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8話
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「お前、何でキスとかすんの……」
唖然としてされるがままだった柚斗だが、ようやくハッとなって桜太郎を何とか引き離して聞いた。
「してーからっスけど」
少し息を乱しながら桜太郎は当たり前のように返してくる。
「そ、りゃしたくないのに普通しないだろけど、そういうこと言ってんじゃなくて! 何考えてんだよってこと」
少し顔が熱い。息を乱している桜太郎ほどではないが、キスに少し反応してしまっているのだろう。男同士だろうが嫌悪感を抱くほどでもない気持ちのいい行為には多少なりとも体は反応する。
「何って、キスしながらあんたとヤりてぇとか、そーゆーこと考えたっスけど」
ある意味素直だな……!
でもそういうことでもなく、と柚斗はため息を吐きたくなった。少しは人となりがわかるようになったと思っても、相変わらず微妙に会話が通じ合わない。
「そういうことでもなくて……」
「あ?」
「……はぁ。桜太郎、お前ってバイなの?」
「ば?」
「バイ」
「……? あー、バイ」
「そうなのか」
「は? ちげーっスけど」
今、認めたんじゃなかったのかよと微妙に思った後で「バイの意味に遅れて気づいただけか」と今回は理解した。
「違うの」
「俺、女が好きっスし。胸はデカくても小さくても好きっスけど下は女のもんじゃねーと無理っしょ」
お前は寝ることしか頭にないのかと言いそうになって、そうじゃないと柚斗は自分に対しそっと首を振る。
「俺、どう見ても男だよね」
「あ? そらそーだろ。あんた見て女に見えたら目ぇおかしいだろ」
「……。……会話が通じない」
「あ?」
「はぁ……。お前って素直だけどズレてるよな」
「……? 俺、褒められてんスか、ディスられてんスか」
「事実を言ってんだよ。……で、俺が男にしか見えないなら、女としか無理のお前が俺とヤりたいって思うのおかしいの、わかるだろ」
「おかしくねーよ。あんたとヤりてーのは、俺があんたのこと……す、好きだからだろが。別に女も男もねぇ」
とてつもなくムッとした顔を逸らしながら珍しく言い淀むように言葉にしてきた桜太郎を見て、柚斗は妙にくすぐったいようなむずむずするような感覚がした。
いやいや、何また絆されそうになってんの俺。
真顔になりながらそれにしても、と改めて桜太郎を見る。
好きなら男も女もないと言い切る潔さというか、何というか。これもジェネレーションギャップなのだろうか。それとも性格か。
「……わかった」
「んじゃ受け入れてくれるんっスか」
「そういう意味のわかった、じゃない」
「ぁあ?」
だから何で凄むのか。
ため息を吐いてから「……いつから」と柚斗は一旦閉じた口を開いた。
「あ?」
「いつから俺のこと好きなんだ?」
「寝てた俺を店に入れてくれた日」
「最初っからじゃないか……! はぁ……。一目惚れってやつか」
「ちげぇ。俺、男好きでもなんでもねぇのに一目見ただけでそれも美人でもなんでもねぇ男にいきなり惚れる訳ねーだろ」
「お前の言う、ディスりかこれは」
「ディスってねーし。あんたの顔はふつーって言ってるだけっス」
ああ、言ってるだけだろうとも。
子どもの頃から美形でスタイルのいい弟を持つ平凡で地味な兄として、目の前の同じく美形でスタイルのいい相手を柚斗はにっこり睨む。
「じゃなくて、俺みてーなやつにも怪我してるからって店、入れてくれたり世話してくれただろ」
「そりゃ……。でも得体の知れないやつだなって警戒はしてたよ」
「警戒すんのはいーことだろが。しねーやつのがおかしいっしょ」
当たり前なことや普通のことを言われて驚けるのは桜太郎に対してぐらいだろうな、と柚斗はそっと思う。
「んで、飲みもんや食いもんまで出してくれたし」
「……まぁ」
それらが理由なのだとしたら、何という刷り込み効果というものだろうかと柚斗は微妙になった。もしくは菓子が好きか何かなのかも知れない。それで嬉しくて流され──
「甘いもんはほぼ食わねえけど……」
食わねえんかい。
「でもこいつの出してくれたやつなら、って食ったらすげー美味かった」
「そ、そう、か」
今のは嬉しいしちょっとかわいいと思えた。
「……、だろ」
「え?」
「好きになるには十分だろ」
いやそうだろうか。十分だろうか。同性愛者でもないのに同じ男を好きになるのに十分だろうか。
「……十分か? むしろそんなくらいでよく男の俺を好きになれるなって思うけど」
「俺はなったんスよ」
「そ、そう。……まさかここで働きたいってのも俺が好きだから?」
「あー、それもでけぇっスけど、俺、家の仕事しかしたことなかったし、マジに興味持ったっつーのもあるっス」
「そ、そっか」
気持ちに答える答えないは置いておいて、正直好きだと思われるのは例え同性からでも嬉しいものだ。だがそれが働きたい理由というのは何となく嬉しく思えなかった。なので菓子作りやこの仕事に興味を持ったと言われて素直に嬉しいと感じた。
「……何スか」
「ん?」
「何でそこで笑うんスか」
「あ、いやこれは……」
「っち」
お前こそ何でそこで舌打ちだよ。
そう思っているとまた引き寄せられた。
「おい!」
「クソ、んなの堪んねーだろが」
「はぁ?」
何が、と聞く前にキスをされる。いい加減にしろと引き剥がそうとしたが無駄だった。びくともしない。
「や、め」
「……っ、はぁ……ヤベェ」
ヤバいのはお前だとまた引き剥がしを試みるが、剥がれない。
何度も何度も啄まれ、舐められ、柚斗は何だか自分がカヌレやワインになって味わわれているような気にさえなった。
唖然としてされるがままだった柚斗だが、ようやくハッとなって桜太郎を何とか引き離して聞いた。
「してーからっスけど」
少し息を乱しながら桜太郎は当たり前のように返してくる。
「そ、りゃしたくないのに普通しないだろけど、そういうこと言ってんじゃなくて! 何考えてんだよってこと」
少し顔が熱い。息を乱している桜太郎ほどではないが、キスに少し反応してしまっているのだろう。男同士だろうが嫌悪感を抱くほどでもない気持ちのいい行為には多少なりとも体は反応する。
「何って、キスしながらあんたとヤりてぇとか、そーゆーこと考えたっスけど」
ある意味素直だな……!
でもそういうことでもなく、と柚斗はため息を吐きたくなった。少しは人となりがわかるようになったと思っても、相変わらず微妙に会話が通じ合わない。
「そういうことでもなくて……」
「あ?」
「……はぁ。桜太郎、お前ってバイなの?」
「ば?」
「バイ」
「……? あー、バイ」
「そうなのか」
「は? ちげーっスけど」
今、認めたんじゃなかったのかよと微妙に思った後で「バイの意味に遅れて気づいただけか」と今回は理解した。
「違うの」
「俺、女が好きっスし。胸はデカくても小さくても好きっスけど下は女のもんじゃねーと無理っしょ」
お前は寝ることしか頭にないのかと言いそうになって、そうじゃないと柚斗は自分に対しそっと首を振る。
「俺、どう見ても男だよね」
「あ? そらそーだろ。あんた見て女に見えたら目ぇおかしいだろ」
「……。……会話が通じない」
「あ?」
「はぁ……。お前って素直だけどズレてるよな」
「……? 俺、褒められてんスか、ディスられてんスか」
「事実を言ってんだよ。……で、俺が男にしか見えないなら、女としか無理のお前が俺とヤりたいって思うのおかしいの、わかるだろ」
「おかしくねーよ。あんたとヤりてーのは、俺があんたのこと……す、好きだからだろが。別に女も男もねぇ」
とてつもなくムッとした顔を逸らしながら珍しく言い淀むように言葉にしてきた桜太郎を見て、柚斗は妙にくすぐったいようなむずむずするような感覚がした。
いやいや、何また絆されそうになってんの俺。
真顔になりながらそれにしても、と改めて桜太郎を見る。
好きなら男も女もないと言い切る潔さというか、何というか。これもジェネレーションギャップなのだろうか。それとも性格か。
「……わかった」
「んじゃ受け入れてくれるんっスか」
「そういう意味のわかった、じゃない」
「ぁあ?」
だから何で凄むのか。
ため息を吐いてから「……いつから」と柚斗は一旦閉じた口を開いた。
「あ?」
「いつから俺のこと好きなんだ?」
「寝てた俺を店に入れてくれた日」
「最初っからじゃないか……! はぁ……。一目惚れってやつか」
「ちげぇ。俺、男好きでもなんでもねぇのに一目見ただけでそれも美人でもなんでもねぇ男にいきなり惚れる訳ねーだろ」
「お前の言う、ディスりかこれは」
「ディスってねーし。あんたの顔はふつーって言ってるだけっス」
ああ、言ってるだけだろうとも。
子どもの頃から美形でスタイルのいい弟を持つ平凡で地味な兄として、目の前の同じく美形でスタイルのいい相手を柚斗はにっこり睨む。
「じゃなくて、俺みてーなやつにも怪我してるからって店、入れてくれたり世話してくれただろ」
「そりゃ……。でも得体の知れないやつだなって警戒はしてたよ」
「警戒すんのはいーことだろが。しねーやつのがおかしいっしょ」
当たり前なことや普通のことを言われて驚けるのは桜太郎に対してぐらいだろうな、と柚斗はそっと思う。
「んで、飲みもんや食いもんまで出してくれたし」
「……まぁ」
それらが理由なのだとしたら、何という刷り込み効果というものだろうかと柚斗は微妙になった。もしくは菓子が好きか何かなのかも知れない。それで嬉しくて流され──
「甘いもんはほぼ食わねえけど……」
食わねえんかい。
「でもこいつの出してくれたやつなら、って食ったらすげー美味かった」
「そ、そう、か」
今のは嬉しいしちょっとかわいいと思えた。
「……、だろ」
「え?」
「好きになるには十分だろ」
いやそうだろうか。十分だろうか。同性愛者でもないのに同じ男を好きになるのに十分だろうか。
「……十分か? むしろそんなくらいでよく男の俺を好きになれるなって思うけど」
「俺はなったんスよ」
「そ、そう。……まさかここで働きたいってのも俺が好きだから?」
「あー、それもでけぇっスけど、俺、家の仕事しかしたことなかったし、マジに興味持ったっつーのもあるっス」
「そ、そっか」
気持ちに答える答えないは置いておいて、正直好きだと思われるのは例え同性からでも嬉しいものだ。だがそれが働きたい理由というのは何となく嬉しく思えなかった。なので菓子作りやこの仕事に興味を持ったと言われて素直に嬉しいと感じた。
「……何スか」
「ん?」
「何でそこで笑うんスか」
「あ、いやこれは……」
「っち」
お前こそ何でそこで舌打ちだよ。
そう思っているとまた引き寄せられた。
「おい!」
「クソ、んなの堪んねーだろが」
「はぁ?」
何が、と聞く前にキスをされる。いい加減にしろと引き剥がそうとしたが無駄だった。びくともしない。
「や、め」
「……っ、はぁ……ヤベェ」
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