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13話
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他の者に会わせてやると言われたまではいい。だが突然その中へ放り込まれたようなものな上、秋星には他に意図があったとしか思えない。
しかも勝手に化けて邦一だけを向かわせその辺をフラフラしていた癖に疲れたのはまるで邦一のせいだとばかりに当然のように血を求めてくる。
主人と従者という立場ならそれも当たり前なのかもしれないが、邦一としては微妙に納得がいかなかった。
「……ほんといい性格してる……」
「聞こえてんで」
家へ着くと、一旦外出用の着物から部屋着用の着物へと秋星の着替えを手伝う。その外出用の着物を片付けながらボソリと呟いていると即言われた。
前から思っていたが秋星は耳聡い。これもヴァンパイアの特性なのかなと邦一はため息を吐いた。
「……そういえば向こうの先生の知り合いみたいな人が患者として来てたんだけどさ……何て言うか、痛いのがどうやら嬉しい? 何かそんな感じの人でさ」
邦一が話を振ると秋星が「なんやそれ」とおかしそうに小さく笑った。
「その人もよく分からないけど、俺みたいな感じなんだ」
「へぇ? クニも痛いの好きなん?」
「そこじゃない……。なんだろう、仕えてるっぽい?」
「……そんな存在はおらんかったはずやけどな……」
秋星がまた怪訝な顔をした。
「わからないよ? そんな風に感じただけ、俺が。その人がさ、俺に『アンタも俺と同じで人間なんだろ、相手がアレでさ』とか言ってきて。相手ってのが多分仕えてる相手って意味だと思ったんだけど」
邦一が説明すると、秋星は少しの間の後に小さく吹き出してきた。
「なんだよ」
「別に?」
「……」
何かわかったのなら教えてくれてもいいのにと、今のようにちょくちょく思うことがある。邦一は微妙な顔をしながら続けた。
「それに、そうだ、伝えてくれと先生に言われてたんだ」
「何を?」
「僕には相手がいますのでご心配不要です、だってさ。これもあれだろ、仕えてる相手ってことじゃないのか」
「ふふ」
「? だから何で笑ってんだ? ああ、それとお仲間がいるのは何となく心強いです、だってさ」
小さく笑っている秋星に怪訝な顔を向けた後に邦一はそういえば、と付け足した。
「先生のお相手の人にさ、おかしなことっていうか、意味のわからないこと聞かれて」
「どんな?」
「俺がどっちだって」
「どっち?」
「やっぱり俺らと同じでタチカ? いや、違うな、タチ? なのかって」
「……それで?」
秋星は一瞬真顔になった後にニコニコとしてくる。
「いや、後はなんか変態っぽいこと言ってたな。噛まれるの最高とか……よくわからないけど相手はどっち側? って言ってたっけかな、どっち側でも欲しがるんだろって。多分血のことだろうけど」
「それはそれは」
秋星はひたすら楽しそうだった。
「その人、槙村さんって言うらしいんだけど、槙村さんさ、何かお前にぴったりじゃないか?」
「なんでやの」
「変た……痛いの喜んでる感じが」
変態なところがと言いかけて、それはあまりな言い方だなと邦一は言い直す。
「は。そんな風に楽しんでる奴弄って何が楽しいん。いらんわ。そんなんな、クニやから楽しいんやんか」
「はぁっ?」
妖しげな笑みを浮かべると、秋星はスッと動いてきた。気づくと体を抱え込まれていた。秋星の方が小さくても何の意味もない。恐らくその気になれば邦一など、それこそ言葉の通り赤子の手を捻るかのように簡単に捻り潰されそうだと思った。
「何のつもりだ」
「血、貰うって言ってたやろ……?」
「だったらいつもみたいに手首持てばいいだろ。何でそんな風に固定してくるんだよ、身動き取れない!」
「……ほんまクニは色気ないなぁ」
ため息が聞こえてきた。
「は? あってたまるか! あと色気がどう関係するんだよ……」
「固定て。抱きしめられてるって何で言われへんの」
「お前に抱きしめられる状況がまずおかしいだろ……」
秋星は一体何を言っているんだと微妙な顔をすると「ほんまあかんやっちゃなぁ」と小さく笑いながら秋星は邦一の首筋に唇を這わせてきた。
「何する気だよ」
鋭い歯を隠しもつ秋星に首筋をなんと言うか狙われるのは、起きてはいるもののまるで寝首をかかれるような気持ちになる。
少しヒヤリとしているとそのまま舐められた。
「おい……」
「手首ばかりやと面白くないやろ?」
「血を取られる時点で俺は面白くもなんともないんだけど?」
「ほんまお前は色気、無いなぁ」
体に巻きつけていた腕を邦一の首に絡めてくると、秋星は舐めたところに噛みついてきた。
「っぁ」
ピリリとした感覚が、事前に舐められていたせいか、蕩けて溶けていきそうな感覚と混じる。熱くてじくじくとした疼きがそこから広がっていく。
手首の時よりもそういった感覚が強く伝わってきて、邦一はつい抵抗しようとした。だが、ふわりと首に絡めているだけの筈の腕は頑として振りほどけない。
おかしくなりそうだった。
「やめ、ろ……」
何とか声を絞り出すも、震えた情けない声しか出ない。
「っは……、ぁっ」
まるで自慰をしている時にも似た感覚すら感じられ、あり得ないとばかりに邦一は目を思い切り瞑り、歯を噛み締めた。
ようやく唇が離れた時には、乱れた息を整えるのに必死だった。
「やっぱりクニは美味しいなぁ……」
邦一が抵抗したり堪えようとしていたことなど全く気にした様子もなく、秋星が妖艶といった笑みを浮かべる。
「手首からよりやっぱり首からのが美味しい」
「……そんなん、どっからやって同じやろ……」
「クニ? 関西弁になってんで?」
「煩い」
「……色気はないけど、可愛いなぁ、クニは」
「やから可愛いなんて言わんとけ……っ」
しかも勝手に化けて邦一だけを向かわせその辺をフラフラしていた癖に疲れたのはまるで邦一のせいだとばかりに当然のように血を求めてくる。
主人と従者という立場ならそれも当たり前なのかもしれないが、邦一としては微妙に納得がいかなかった。
「……ほんといい性格してる……」
「聞こえてんで」
家へ着くと、一旦外出用の着物から部屋着用の着物へと秋星の着替えを手伝う。その外出用の着物を片付けながらボソリと呟いていると即言われた。
前から思っていたが秋星は耳聡い。これもヴァンパイアの特性なのかなと邦一はため息を吐いた。
「……そういえば向こうの先生の知り合いみたいな人が患者として来てたんだけどさ……何て言うか、痛いのがどうやら嬉しい? 何かそんな感じの人でさ」
邦一が話を振ると秋星が「なんやそれ」とおかしそうに小さく笑った。
「その人もよく分からないけど、俺みたいな感じなんだ」
「へぇ? クニも痛いの好きなん?」
「そこじゃない……。なんだろう、仕えてるっぽい?」
「……そんな存在はおらんかったはずやけどな……」
秋星がまた怪訝な顔をした。
「わからないよ? そんな風に感じただけ、俺が。その人がさ、俺に『アンタも俺と同じで人間なんだろ、相手がアレでさ』とか言ってきて。相手ってのが多分仕えてる相手って意味だと思ったんだけど」
邦一が説明すると、秋星は少しの間の後に小さく吹き出してきた。
「なんだよ」
「別に?」
「……」
何かわかったのなら教えてくれてもいいのにと、今のようにちょくちょく思うことがある。邦一は微妙な顔をしながら続けた。
「それに、そうだ、伝えてくれと先生に言われてたんだ」
「何を?」
「僕には相手がいますのでご心配不要です、だってさ。これもあれだろ、仕えてる相手ってことじゃないのか」
「ふふ」
「? だから何で笑ってんだ? ああ、それとお仲間がいるのは何となく心強いです、だってさ」
小さく笑っている秋星に怪訝な顔を向けた後に邦一はそういえば、と付け足した。
「先生のお相手の人にさ、おかしなことっていうか、意味のわからないこと聞かれて」
「どんな?」
「俺がどっちだって」
「どっち?」
「やっぱり俺らと同じでタチカ? いや、違うな、タチ? なのかって」
「……それで?」
秋星は一瞬真顔になった後にニコニコとしてくる。
「いや、後はなんか変態っぽいこと言ってたな。噛まれるの最高とか……よくわからないけど相手はどっち側? って言ってたっけかな、どっち側でも欲しがるんだろって。多分血のことだろうけど」
「それはそれは」
秋星はひたすら楽しそうだった。
「その人、槙村さんって言うらしいんだけど、槙村さんさ、何かお前にぴったりじゃないか?」
「なんでやの」
「変た……痛いの喜んでる感じが」
変態なところがと言いかけて、それはあまりな言い方だなと邦一は言い直す。
「は。そんな風に楽しんでる奴弄って何が楽しいん。いらんわ。そんなんな、クニやから楽しいんやんか」
「はぁっ?」
妖しげな笑みを浮かべると、秋星はスッと動いてきた。気づくと体を抱え込まれていた。秋星の方が小さくても何の意味もない。恐らくその気になれば邦一など、それこそ言葉の通り赤子の手を捻るかのように簡単に捻り潰されそうだと思った。
「何のつもりだ」
「血、貰うって言ってたやろ……?」
「だったらいつもみたいに手首持てばいいだろ。何でそんな風に固定してくるんだよ、身動き取れない!」
「……ほんまクニは色気ないなぁ」
ため息が聞こえてきた。
「は? あってたまるか! あと色気がどう関係するんだよ……」
「固定て。抱きしめられてるって何で言われへんの」
「お前に抱きしめられる状況がまずおかしいだろ……」
秋星は一体何を言っているんだと微妙な顔をすると「ほんまあかんやっちゃなぁ」と小さく笑いながら秋星は邦一の首筋に唇を這わせてきた。
「何する気だよ」
鋭い歯を隠しもつ秋星に首筋をなんと言うか狙われるのは、起きてはいるもののまるで寝首をかかれるような気持ちになる。
少しヒヤリとしているとそのまま舐められた。
「おい……」
「手首ばかりやと面白くないやろ?」
「血を取られる時点で俺は面白くもなんともないんだけど?」
「ほんまお前は色気、無いなぁ」
体に巻きつけていた腕を邦一の首に絡めてくると、秋星は舐めたところに噛みついてきた。
「っぁ」
ピリリとした感覚が、事前に舐められていたせいか、蕩けて溶けていきそうな感覚と混じる。熱くてじくじくとした疼きがそこから広がっていく。
手首の時よりもそういった感覚が強く伝わってきて、邦一はつい抵抗しようとした。だが、ふわりと首に絡めているだけの筈の腕は頑として振りほどけない。
おかしくなりそうだった。
「やめ、ろ……」
何とか声を絞り出すも、震えた情けない声しか出ない。
「っは……、ぁっ」
まるで自慰をしている時にも似た感覚すら感じられ、あり得ないとばかりに邦一は目を思い切り瞑り、歯を噛み締めた。
ようやく唇が離れた時には、乱れた息を整えるのに必死だった。
「やっぱりクニは美味しいなぁ……」
邦一が抵抗したり堪えようとしていたことなど全く気にした様子もなく、秋星が妖艶といった笑みを浮かべる。
「手首からよりやっぱり首からのが美味しい」
「……そんなん、どっからやって同じやろ……」
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「やから可愛いなんて言わんとけ……っ」
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