王子たちが出てきた。そして一緒に出てきたニルスが整いつつもただでさえ目つきはあまりよくない目でじろりとその騎士を睨んだ。
職務怠慢に見られたと思ったのか、単に目つきに対してか、その騎士は慌てて口を閉じ、姿勢を正している。
話を聞いているところだったため喋っていなかったエルヴィンもつられて口を慌てて閉じた。だがデニスとリックは気にした様子もなく「待たせたな」「お待たせ」と言いながら通ってきた通路をそのまま歩いて行く。
「えっと……フリッツ。もし君までとばっちりで職務怠慢だと思われたのなら、申し訳ない……」
扉前の騎士たちに手を上げて挨拶した後で王子たちに続きながらながらエルヴィンが小声で謝ると、フリッツは苦笑しながら「それは思われないと思うが、謝罪は受け取っておくよ。あと問題ない」と言ってくれた。
いい人だ。
前からフリッツとは顔見知りではあったがあまり喋る機会はなかった。真面目でいい人なんて、まるでニルスのようだ。もちろん全然似てるところはないが、エルヴィンはありがたく思いながら少しほっこりしていた。
さすがにゼノガルトには王子たちが向かう旨、連絡があらかじめ入っているため、希望通り盛大に歓迎の儀など行われなかったものの、すぐさま宮殿へ案内された。そして一旦部屋でゆっくりする暇もなく、ゼノガルトの王へ挨拶に城まで向かった。どこの国も同じだろうが、宮殿も城もやたら広いので移動だけでわりと大変だったりする。
ちなみにエルヴィンたち護衛騎士は席を外している。王子たちには騎士でないものの剣の腕も確かな補佐役がそれぞれついているし、友好の場で護衛騎士が離れずついているのは全くもってよくない。
とはいえ謁見の間にある大きな扉の前で待機はしている。これでも仕事でリックたちを護衛している身だ。用はないから茶でも飲んで休憩して待っているというわけにはいかない。
最初は所在なさげに待機していたが、気づけばエルヴィンは扉の両側に立っている王の騎士たちと談話とまではいかないものの気軽に話していた。デニスの護衛騎士フリッツ・バルツァーはそんなエルヴィンを少々ハラハラしたように見ている気がするが、気のせいかもしれないというか気のせいだと思っておこう。
少し喋るくらい、いいよな? もちろん注意散漫になるつもりはないけど、そこそこ時間かかるだろう間、さすがに退屈だ。
あと、ゼノガルトについての話も聞いてみたい。
「道中は貴族の屋敷に滞在じゃなくて宿だったのか」
「うん。完全にお忍びってわけじゃないけど、公にもしてないしね」
「へえ。ああそうそう。ここの話だっけ。ここは雷の土地なだけあって、機械関連が発達してるよ」
「確かにここへ来る途中、あまり俺の国で見ないような建物とかあったよ」
「町の噴水広場は通ったか?」
「通った通った」
「そこに大きな時計台があっただろ」
「えっと、ああ、うん、あった!」
「その時計台な、一時間おきに針のところが開いて機械仕掛けで動く人形が踊るんだぜ」
「えっ、魔法でじゃなくて?」
「魔法だと絶えず誰かがかけなくちゃだろ」
「機械だとそうじゃないのか?」
「ああ。基本ほったらかしてても大丈夫。もちろん定期的なメンテナンスは必要だけどな」
騎士二人が得意げに教えてくれる。
マヴァリージ王国はそもそもエレメントのない国だけに、魔術具はよく使用されるものの魔法をふんだんに使われた町はない。だがそんな魔法でなくとも何かを動かしたりできると知ってエルヴィンはわりとわくわくしながら話を聞いていた。
「あ、でもその機械を動かす動力に雷魔法が使われてるってことか。そのメンテナンスとかにも」
「まあ、そういうことだ。雷は通常自然に発生するものだしな、それを自在に動力に利用するにはやっぱ魔法だな。魔法は生活になくてはならないもんだよな」
やはりそうか、魔法はいるよなあ。今回の新たな商業的契約ってのはこの機械関連での取引だろうかな。それともマヴァリージで豊富な魔術具関連だろうかな。
「にしてもあんた、王子様の護衛騎士のわりに気さくだなあ」
「え、俺?」
「うんうん。もうお一人はあまり喋ってくれないけど」
「……悪いな、一応護衛中だし」
フリッツが申し訳なさげに謝ると騎士たちは「いやいや。でもエルヴィンだっけ? エルヴィンも同じ護衛じゃないのか」と笑いをかみ殺している。
エルヴィンも遡る前ならフリッツと同じだったかもしれない。そもそも昔からあまり社交的ではなかったし、成人して社交界にデビューしてからも最低限の付き合いしかしてこなかった。
今もあまり賑やかな場は得意ではないが、こうして気さくに誰かと接することはもしかしたら何かの役に立つと身をもって学んでいる。何より案外楽しい。
「俺らも護衛というか、勝手に出入りする者がいないよう見張り役をしているわけだけどさ、やっぱたまにはこうして少し話したりもしたいんだよな」
「そうそう」
話していても彼らは周りに目を配っている。他に誰もいなくとも話していても警戒は怠ってはいない。例え城内のそれも基本誰も勝手に立ち入らない謁見の間の扉だったとしてもだ。
こういった姿勢は俺も見習いたいな。
「護衛騎士っつっても休憩時間はあるんだろ? 時間が合えばよかったら町を案内がてら、酒場へ行かないか? 最近中々いい子が入った店、知って……」
騎士の一人が言いかけているところで、どうやら謁見が終わったらしい王子たちが出てきた。そして一緒に出てきたニルスが整いつつもただでさえ目つきはあまりよくない目でじろりとその騎士を睨んだ。
職務怠慢に見られたと思ったのか、単に目つきに対してか、その騎士は慌てて口を閉じ、姿勢を正している。
話を聞いているところだったため喋っていなかったエルヴィンもつられて口を慌てて閉じた。だがデニスとリックは気にした様子もなく「待たせたな」「お待たせ」と言いながら通ってきた通路をそのまま歩いて行く。
「えっと……フリッツ。もし君までとばっちりで職務怠慢だと思われたのなら、申し訳ない……」
扉前の騎士たちに手を上げて挨拶した後で王子たちに続きながらながらエルヴィンが小声で謝ると、フリッツは苦笑しながら「それは思われないと思うが、謝罪は受け取っておくよ。あと問題ない」と言ってくれた。
いい人だ。
前からフリッツとは顔見知りではあったがあまり喋る機会はなかった。真面目でいい人なんて、まるでニルスのようだ。もちろん全然似てるところはないが、エルヴィンはありがたく思いながら少しほっこりしていた。
0
あなたにおすすめの小説
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*不定期連載です。
【本編完結】あれで付き合ってないの? ~ 幼馴染以上恋人未満 ~
一ノ瀬麻紀
BL
産まれた時から一緒の二人は、距離感バグった幼馴染。
そんな『幼馴染以上恋人未満』の二人が、周りから「え? あれでまだ付き合ってないの?」と言われつつ、見守られているお話。
オメガバースですが、Rなし全年齢BLとなっています。
(ほんのりRの番外編は『麻紀の色々置き場』に載せてあります)
番外編やスピンオフも公開していますので、楽しんでいただけると嬉しいです。
11/15 より、「太陽の話」(スピンオフ2)を公開しました。完結済。
表紙と挿絵は、トリュフさん(@trufflechocolat)
すべてを奪われた英雄は、
さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。
隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。
それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。
すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。
運命の番は僕に振り向かない
ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。
それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。
オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。
ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。
ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。
ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。
ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。
勇者様への片思いを拗らせていた僕は勇者様から溺愛される
八朔バニラ
BL
蓮とリアムは共に孤児院育ちの幼馴染。
蓮とリアムは切磋琢磨しながら成長し、リアムは村の勇者として祭り上げられた。
リアムは勇者として村に入ってくる魔物退治をしていたが、だんだんと疲れが見えてきた。
ある日、蓮は何者かに誘拐されてしまい……
スパダリ勇者×ツンデレ陰陽師(忘却の術熟練者)
【16+4話完結】虚な森の主と、世界から逃げた僕〜転生したら甘すぎる独占欲に囚われました〜
キノア9g
BL
「貴族の僕が異世界で出会ったのは、愛が重すぎる“森の主”でした。」
平凡なサラリーマンだった蓮は、気づけばひ弱で美しい貴族の青年として異世界に転生していた。しかし、待ち受けていたのは窮屈な貴族社会と、政略結婚という重すぎる現実。
そんな日常から逃げ出すように迷い込んだ「禁忌の森」で、蓮が出会ったのは──全てが虚ろで無感情な“森の主”ゼルフィードだった。
彼の周囲は生命を吸い尽くし、あらゆるものを枯らすという。だけど、蓮だけはなぜかゼルフィードの影響を受けない、唯一の存在。
「お前だけが、俺の世界に色をくれた」
蓮の存在が、ゼルフィードにとってかけがえのない「特異点」だと気づいた瞬間、無感情だった主の瞳に、激しいまでの独占欲と溺愛が宿る。
甘く、そしてどこまでも深い溺愛に包まれる、異世界ファンタジー
聖者の愛はお前だけのもの
いちみりヒビキ
BL
スパダリ聖者とツンデレ王子の王道イチャラブファンタジー。
<あらすじ>
ツンデレ王子”ユリウス”の元に、希少な男性聖者”レオンハルト”がやってきた。
ユリウスは、魔法が使えないレオンハルトを偽聖者と罵るが、心の中ではレオンハルトのことが気になって仕方ない。
意地悪なのにとても優しいレオンハルト。そして、圧倒的な拳の破壊力で、数々の難題を解決していく姿に、ユリウスは惹かれ、次第に心を許していく……。
全年齢対象。
僕の、しあわせ辺境暮らし
* ゆるゆ
BL
雪のなか僕を、ひろってくれたのは、やさしい男の子でした。
ふたりの、しあわせな辺境暮らし、はじまります!
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります。
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる