彼は最後に微笑んだ

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190話

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 すごかった。

 まだ疲れ切った上に逃しようもない痛みのせいで横たえた体を動かせないまま、エルヴィンは内心目を輝かせて思っていた。

 あんなに……全力疾走並みに疲れて、あんなにニルスのが硬くて熱くて大きくて、あんなに苦しくて痛くて、そしてあんなに……そう、あんなに幸せで気持ちいいなんて。

 挿入はしなくとも今までも抜き合うことはしてきたものの、体力的にも感情的にもやはり違う。おまけに物語で読む「一晩中何度も何度も愛し合う二人」は幻想だと思っていたが、さほど幻ではないのだと知った。果てたはずのニルスのものが全く変わらずガチガチだったのを目の当たりにし、自分の腹に出されたのは粘着質な先走りだったのかと一瞬思いそうになるくらい、普通に挿入前のそれにしか見えない状態に驚いた。
 とはいえ、いくら体力に自信あるエルヴィンでも何度も受け入れるのはつらいと、予想通りの現実も知った。二回目までは何とかなったがその後、尻と体力が悲鳴を上げた。なのでエルヴィンの手で達してもらった。

 ……とにかくすごかった……。

 例えニルスとの行為を思い返しても、限界を迎えたエルヴィンのそれはもう硬くならないが、代わりに腹の奥かどこかがすごく疼く。あまりにかわいくて格好のいいニルスが、それも見惚れるほどの裸体をありがたくもさらけ出してエルヴィンを欲しがってくれた様を思い出すと最高に堪らないと思うし、その気持ちが表れているであろうニルスのものがエルヴィンの中を貫いてくる様を思い出すと嬉しさと興奮で疼かないほうがおかしいとさえ思える。
 心から、ようやくできてよかったと思った。とはいえ、ここまでぐったりするとは思っていなかった。あまりに疲れてしまい、エルヴィンは一度気絶するかのように寝落ち、目が覚めた状態だったりする。
 ろうそくの明かりもなくなり微かに差し込む月明かりのみというかなり暗い中、最初は一瞬状況がわからなかった。だがすぐに思い出し、こうして身動きできないままエルヴィンは大興奮している。ニルスはエルヴィンの隣で眠っているようだ。体がべたついていないのがわかるので、エルヴィンが寝落ちている間におそらくニルスが綺麗にしてくれたのだろう。

 ……今、何時くらいなんだろう。

 横たわったまま見える範囲に時間がわかるものがない上に、どのみち暗い。だが微かに月明かりが差し込んでいることから、まだ夜明けにもなっていないようだ。

 はぁ……。嬉しいな、とにかく。

 ようやく繋がれた。付き合ってからここまで来るのは案外長かったような気がする。それもあって感慨深さもひとしおだ。
 別にセックスしなければ恋人や婚約者ではないと言うつもりはないし、体の繋がりがあってもそれだけだったりする場合もあるだろう。だが心がちゃんと繋がっていると、こうして体を繋げることでますますそれが深くなれたような気になる。

 少なくとも俺は。

 もう一度満足げに息をはくと、振動でか尻が痛んだ。明日の朝になればこれが一体どうなっているのかは神のみぞ知る、かもしれない。ますます身動きの取れない状態になっているかもしれないし、案外ケロッとしているかもしれない。ただ少なくとも今、エルヴィンの尻は結構痛い。ザイフォンクプアスの件でニルスによって指が挿入されたことを思い出し、エルヴィンは苦笑した。よくあんな微かな違和感程度で「もしかしてそういう行為を……?」などと思えたなと笑うしかない。あんな微かな違和感、そよ風が肌にそっと触れたようなものだった。それに比べると今のエルヴィンは暴風が風穴を開けてきたような感覚というのだろうか。とにかく尻が結構痛い。

 初めてだから、だよな?

 それともしばらくはこんな風になるのだろうか。いずれはこんな痛みもなく、むしろ尻だけでイけるようになったりするのだろうか。エルヴィン自身、尻軽な人は苦手だったりするし、尻で気持ちよくなれるような自分にはなりたくないと思っていた。だが今は、ニルス限定なら色んな意味で軽い尻になりたいなどと思ったりもする。
 ニルスが綺麗にしてくれたのであろう、さらりとした肌が乾いたシーツに触れて心地いい。身動きが取れない体を鞭打ち、エルヴィンは隣で眠っているニルスのほうを向いた。最後までしなくとも共に夜を過ごすことはあった。そんな今までも見てきたニルスの美しい寝顔を、暗いながらもじっと見つめる。起きている時は美しいながらも一見とっつきにくく昔から大人びたように見えていたニルスだが、寝顔は意外にも少しあどけなさを感じる。そういうところもとても好きだと以前から思っていた。結局ただでさえ何をしているニルスの顔も好きなのだろうが、こうしてようやく体を繋げた後に見るニルスの寝顔は格別だった。なんならそのまま噛みつき、食べてしまいたいほどかもしれない。

 ……かわいい。こんな人と相思相愛だなんて。……エッチ、慣れてきたらでいいからいつか俺の中に出して欲しい。

 中出しの欲なんてはっきり言って全くなかった。いや、男の本能というか女性相手には皆無だったとは正直断言できないが、少なくとも尻に出して欲しいなど思ったことはないどころか想像したこともなかった。

 俺、ニルス好きすぎておかしくなってるな。

 微妙な気持ちになるも、またすぐに顔がにやけた。だがまだ全然疲れは取れてないようで、その後少ししてエルヴィンはニルスを眺めながらまた寝落ちていた。そして朝、目が覚めた瞬間ますます痛みと疲労が強くなっている気がする自分に気づいた。
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