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64話
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とてもいい雰囲気だったと思うのだが、その後ハッとなった邦一に引き離された。
「何すんねん」
「それはこっちの台詞……! お前にさせられるの、別に嫌じゃないとは言ったけど今することじゃないだろ……」
「何で」
「学校……!」
秋星は思い切り舌打ちした。ただでさえ秋星は学校にこれっぽっちも興味がない。だが元はと言えば邦一のために行っているようなものなので「行かんわ、そんなもん」とは言えない。
多分言っても微妙な顔の邦一が強引に着替えさせてきて学校へ向かう準備をさせられるのだろうが、あまりに行かないと言えば秋星の意見が通ってしまう可能性もある。そうなると秋星に基本付いている邦一も学校へ行く理由がなくなる。
ここまで考えた時、柳に言われた「囲い者」という言葉が浮かんだのが忌々しい。これでも自由にさせている。なので秋星が学校へ行かなくとも邦一は行けばいいのだ。
……いや、嘘やな。
結局また邦一に無理やり立たされ着替えさせられながら秋星は淡々と思った。
俺が家におんのにクニだけ学校行ってるんは、やっぱり嫌や。
邦一は自分だけのもの。その考えだけは改める気がないし、もしその独占欲を囲い者扱いだと言うのならばもう仕方がないと思う。
「ほら、秋星! 腕をちゃんと通せ」
それにしても、と秋星は微妙になる。もしかして邦一が秋星の色香に落ちてくれないのはこのせいでもあるのではないだろうか。自慢じゃないが、自分の容姿には自信がある。そもそもヴァンパイアは基本的に皆美形だ。おまけに男ではあるが、色気もあるのも把握している。
ただ邦一は昔から当たり前のように秋星の面倒を見ているので、体はくまなく見られているし、触れられたり密着もする。
「……しくったなぁ」
「何?」
「お前に俺の世話、させるんちゃうかった」
「は?」
丁度制服を着せ終えたらしい邦一が少し離れながらとてつもなく怪訝な顔で秋星を見てくる。
「そんなん言っても無駄だからな。俺はお前の世話をするし、こうやって無理やりにでも学校へ向かわせる。諦めろ」
そう返ってくるとは思わなかった。なんとなく秋星は嬉しくなる。
「なんだよ」
「そうちゃうねん。おもろいなぁ。そうやなくて、クニが俺の世話してへんかったらな、もしかしたら俺の裸見ただけでめっちゃ興奮してたかもしらんやろ」
ニッコリと言えばいつものように微妙な顔をされる。
「俺を変なヤツ扱いするなよ」
「何で変やねん、失礼なやっちゃな」
あえてムッとして言い返すと、邦一が少し困ったように言いよどんでいる。どうしたのかと思っていると口を開いてきた。
「……確かに普段は淡々と仕事をしてるけど……ちゃんとお前見て、やらしい体してるなって思うこと、あるから……」
何事か。
秋星は目と口を思わずポカンと開いて邦一を見た。一体何が起きたのか。魔女がサバトでもやらかしたのか。
「そんな顔で見てくんな。……お前がその、俺を好きだというなら、その、俺も思うことあるならちゃんと言わないとフェアじゃないかなと思っただけだ」
気まずそうに顔を逸らすと、邦一は「ほら、朝食とりに行くぞ」と部屋を出ていく。
……やっぱりクニ、俺のこと好きなんちゃうのん?
どうしてもそう思ってしまう。魔物ならまだしも、人間はあまり同性にそういった性的魅力を感じないはずだ。
恋愛などに疎い為、わかってないだけなのではと思うのは、自分に都合よく考えているだけなのだろうか。
そんなことを考えていても、相変わらず人間の食事はテンションが上がらなかった。ちなみに他人が見れば秋星たちはかなり少食に見えるだろう。朝はスープやサラダくらいだし学校のある昼はパンかおにぎりを一つ、夜は辛うじて一汁三菜だが量は多くない。学校で他の生徒が食べている量を見ると、それだけで口を押さえたくなる。
「美味いのにな、勿体ない」
今朝は一緒の食卓だった邦一が憐れむような顔で見てきた。少し腹立たしい。
「クニは食い過ぎや、太んで」
「これくらいで太るか。おい、どさくさに紛れて俺の皿にレタスを入れるな」
大抵の味がわからないのでどれも嫌いだが、例えばこのよく登場するレタスは厚紙に水をたっぷり含ませたような味がするくせにしゃきしゃきとしていて気持ちが悪いのだ。だが結局レタスも食べさせられた。
帰りは大抵別々だが、学校へ行く時はわりと一緒に行くことが多い。今も一緒に向かいながら秋星はため息を吐いた。
「口直しがしたい」
「はい」
慣れた様子で邦一が秋星の手にキャンディ風に包まれた小さなチョコレートを置いてくる。秋星はそれを生温い顔でじっと見た。
「……可愛いない」
呟きながらも包みを開けてチョコレートを口にした。
「そう言いながら食うなよ……」
邦一が呆れたように苦笑している。
「だいたいな、お前、一族の中で生活するために血ぃ飲め、言われてみぃ。キツいやろ」
「昨日の花の例えで十分だっただろ……それに血はもっと無理だ」
「見てみぃ。俺かてキツいねん、慰めたりや」
「自分で言うなよ。だいたい人間は多分、血はそんなに飲めないんじゃないのか」
実際飲んでいる人間は間近にいないので分からないが、秋星としても毒になりかねないのではと思っている。鉄分の過剰摂取になる気がする。
人間の体のことはよくわからないが、肝臓の損傷や肺水腫、神経障害などを引き起こすヘモクロマトーシスになるのではないだろうか。
「まぁ、そうやろな」
「そんな俺にとって毒になりそうなもの、例えにするなよ」
「それくらい嫌ってこと」
学校が近くなるとそういった話はしなくなる。どちらかというと無言だったりが多い。
「クニ」
「何」
「大丈夫やと思うけどな、今日は一緒に帰るで」
「わかった。じゃあ俺が迎えに行くから教室にいろよ」
邦一は学年が違うことをこれっぽっちも気にしないようだ。秋星はニッコリと頷いた。
「何すんねん」
「それはこっちの台詞……! お前にさせられるの、別に嫌じゃないとは言ったけど今することじゃないだろ……」
「何で」
「学校……!」
秋星は思い切り舌打ちした。ただでさえ秋星は学校にこれっぽっちも興味がない。だが元はと言えば邦一のために行っているようなものなので「行かんわ、そんなもん」とは言えない。
多分言っても微妙な顔の邦一が強引に着替えさせてきて学校へ向かう準備をさせられるのだろうが、あまりに行かないと言えば秋星の意見が通ってしまう可能性もある。そうなると秋星に基本付いている邦一も学校へ行く理由がなくなる。
ここまで考えた時、柳に言われた「囲い者」という言葉が浮かんだのが忌々しい。これでも自由にさせている。なので秋星が学校へ行かなくとも邦一は行けばいいのだ。
……いや、嘘やな。
結局また邦一に無理やり立たされ着替えさせられながら秋星は淡々と思った。
俺が家におんのにクニだけ学校行ってるんは、やっぱり嫌や。
邦一は自分だけのもの。その考えだけは改める気がないし、もしその独占欲を囲い者扱いだと言うのならばもう仕方がないと思う。
「ほら、秋星! 腕をちゃんと通せ」
それにしても、と秋星は微妙になる。もしかして邦一が秋星の色香に落ちてくれないのはこのせいでもあるのではないだろうか。自慢じゃないが、自分の容姿には自信がある。そもそもヴァンパイアは基本的に皆美形だ。おまけに男ではあるが、色気もあるのも把握している。
ただ邦一は昔から当たり前のように秋星の面倒を見ているので、体はくまなく見られているし、触れられたり密着もする。
「……しくったなぁ」
「何?」
「お前に俺の世話、させるんちゃうかった」
「は?」
丁度制服を着せ終えたらしい邦一が少し離れながらとてつもなく怪訝な顔で秋星を見てくる。
「そんなん言っても無駄だからな。俺はお前の世話をするし、こうやって無理やりにでも学校へ向かわせる。諦めろ」
そう返ってくるとは思わなかった。なんとなく秋星は嬉しくなる。
「なんだよ」
「そうちゃうねん。おもろいなぁ。そうやなくて、クニが俺の世話してへんかったらな、もしかしたら俺の裸見ただけでめっちゃ興奮してたかもしらんやろ」
ニッコリと言えばいつものように微妙な顔をされる。
「俺を変なヤツ扱いするなよ」
「何で変やねん、失礼なやっちゃな」
あえてムッとして言い返すと、邦一が少し困ったように言いよどんでいる。どうしたのかと思っていると口を開いてきた。
「……確かに普段は淡々と仕事をしてるけど……ちゃんとお前見て、やらしい体してるなって思うこと、あるから……」
何事か。
秋星は目と口を思わずポカンと開いて邦一を見た。一体何が起きたのか。魔女がサバトでもやらかしたのか。
「そんな顔で見てくんな。……お前がその、俺を好きだというなら、その、俺も思うことあるならちゃんと言わないとフェアじゃないかなと思っただけだ」
気まずそうに顔を逸らすと、邦一は「ほら、朝食とりに行くぞ」と部屋を出ていく。
……やっぱりクニ、俺のこと好きなんちゃうのん?
どうしてもそう思ってしまう。魔物ならまだしも、人間はあまり同性にそういった性的魅力を感じないはずだ。
恋愛などに疎い為、わかってないだけなのではと思うのは、自分に都合よく考えているだけなのだろうか。
そんなことを考えていても、相変わらず人間の食事はテンションが上がらなかった。ちなみに他人が見れば秋星たちはかなり少食に見えるだろう。朝はスープやサラダくらいだし学校のある昼はパンかおにぎりを一つ、夜は辛うじて一汁三菜だが量は多くない。学校で他の生徒が食べている量を見ると、それだけで口を押さえたくなる。
「美味いのにな、勿体ない」
今朝は一緒の食卓だった邦一が憐れむような顔で見てきた。少し腹立たしい。
「クニは食い過ぎや、太んで」
「これくらいで太るか。おい、どさくさに紛れて俺の皿にレタスを入れるな」
大抵の味がわからないのでどれも嫌いだが、例えばこのよく登場するレタスは厚紙に水をたっぷり含ませたような味がするくせにしゃきしゃきとしていて気持ちが悪いのだ。だが結局レタスも食べさせられた。
帰りは大抵別々だが、学校へ行く時はわりと一緒に行くことが多い。今も一緒に向かいながら秋星はため息を吐いた。
「口直しがしたい」
「はい」
慣れた様子で邦一が秋星の手にキャンディ風に包まれた小さなチョコレートを置いてくる。秋星はそれを生温い顔でじっと見た。
「……可愛いない」
呟きながらも包みを開けてチョコレートを口にした。
「そう言いながら食うなよ……」
邦一が呆れたように苦笑している。
「だいたいな、お前、一族の中で生活するために血ぃ飲め、言われてみぃ。キツいやろ」
「昨日の花の例えで十分だっただろ……それに血はもっと無理だ」
「見てみぃ。俺かてキツいねん、慰めたりや」
「自分で言うなよ。だいたい人間は多分、血はそんなに飲めないんじゃないのか」
実際飲んでいる人間は間近にいないので分からないが、秋星としても毒になりかねないのではと思っている。鉄分の過剰摂取になる気がする。
人間の体のことはよくわからないが、肝臓の損傷や肺水腫、神経障害などを引き起こすヘモクロマトーシスになるのではないだろうか。
「まぁ、そうやろな」
「そんな俺にとって毒になりそうなもの、例えにするなよ」
「それくらい嫌ってこと」
学校が近くなるとそういった話はしなくなる。どちらかというと無言だったりが多い。
「クニ」
「何」
「大丈夫やと思うけどな、今日は一緒に帰るで」
「わかった。じゃあ俺が迎えに行くから教室にいろよ」
邦一は学年が違うことをこれっぽっちも気にしないようだ。秋星はニッコリと頷いた。
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