ホンモノの恋

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44話 ※

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 夜にしてあげると自分から言ったわけだが、恵としてはどうしようもなかった。水の中とはいえあんな外でだなど、未成年云々をなしにしても無理だ。
 だが、と恵はそっとため息つく。犯罪なんだぞ、と片手で片目を覆う。つき合っていようが好き合っていようが未成年なのだと自分を叱咤する。
 かといえば「既に抜き合うくらいやってるだろ、海へ行く前だって……」という気持ちもある。恵もついこの間までは聖恒と同じ未成年だったのだ。そろそろ考えたり悩んだりするのも疲れてきた。

 ごめんな、きよ。俺、何かもう、駄目。

 もちろんつき合うのが駄目なのではない。本当に好きなのだ。今までも誰かとつき合ってきたことはあるが、こんなに大事だと思ったことはないかもしれない。
 何故そんなに大事だと思えるのかともし誰かに聞かれたら、だが説明し難い。多分「わからない。けど気づいたら大好きだったんだ」と答えるしかできないと思う。何かを一つ一つ挙げていくのはできるかもしれないが、それら一つを挙げても上手い理由とは言えない。こうだから好きなのだ、というよりこんなことやあんなこと、それらが重なって気づけば大切だったといった感じだろうか。

 だから、ごめん、きよ。俺だって、いや俺こそお前を気持ちよくしてあげたい。

 さすがに何も準備していないので最後までする気はないが、できる限りのことはしようと結局夕方になるまでには思うようになっていた。一緒に旅行とか一緒に泊まるという事実が余計に恵を煽っているのかもしれない。

「風呂、部屋にあったらよかったのにね、めぐちゃん」
「何で?」

一緒に大浴場を早めの時間に満喫して部屋に戻る時、聖恒がそんなことを言ってきた。恵は首を傾ける。

「だって。だったら風呂でもいちゃいちゃできるのに」
「いや、しないけどな?」
「えー」

 口を尖らせている聖恒を呆れたように見ながらも、やっぱりかわいいなあと恵はそっと思った。
 食事も食べに行くことになっていて、これは恵も部屋食だったらとは思った。ゆっくり二人で食べたい。それでも一緒に夕食をとるのは楽しかった。ただ夕食を共にするだけでなく、食べ終えた後も二人でそれこそ眠るまでゆっくりできるということが大きいのかもしれない。
 食事をしながらどうでもいいような些細なことから将来したい仕事まで、色んなことを話しては笑ったり納得したり反論してみたりして楽しんだ。
 時間が早かったのもあり、一旦部屋へ戻ってから服に着替え、旅館の外もぶらついた。有名な観光地というほどでもないが、旅館周辺には土産屋が軒を連ねている。そこでも二人で遥希の土産を見たり変な観光地用の土産ものをネタに笑ったりして楽しんだ。
 ただ昼間に海で遊び過ぎたからか、部屋に戻ると恵はついあくびが出た。

「……ん? 眠い? めぐちゃん」
「あ、いや。大丈夫」

 旅館のいいところと言うのだろうか。外から帰ってきたら布団はすでに敷かれてあった。だが妙に照れくさい気がしていたら聖恒もそう思ったのか、何となく二人で広縁の椅子に座っていた。
エアコンをかけていたが、外を見た時に夏だというのに風が気持ちよくて、今はエアコンを切って窓を開けている。そのせいで潮の香りと共に虫の音がよく聞こえてきていた。部屋も間接照明だけの薄暗いままなので余計にそういったものが感じられる。
聖恒に眠いのかと聞かれて笑いかけるとジッと見つめられた。
 ずっと逃げるように聖恒との関係を避けてきてはいるが、恵も元々経験ないわけではない。恵は微笑むと立ち上がって聖恒に近づき、頬に手を伸ばして優しく触れながらその手を滑らせた。そして顔を近づけ、キスする。軽いキスだったがそれで終わらず、だんだんと深くなっていった。

「めぐちゃん、俺の上に座ってよ……」

 キスの合間に聖恒が囁いてくる。つい「うん」と言いそうになったが留まる。男同士ですぐに見失いそうになるが、もし聖恒が女だったとしたらわかる。図としてそれはおかしい。逆ならまだわかるが、どう考えてもおかしい。

「いや、何で……」
「だって何かエロいでしょ? 二人の、そんでそのまま扱くとかヤバくない?」
「……俺がしてあげるとは言ったけど、ちょっとなんていうか、方向性が」
「なんで。じゃあいいや。めぐちゃんにしてもらうのはまた今度にする」
「は? それこそ何で……」

 せっかくようやく何とか吹っ切れて自ら聖恒のをしてあげようと思っていただけに困惑していると、顔を離した後で聖恒が立ち上がってきた。そのままその場に押し倒される。広縁にいたとはいえ、倒されたのは部屋のほうなので畳がクッションになって痛くはないが、恵はますます困惑した。何考えているのだろうと思っていると、聖恒がのしかかるようにしながら上に手を伸ばす。

「鞄、ここに置いてあってよかった。すぐ取れる」
「な、にを?」
「へへ」

 聖恒はニッコリ笑うとキスを続けてきた。唇が合わさるだけでも気持ちよかったが、口の中で絡み合うと蕩けそうな気持ちになる。ましてや聖恒の舌が恵の上顎や舌をなぞってくると体が少し震えるほどだった。
 聖恒の両手が恵の顔をつかんでくる。さらに何度もキスを繰り返してくる。窓から入ってくる風で広縁と和室の間にあるカーテンがふわりと揺れた。

「ん……」
「めぐちゃん……好き……かわいい……」

 ギュッと抱きしめられたかと思うと、服の中にスルリと手が入ってきた。直接肌をなぞられ、ゾクリとしたものが恵の中を走る。だがその指が恵の胸元を掠めると、また違和感を覚えた。しかし、積極的な子は今までだっていたしとも思う。

「きよ……俺は男だからそこは何とも……」
「ん? でも男も感じる人は感じるって聞いた」
「え、誰にっ?」
「誰ってわけでも……」

 聖恒が呟きながら胸元を口に含んできた。その先端を舌で転がされると、何かモヤモヤにも似た感覚に包まれる。

「めぐちゃん、ここも硬くなってきた……」

 聖恒は嬉しそうに言うとまた乳首に軽く食いついた。それだけでも軽く動揺していると、下を乱され脱がされた下肢に何か冷たいものがかけられた。

「……っなんだ……っ」
「大丈夫、ただのローションだよ」

 何だそうか、と言いかけて恵はポカンと聖恒を見る。

「何でそんなもの……」
「でも気持ちいいよね?」

 聖恒はニッコリしながら恵のものを握ると手を動かしてきた。粘りけのあるローションなのか、粘着性ある音が聞こえてくる。おまけにぬるぬるした感触が伝わってくる。

「っあ……」

 思わず変な声が漏れた。今まで聖恒以外にも手でされたことはあるが、感じたことのない快感を覚える。

「気持ち、い? 一度イく?」
「……はっ……、何言っ……きよ、は……?」
「こんなエロいめぐちゃん見てたら絶対すぐイっちゃう。自分でエロさわかってる? ここ、こんなにトロトロにして、これローションだけじゃないよね。そんでそんな顔して。見てるだけでヤベーから」

 聖恒は熱っぽく言うと体を屈めて恵に何度か軽いキスしてきた。深くないというのに、唇が軽く触れ合うだけだと言うのに、それだけでも唇や胸元がピリピリとして疼いた。すると今度は尖った胸の先にまたキスをされる。

「ぁあ……っ、あま、り……した、ら……っ」
「ん……、あんましたら……何……?」

 乳首を刺激しながら聖恒が囁く。

「っイ……っ」

 手の動きを緩めてはくれず、恵は堪らず熱をそこから吐き出してしまった。ドクドクと出ているのを感じ、思い切り満足のため息をはいた。
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